二十年後、とある山。
「田中隊長!A班、指示通り撒き終えました」
「B班、罠設置完了しました」
「C班、指示のあった倒木や朽木の撤去できました」
「皆ご苦労」
部下からの報告に田中隊長と呼ばれた男、
「よし、朝から頑張ったご褒美だ。今日は俺が奢るぞ!」
その一言に
「よっしゃあ、今日は隊長の奢りだ!」、「寿司、寿司食おうぜ。回らないやつの」、「いや今から町に行って食料品全部買い占めようぜ!」
「いや、お前ら。俺は缶コーヒーを奢る程度で、ってこら!俺を置いて行くな!!」
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数日後。
「久しぶりだな」
「あぁ、かれこれ一年ぶりか」
小さな料亭のテーブル席に、空次郎が向かい側に座る男に酌をした。
「ところで、空次郎。彼女は見つかったか?」
「いや」
「そうか」
親友の返答に残念そうにため息をつく。
二十年前。大学でワンダーフォーゲル部に所属していた二人は下見を兼ねてとある山に登った。そこで道に迷い、熊に襲われた。
自分達がどこにいるかもわからなくなり、全てに絶望した時、彼らは見た。突如現れた灯火を。彼らは炎に向かって走った。そこにいたのは一人の少女だった。
だが脅威は完全に去っていなかった。熊がすぐ近くまで追いかけてきたのだ。
その後彼らは自分の将来を決定付ける最悪の行動を取ってしまう。命の恩人である一人の少女を置いて逃げ出したのだ。
町に下りた二人はすぐに町の人に説明。すぐさま猟友会とレスキュー隊が捜索に出たが少女はおろか服の断片すらも見つけることは出来なかった。
命の恩人である少女を見殺しにした。
その事実が彼らの心に後悔として残った。例えそうしなければ自分達が死んでいたかもしれないとしても。
彼女に感謝と見捨てたことを詫びたい。彼女を供養したい。
それが自分達に出来る唯一の方法だと結論づけた空次郎は山の自然保護や生態を研究する学者兼指導者に、正太郎はその活動を支援するため家業を継ぎスポンサーとなった。
全ては彼女の行方を捜すための最善の手だと信じて。
世間は二人を『環境保護に全力を取り組む活動家』と賞賛しているが、それらが彼らの心の傷を癒すことはなかった。
後に日本のみならず世界でも環境保護に取り組み、各国から勲章をもらうほどの貢献をしても。
彼らの心の傷を埋めることは出来なかった。
二人の男の人生を台無しにした零和ちゃん、恐るべし。