ふたりの帰り道
揺れる笹の葉、七夕飾り
それを見て想い出す
幼い日の出来事
ますます、好きになった、あの日のこと
(2013年7月・Pixivさまにて初公開)
「雨、上がってよかった…」
学校の校門を出てすぐ、マナは空を見上げてぽつりとつぶやく。私も同じように空を見上げる。
2・3日続いていた雨がふと止んだのが2時間前。久々に見る水色の空はとてもきれいで、残るわずかな雲に映る夕方前の橙色が幻想的で、そのまま見とれてしまう。
「久々のお天気だね」
いつの間にか、私のことを見ていたマナ。
空に見惚れていた私はたぶん変な顔をしていたはず。そう思うとちょっと恥ずかしくて、
「え、ええ、よかったわ。久々の太陽ね」
マナの言葉にごまかすように応えると、
「うんっ」
本当に嬉しそうに返事をしてくれた。
その日は、珍しく生徒会の仕事が早く終り、珍しくマナが誰にも捕まらず、珍しくマナの助けが必要な人もいなかったおかげで校門を早く出ることができた。そしてこの青空。私たちが嬉しくなってしまうのは当然だった。
「こんなに早く帰れるのって、久々だね」
「本当にね。いつもなら…」
「マナが部活の助っ人して、生徒会の仕事が遅くなるから、こんなに早く帰れない?」
「わかっているじゃない」
私はやれやれ、といった表情をむけると、えへへ、って顔をするマナ。そんな顔をされたら何も言えなくなってしまう。
「あ、えっと、そうそう…せっかくだからさ、商店街の中遠回りしてこ?」
「いいわね、賛成する」
話をそらそうとしているのだろうけど、せっかくの早い帰宅の日。その提案に私は即座に賛成した。こんな明るい時間に商店街を通るのは久々、そう思いながら並んで商店街への道を歩いてゆく。
「お、おおっ、おお~!」
と、いきなり、大きな声を出すマナ。
「どうしたのよ、いきなり…」
私はマナの見ている方角へと視線を向けたけど、ぼやっとしてわからないので眼鏡をかける。
それは商店街の入口。毎年恒例の七夕祭りに向けて立派な笹が飾られていた。
入口だけではなく中もたくさん飾りがしてあって、いつも以上にカラフルな商店街になっていた。
「今年もお祭りすごいことになりそうだね。絶対一緒に来ようね!」
興奮したマナが嬉しそうに声を弾ませる。その瞳は子供のようにキラキラして、揺れる笹、夕方の橙を映していた。
「ええ、もちろん!」
私も思わず声を弾ませる。マナとの大切な約束のひとつ、毎年の商店街の七夕まつり。このおまつりはたくさんの出店が出るし、イベントもたくさんあって、私たちが浮かれてしまうのも仕方がない。今年はどんなおまつりになるのか、考えただけでうきうきしてしまう。
「もう七夕、かぁ…」
ふと、マナが足を止めてつぶやくと、ちょっとだけ意地の悪い笑顔で私のことを見る。
そんなマナを見て、私の頬が熱を帯びてくる。
幼いころの恥かしい想い出。今年もやっぱりこの話題が出てしまうのね。
「あのときの六花、かわいかったなぁ…」
「あうっ…」
声になるかならないかわからないくらい小さなうめき。頬だけではなく顔まで熱くなってくる。
でも、マナはやさしい顔に戻って、
「あの時、あたしとても嬉しかったよ」
はっきりとそう私に告げる。
「恥ずかしいから…もう、忘れてちょうだい」
「やだよ」
マナの楽しそうな顔が私に近づく、とても近い。
「あたしと六花の、一番大切な想い出だもん」
そのまま、マナは私を抱きしめて頬をすりすりする。とっさのことで私はなにもできずにマナの体温に包まれる。マナの体は暖かくて、このまま抱きしめていてほしい気持になってくるけど、でも…よく考えたらここは人がたくさんいる商店街の前……
「ま、マナっ!」
「あははっ!」
我に返ってその名前を呼ぶと、マナは逃げるように商店街に向かって駆け出す。
私はそっと頬に手を当てる。あたたかいのはマナの体温のせいか、私の頬の熱さのせいか。
「あたしのすりすりー、暖かかったー?」
私の行動を見て、もう商店街までかけて行ったマナがいたずらっぽく言う。
「も、もうっ、マナ!」
私もマナをかけ足で追いかける。
マナが忘れてくれない、ううん、本当は、マナにいつまでも覚えていてほしい、私も忘れたくない、あの、マナに出逢って最初の七夕のことを想い出しながら。
「…というお話でした」
先生の言葉でかわいらしい拍手が教室の中に広がる。
幼稚園でのお話の時間、その日は7月6日、七夕のおりひめとひこぼしのお話。私も、隣に座るマナも一緒にぱちぱち拍手をする。
先生は本を閉じると、園庭への扉へ向かう。その扉を開けると、いつの間にだろう、そこには大きな笹が飾られていた。私たち、クラスのみんなはその笹を見て歓声を上げる。
「それじゃ、今日は、笹にたくさん飾りをつけて、お願いごとを書きましょう」
「はーいっ!」
私も、マナも、クラスのみんなも、嬉しそうに大きな声で返事をした。
「りっかちゃん、いっしょにつくろ?」
「うん、まなちゃん、がんばろうね」
この春に越してきて初めての友達のマナ。明るくて、元気で、やさしくて、素敵な女の子。私はすぐに好きになってしまい、いつも一緒にいるようになっていた。一緒の保育園に通うようになってからも変わらず、私はマナにべったりだった。
マナも私のことを気に入ってくれたのか、いつも一緒にいてくれた。
その時用意された七夕飾りは既製品もあったけど、折り紙を縦1/4に切ってわっかつなぎにしたのとか、お星さまを折ったのとかは自分たちで作ってみるように言われていた。でも…
「おほしさま、むずかしいねまなちゃん…わ、すごーいっ! きれいっ!」
マナは器用に折り紙で星を折っていた。キラキラ輝く銀の星と金の星、
「ありがとう、りっかちゃん」
ニカッ、って感じで笑って、その星を手に取って私に見せてくれる。とても上手にできているマナの星。本物みたいに見えた。
それに比べて私のお星さまは…
「りっかちゃんのおほしさまもじょうずだよ」
「ほんと? ありがとう!」
全然上手にできなくて、折り目もたくさんついちゃったお星さまだったけど、マナに褒められるとなんだか上手に見えてきて、笑顔になってしまうのだった。
「次はお願いごとを書きましょう」
「はーいっ!」
みんなが飾りを作り終わると、次は短冊にお願いごとを書く時間になった。
短冊が1枚ずつ渡される。女の子はピンク色、男の子は水色。男の子の中にはたくさんほしいって言っている子がいたけど、わたしは幼心に1枚で十分、いや、1枚じゃなくてはいけないような気がしていた。お願いごとをたくさん書くのはなんかずるくて、全部叶えてもらえなさそうだったから。
私のお願いごとは最初から決まっていた。この、新しい、素敵なお友達、マナといつまでも一緒にいられますように。それが私のお願いごとだった。
「りっかちゃんはきまった?」
「え、あ…えっと…」
でも、横には本人がいるから、なんだか恥ずかしくて短冊にまだ書けずにいたところに、当の本人にいきなり尋ねられてしまい、返事があやふやになってしまう。
話題を変えるように、
「まなちゃんは?」
そう尋ねて、すでに何か書かれているマナの短冊をのぞく。そこには
「さっかーぼーるがほしいです」
と書いてあった。
少しだけ、感じるさみしさ。でも、そのさみしさの理由が分からず、なんでだろう、なんでだろう、そう思っているところに、
「まなちゃーん! おねがーい!」
「いいよー!」
マナを呼ぶ声とそれへの返事。マナは他の友達のお手伝いにかけてゆく。
ちょうどいいタイミング。マナがいないうちに私は短冊にお願いごとを書いた。
「まなちゃんといつまでもいっしょにいられますように」
その願いが叶うように、祈りをたくさん込めながら。
先生は全員が書き終わったのを確かめて、飾りつけをするように促す。一斉に笹の周りにみんなが集まる。
高いところは先生が。低いところは自分たちで。作ったわっかも、お星さまも、みんな目立つところに飾ろうとするけど、でも、それでけんかが始まったりして先生がたしなめたりしていた。
私とマナはそんなことにならないように、それほど目立たない、だからふたりっきりになれる場所に、お星さまを並べて飾った。
飾られたお星さまを見て、私たちは顔を見合わせ微笑みあう。とても嬉しかった、横に並べて飾ることができたから。
飾りつけが終ったら、次はいよいよお願いごと。
どこにつるすか、またもや男の子たちは競って上を目指すけど、私はさっきのお星さまのそばにしようって決めていた。
私とマナの、仲良しのしるしの2つのお星さま。そのそばなら、私の願いもきっと叶うはず。そう思ったから。
「りっかちゃん!」
そう思ったときだった。ふと、横にマナが現れる。
「あ、まなちゃん…」
私の胸はドキドキし始めてしまう。マナへの想いを書いた短冊を見られるのはちょっと恥ずかしいってまだ思っていたから。
「そういえばりっかちゃんのおねがいってなんだったの?」
そう言ってマナは私の手にぶら下がる短冊をじっと見つめる。私は、ぱっと隠そうとするももう遅かったらしい。マナは私のお願いごとを小さな声で読み上げると、自分の手にぶら下がっている短冊を持ったまま教室へ戻ってしまった。
マナの思いがけない行動に、私のお願いがマナの気にさわったのではないか。もしかしたら、怒ってしまったのかもしれない。そして、もう、仲良くしてもらえないのではないか、そんな悪いことがたくさん浮かんできて、慌てて後を追いかけていった。
マナは席に座って鉛筆を握り、自分の短冊をじっと見つめて、何か考えていた。
「ま…まなちゃん…」
おそるおそる声をかけるけど、マナは難しい顔をして短冊に向かったまま。
「ごめんね…まなちゃんのこと、かいちゃって…」
その時私は、どうしよう、どうしよう、そればっかり考えていた。この、素敵なお友達を失うことを考えると、胸が苦しくなるのを感じていた。
「りっかちゃん…ありがとう!」
でも、そんな私のマイナスな考えをとばしてくれたのは、マナのこの一言だった。
私は思わずマナの顔を見つめてしまう。マナはいつものニカッ、って笑顔を私に向けると、自分の短冊にこう付け加えたのだった。
「りっかちゃんといつまでもなかよくいられますように」
飾り付けも、お願いごとも、全部飾られて立派になった笹はきらきらして、風が吹くたびに「ざざざ、ざざざ…」とすてきな音を立てて揺れ動く。
私とマナはお迎えを待つ間、手をつないでその様子を見ていた。私の視線は短冊へ。ふたり、同じ願いを持つ短冊も、きらきら、夕方の橙の光に照らされて、揺れていた。私はこのお願いが絶対に叶うって、そう思っていた。マナも、同じお願いだったから。
その翌日、七夕の日にそれは起こった。
当時、私はよく男の子にいじめられていた思い出がある。引っ越してきた子、というのが珍しかったからなのかもしれない。暴力的なことはなかったけれど、よくからかわれていたのを覚えている。でも私がからかわれているのをみると、いつもマナが助けてくれていた。
その日も、とある男の子が突然扉を開けて部屋に入ってくるなり、
「うわ~! りっかがあっちっちだ~!」
なんて言い出したところから始まった。
その時絵本を読んでいた私は、いきなり呼ばれた名前に、そして、その言葉の内容に、飛び上がってしまうぐらいびっくりした。でも、あっちっちってどういうことか、全く見当がつかなくて、絵本から目を上げてその男の子をこっそりと見ることぐらいしかできなかった。
「りっかとまながあっちっちだぞ~!」
「えー?」
「なになに?」
いくつも沸き立つ男の子の声。それで私はわかってしまった。七夕のお願いごとをネタに私をからかっているということを。そして、私だけならまだしも、マナまで巻き込んでしまったことに悲しくなってきた。私のせいでマナに迷惑をかけるなんて、私のせいでマナまでからかわれるなんて…。私は申し訳なくて、悲しくて、涙があふれてきて、それを見せまいと絵本で顔を隠すのが精一杯だった。
「りっかとまな、おんなのことおんなのこなのにあっちっちなんて、おかしいよな!」
「おんなのこどうしであっちっちー!」
でも、男の子たちのからかいの言葉はいつまでも止まらなさそうだった。
私はますます悲しくなって、あとからあとからあふれる涙は机の上にこぼれて水たまりを作っていた。
せめてもの救いはマナがまだこの場に帰ってきていないことだった。
このまま帰ってこないでほしい。マナにこんな悲しい思いはさせてくないから。
でも…すぐに帰ってきて、いつものように私を助けてほしい。
ふたつの気持に挟まれて、私はどうしたらいいかわからず、ただ、絵本を読むふりをして顔を隠していた。
「りっかはまなといつもいるからぜったいあっちっちだとおもってたんだよ」
「りっかちゃんとあたしがどうしたの?」
男の子の声に被さる声、それはマナの声。一番帰ってきてほしくて、一番帰ってきてほしくない人が教室に戻ってきた。
マナはその男の子をちらっと見ると、私を探すように教室の中に視線を配る。私は泣いていることを気づいてほしくなくて、絵本で顔を隠して、ただ、じっとしていた。
「りっかちゃん!?」
でも、やっぱり気づかれてしまった。マナはびっくりした顔をして慌てて私のそばにかけてくる。
「どうしたの? りっかちゃん…ないてるの?」
「なんでも…ないよ…」
「うそ、なみだたくさんでてるよ」
マナの指が私のほほをなぞる。私は我慢できなくてマナに抱き付いて大泣きを始めてしまった。
「ほら、やっぱりりっかとまなはあっちっちだ~!」
「あっちっち! あっちっち!!」
男の子たちのはやし立てる言葉で、マナは何が起こったのか気づいてしまう。そして、マナまでからかわれてしまう。そう思ってマナの体の中で首をぶんぶん振って離れようと思った。けど、やさしくも強いマナの力は私をはなしてくれなかった。
マナは私の髪をやさしくなでて、小さな声で「大丈夫だよ」ってつぶやいた。私はゆっくり顔を上げてその顔を見ると、ニカッ、っていつもの笑顔をして、私の両耳に両手を覆った。
どうして耳をふさぐのだろう? そう思った瞬間だった。
「うるさーいっ!!!」
耳をふさがれても聞こえるマナの大きな声。マナの体の中でそっと横を、教室を見回すと、男の子たちが驚いた顔で止まっていた。
「りっかちゃんとあたしが、あっちっちでなにがわるいの?」
にらみつけるように教室にいる男の子に視線をなげる。みんな、その勢いに圧倒されてしまったのか、何も言い出すことはできない。
「あたし、りっかちゃんのことすきだもん。かわいくて、やさしくて、いつもあたしのそばにいてくれて、いろいろなことしってて、それをたくさんおしえてくれるりっかちゃんのこと、だいすきだもん。それがわるいことなの?」
その言葉に私はなんだか嬉して、そして、マナがとってもかっこよくって、なんだか絵本の中の王子さまみたい、そう思って顔を見つめていた。
「もし、りっかちゃんのことをこれいじょういじめたら、あたし、ぜったいにゆるさない!」
その、厳しい目つき、厳しい言葉で男の子たちは委縮している。中には泣きそうになっちゃっている男の子もいた。
「りっかちゃんにごめんなさい、して!」
追い打ちをかけるようなマナの言葉。男の子たちは最初顔を見合わせていたけれども「ごめんなさいしないと、ゆるさない!」と言うと、ぱらぱらと男の子たちは私たちに近づいてきて謝ってきた。私は、ただ、謝られるたびにうなずくだけ。心の中はマナのことでいっぱいだった。
「りっかちゃん、もうゆるしたげる?」
それはマナのやさしい言葉。私はその言葉に素直にうなずいた。
マナも「うん」ってうなずいて「ゆるしてくれるって。もう、いじめたらだめだからね!」と、さっきよりやさしい声でみんなに告げた。
夕方、黄昏時、いつも遅くに迎えに来るお母さんを待つ私と、めずらしくお迎えが遅いマナ、ふたり手を握って、同じお願いごとを書いた短冊を見上げていた。
風にさわさわ揺れる笹、私たちの想いもゆれている。それを見ながら、それまで起った出来事を思い出していた。
マナの作ったお星さまがきれいだったこと。
マナがわざわざ私と同じお願いごとをしてくれたこと。
マナがからかわれている私を守ってくれたこと。
いつも、私のそばにマナがいてくれて、私に何かあったときはマナが守ってくれている。それはとっても嬉しい。
でも、それって、たとえば、私がマナのお菓子をいつももらってばかりで自分のお菓子をあげないのと一緒でずるっこじゃないか、そんな風にも思っていた。
「まなちゃん、わたし…」
「どうしたの?」
でも、私があげられるお菓子なんて何も思い浮かばない。私はどうしたらずるっこじゃなくなるのだろう…答えがでなくて頭の中がぐるぐるまわる。
私は難しい顔をしていたのだろう。マナは私の手を握る力を少しだけ強めると、
「りっかちゃん、ずっといっしょにいようね。りっかちゃんのおはなしきくの、だいすきだから、またきかせてね」
そう告げる。私はその時、ふっと、ぐるぐるまわる頭の中が晴れた気がした。マナのためにできることが自分でもあるってわかったから。
「うんっ!」
私はとびきりの笑顔でマナに返事をした。私は私のできることでマナを守っていくんだ、そう思って、いつもマナがするみたいにぎゅって抱きしめてみた。
最初はびっくりした顔をしたけど、それも一瞬のこと。マナも笑顔で私のだっこを受け止めてくれていた。そんなマナがなんだかかわいく思えてきて、いつもされているみたいになでなでもしてみたりして…マナはずっと嬉しそうに私の行為を受け止めていた。
でも…その時の私は相当浮かれていたんだと思う。それだけでは止まらずに、
「仲良しのしるし」
そう告げて、マナの唇に自分の唇を重ねていたのだから。
「六花、どうしたの?」
想い出をめぐっていた私は、マナの声に現実に戻される。いつの間にか商店街を抜けて、もう家のそばの公園の前まで来ていた。夕暮れもとうに終っていて、街灯が公園とマナを照らしている。
私は取り繕うように笑顔を作って、
「なんでもないわ」
って言うけど、マナはちょっとだけいたずらっぽい顔をしている。
「なんでも、っていうときは、なにかある、のしるし。はじめてのキス、想い出しちゃった?」
あっさりと私の心の中を読まれてしまい、私はしまったって顔になってしまう。でも、私を見つめるマナはやさしい笑顔に変わる。
「あたしも、想い出してたよ」
不意打ちのように抱きしめられて、背中に回されるマナの腕。重なり合ったマナの胸からの鼓動はやさしく響いて、私の心はやすらいでくる。
「今でも、六花のこと、大好きだよ。いつも一緒にいてくれて、あたしのこと、たくさん助けてくれて。プリキュアになったときはどうなるかって思ったけど、それでもずっとついてきてくれて。六花と仲良くなれて本当によかった。これからもずっと一緒にいてね!」
「う、うん…私も大好き。ずっと一緒にいたい」
あの時から、今までも、ずっと仲良くいられるのは本当にうれしい。
小学校にあがったり、
ありすと友達になったり、
マナより私のほうが背が高くなってしまったり、
マナの人助けがだんだんとすごいことになって、私が放置されたり、
プリキュアになったり、
まこぴーという友達ができたり、
そんなことがあっても、私たちは変わらず、ううん、そういう、大きな出来事があるたびに私たちの仲はもっと深くなっている気がする。
時々はけんかしたこともあったし、しばらく口をきかないこともあったけど、最後には結局仲直り。私にとってマナは必要だし、マナにとっても私は必要なはず、っていうとちょっとうぬぼれた考えかもしれないけど、少なくとも、私はマナがいないともう生きていけないって思っている。大げさかもしれないけど。
「うん、六花分補給できた」
「なによ、六花分って」
ゆっくり離れるマナに私は苦笑しながらその変な言葉の意味を確かめる。
マナは「ないしょ」って笑いながら私の手をとると歩き始めた。
「今日はうちに寄っていって。お店に七夕の笹をかざるから六花も連れておいでって」
「いつもありがとう。喜んでご招待されるわ」
「うんっ!」
近づくマナの家。店先には笹が飾られているのが見える。今年も大きな笹。
「ずっと、マナと仲良く一緒にいられますように」
あの年から変わらないお願いを私は今年もつるすのだろう。来年も、再来年も、ずっと、マナとの素敵な日々が続くように、そう祈りながら。