道理に背き、人の道に外れた行為をすること。
「倒」も「逆」もともとに背き逆らうの意。
5月3日
とある喫茶店近くの電話ボックスに
「そんなすぐに死ぬなんて結論を急がなくていいんだよ」
零和は普段の可愛らしい声ではなく男の声で電話の相手を励ましていた、邪悪な笑みで。
(くくく、バカな女だ。励ましている相手が自分を気にかけている男だと信じ込んで)
偶然入った喫茶店で、とある男の独り言を零和は偶然にも聞いてしまった。
男が元教師で、高校を中退して荒んだ生活を送っていた女子生徒に必死に向き合い、彼女を大学まで進学させたこと。
売春に関与しふて腐れた態度を取りながら「他人に迷惑をかけた訳ではない」と逆ギレした女子生徒に床に打ち付けるほどのビンタをした後、女子高生が脳出血を起こして死亡したこと。ビンタによる「体罰」が死因という証拠は出なかったが自責の念に耐え切れず辞職したこと。
その後マスコミなどに『体罰教師』と叩かれるものの、学校側が事件をもみ消したことで「なりたかった熱血教師ではなく大嫌いな悪役の教師になってしまった」とかえって罪の意識を深めてしまったこと。
完全にうつ病となり、半年もの無職生活で苦しんでいたが、かつて自分が大学まで進学させた女子生徒の励ましと自分に助けを求める電話により吹っ切れたこと。
自分を励ましてくれた女子生徒にプロポーズをしたこと。
そして。カウンセラーとして第二の人生を歩もうとするその第一歩が、零和が今現在話している女子高生ということ。
それらを聞いた零和は男がトイレに行った隙に男に成りすまし、店の近くにあった電話ボックスから自分に助けを求めた自殺志願者に相談をした。
「大丈夫だよ。君は自分を追い込みすぎているだけなんだ。周りの目なんて気にする必要なんてないよ」
「でも、私なんて……」と否定する若い女性に男の声色で相手を励ます零和。しかし彼女にそのような意図などなかった。
(くくく。この女が希望を持ったが最後、『残念でした! 私はお前が相談したかった男じゃありませんよ~!』と暴露してやる。自分に親身になって相談に乗ってくれた相手が実は違っていた。これほど心が折れることはあるまい!)
電話の相手が絶望する姿を想像し、ほくそ笑む零和。しかし彼女は気づいていなかった。
汚い落書きを消すために喫茶店のアルバイトが使用した洗剤とゴミ捨て場に捨てられた漂白剤が混ざり合って有毒ガスが発生。その有毒ガスがガラスが蹴り割られていた電話ボックスに流れ込んでいたことを。
この小説はフィクションです。実際の人物や団体などとは関係ありません。
金田一少年の事件簿、電脳山荘殺人事件とはまったく関係ありません。