思いやりの心がなくむごたらしいこと。心が冷たく無慈悲で残忍であること。
5月1日。
「ふむふむ」
図書館で零和は黄色の熊が主人公の絵本を読んでいた。
「ふむ人間にとって熊は癒しの動物、人気のある動物ということだな。つまり熊を殺せば人間の心を大きく傷つけることができる!」
人々が嘆き悲しむ姿を想像し愉悦の笑みを浮かべる。
「おっといけない。こんなことをしている場合ではなかった……」
もっと読みたいと言う気持ちを抑え、零和は童話コーナーを何度も振り返りながら去っていった。
深夜。
零和はとある山奥まで足を運んでいた。手にはガソリンが入ったタンク。 背中のリュックサックにはライターや新聞紙など火をつけるのに必要なものを入れて。
零和は枯れ木や枯れ草を集め、その中にガソリンが染み込んだ丸めた新聞紙を入れて火をつけた。
「ふふふ。これで破壊の第一歩が始まる!」
目の前で燃える焚き火ほどの火が次第に山全体に広がり空を赤く染める光景を思い浮かべ邪悪な笑みを浮かべる。その時だった。
「「ハァ、ハァ、ハァ……」」
ゼェゼェと肩で息をしながら体中至る所に擦り傷だらけの2人の男たちが零和の前に現れた。。
(ば、バカな!?この平和のない世界を作る私の崇高かつ完璧な計画に気づいたというのか!?)
「た、助かった……」、「九死に一生とはこのことだな……」
男たちをほっとした様子でそう呟いた。
その呟きを
(どうすればいい?このまま計画を続行するか?それともこの男たちを殺してそれからまた火をつけるか?)
思案に暮れていた零和は聞き逃していた。
その時だった。
「「ウワアアアアアアァァァァァァッッッ!!!!」」
何かを察知して男達はその場から逃げ出した。
暗闇から何かがのしのしとこちらに近づいてくる。
零和が火をつけた炎の光によって謎の物体は明らかになる。暗闇から現れたのは2メートルを超す大きなクマだった。
目の前の少女を見てよだれを垂らす熊に対し零和がニヤリと笑う。
(こいつはクマ。クマは人間達にとって癒しの動物。つまりこいつを殺せば人間たちに恐怖と絶望を与えられるはず!)
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉっっっ!!」
自身に襲いかかる熊に零和は真っ正面から立ち向かった。
数時間後。
「ひ、ひどい目にあった……もう帰りたい。でも……私は負けん。この世界を平和のない世界にするまで、私は負けないぞ。負けないんだから!!……う、うわーんっ!!」
全身に牙や爪の傷を受けた零和はなんとか熊を撃退すると一人オイオイと泣きながら山を下っていった。
彼女の泣き声はポトポトと降り始めた雨が打ち消した。