Fate/SEED Destiny 運命篇:聖女と悪魔   作:シャイニングさん

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初めまして、シャイニングさんと申します。思いつきで書きました。楽しんでくだされば幸いです。


①交わる二つの運命

メラメラと揺れる炎、枯れ果てた草花、辺りに人らしきものの姿は見当たらず、代わりと言っては何だが無数の骸骨の戦士が声高らかに笑う、まさにこの世の地獄のような赤黒い世界。その中で一人、骸骨の戦士達と戦っている人物がいた。金髪を後ろで三つ編みにした、群青色の瞳の少女。濃紺の服装の上に銀色の鎧や髪飾りを纏って、先端の鋭い旗を振って襲いくる異形の怪物をなぎ倒していく。彼女の名は『ジャンヌ・ダルク』。かつて祖国フランスのために立ち上がった戦乙女にして、ルーラーのサーヴァントである。

 

「くっ、キリがありませんねっ!」

 

どれだけ倒しても、倒しても、ぞろぞろと戦士達は物量に物を言わせて攻めて来る。対軍宝具があれば余裕で対処できる。対城宝具があれば突破口を開くことができる。しかし、ジャンヌはそのどちらも持っていない。いずれは、この大群に押し潰されてしまうだろう。

 

「それにしても、どうしてこんなことに…!」

 

サーヴァントは本来、聖杯戦争の度に大聖杯の力と7人のマスターの詠唱で英霊の座から七騎召喚される。召喚された七騎にはそれぞれセイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー、といったクラスに分けられ、七騎のサーヴァントとそのマスター達の、聖杯を巡るバトルロワイアル『聖杯戦争』が行われる。という仕組みなのだ。

 

だが、物事には例外が存在する。サーヴァントには基本の7騎を除いた『エクストラクラス』というものがある。その中でルーラーのクラスは聖杯戦争の管理者として、聖杯戦争の異常事態や聖杯の力で世界が崩壊する危機に瀕した時に聖杯自らの手で召喚されるクラスで、マスターはおらず、またステータスも全体的に高い。

 

つまり、自分がここに召喚されたのには何か訳がある筈だ。しかし、それならば何故聖杯からの啓示がないのか。今のジャンヌは、ここが何処で、何故こんな風になっているのか、そもそも自分が何故こんな所に召喚されたのかすら分からないでいた。召喚されたと思えば、周りに居たのはこの骸骨の集団である。無理もないというものだ。

 

「ともかく、召喚された理由も知らぬままここで倒れる訳にはいきません!」

 

真正面から剣を振りかぶって来た敵に、槍のように尖った旗の先を突き刺す。

 

「そこです!」

 

そのまま旗を右に振るうことで、左前方からの敵を薙ぎ払う。その勢いによって生じた風圧に、何体かの敵が吹き飛ばされた。チャンスは今しかない!

 

「よし、これで…!」

 

運の良いことに、自分が敵を吹き飛ばした方向は骸骨の戦士の数が少なかったようで、残っている数体の敵の奥に森が見えた。葉が黒く染まっていて真っ暗で不気味な森だが、そんなことを気にしている場合ではない。突破口が開けたのだ。しかし、ここでジャンヌは僅かばかり気を抜いてしまった。それが命取りになるとも知らず。

 

「…っ!」

 

突然、ジャンヌの左足に違和感が生じて、ついその場に膝をついてしまう。そこに目を見やると、一本の矢が刺さっていた。それが目に入った瞬間、ジャンヌは違和感の正体が痛みであるということを理解する。矢を引き抜き、魔力で治療しようとする。だが、恐らく動けるようになる前に確実にスケルトンに首を取られるだろう。そうなれば、霊体を保つことすら出来ずに消滅してしまう。

 

(このままでは…不味いですね。)

 

認めたくはないが、周りに誰もいないこの状況で動けなくなってしまえばもう終わりである。顔を上げれば、一匹のスケルトンがケタケタと笑いながら剣を構えている。今のジャンヌには、悔しさに下唇を噛むことしかできなかった。スケルトンもやがて飽きたのか構えた剣を勢いよくジャンヌに向けて振り下ろす。

 

 

《ビシュン》

 

 

その時、「ソレ」は現れた。

 

 

剣を振り下ろそうとした目の前のスケルトンが、上空より放たれた翡翠色の光弾によって焼かれ蒸発した。ジャンヌは驚きつつもゆっくりと顔を上空に向ける。顔や手足などの基本的なパーツは灰色で、腹部に赤、胸部と肩は青の、百八十センチ程のロボットだった。そのロボットは額に二本の角と顎に赤い突起物のついた特徴的な顔をしており、二つの目の下には血涙を思わせる赤いラインが通っている。何よりも目を引くのは、背中より生えている翼だ。刺々しい真紅の翼からは鮮やかなマゼンタ色の光がさらに大きな翼を象っていて、全体的に暗めな色との対比になっている。右手に黒いライフル銃を携えたその姿は、正に「悪魔」が相応しいと言えるだろう。

 

「…あなたは、一体…。」

 

『…』

 

ロボットは無言で、背中に背負っていた深緑色の長砲を構える。そして…。

 

 

《ドシュゥゥゥゥゥン》

 

 

赤を白で包んだ、特徴的な色のビームが放たれる。スケルトンの集団がそのビーム兵器に飲み込まれ、そして消えて行く。あっという間に、先程まで数え切れない程いたスケルトンは三百匹程度にまで減った。

 

「!?、ひゃっ!」

 

ジャンヌは思わず変な声が出てしまう。銃をしまったロボットが急降下して来るとともに即座にジャンヌを左手で抱えたのだ。そのままジャンヌはロボットに抱えられて森の中へと姿を消した。ロボットの腕の中で、ジャンヌは少しずつ意識が遠くなっていき、やがて彼女は完全に気を失って目を閉じた。

 

 

 

 

 

(ここは…どこでしょうか?)

 

気がつくと、ジャンヌは森の中にいた。先程見た黒い森ではなく、緑豊かで、動物達もいる穏やかな森だ。急にこれまで見ていた景色がまるで立体映像だったかのような感覚に陥ってしまう。

 

(私は…悪い夢でも見ていたのでしょうか?)

 

目の前に広がっているのは、とても穏やかで、沢山の生命が生きている自然の景色。見ているだけでも、これまでの争いに疲れていたジャンヌの心を十分に癒してくれた。ふと顔を下に下げると、うっとりとしているジャンヌの足元に1匹の兎が寄ってきた。

 

(うふふ、よしよし。)

 

ジャンヌは兎の頭を撫でてあげようと、腰を下ろそうとした。さっきまでの地獄のことは忘れて、今は取り敢えずこの美しい自然の中でのんびりとさせて貰おう、と。その時だった。

 

《ビシュン》

 

《ドカァァァン》

 

(!、何事ですか!?)

 

後ろを振り返ると、そこには恐ろしい光景が広がっていた。何と、巨大なロボットとロボットが戦っているのだ。先程見たロボットに似ているが、大きさはその十倍程ある。光の刃で、光弾を放つ銃で、色々な見たこともない兵器を使って。ロボットは上空にも無数にいて、そこでもまた争いが繰り広げられている。そして、攻撃が外れる度に気が吹き飛び、森が焼け、生物達が死んでいく。

 

(な、どうして…どうしてこんなこと!)

 

しかし、何故かジャンヌはその場を動けない。まるで映像でも見せられているかのように。自分には、この醜い戦いを見届けることしかできない。先程とはまた違った意味で、何もできない自分が悔しかった。

 

「父さん!」

 

「あなた…。」

 

「大丈夫だ。目標は軍の施設だろう。急げ◼︎◼︎!」

 

ふと、ジャンヌの目に四人の人物が入った。発言から察するに、二人兄妹の四人家族だろう。長男と思われる少年の名前を父が言った時、肝心の名前だけ靄がかかっているかのように聞こえなかったのが気になるが…どうやらここは今戦場になっていて、彼らは避難している最中の一般市民だろう。

 

(彼らが…無事に逃げ延びることができますように。)

 

ジャンヌは四人の無事を願って祈りを捧げる。かつて自分も戦争に参加して多くの命を手にかけた。その中で、もしかしたら彼らのような一般人も犠牲になってしまったかもしれない。許してもらうつもりはない。だが、せめてもうこれ以上は、戦争で生まれる犠牲は出て欲しくはないと思っている。しかし、現実は残酷である。

 

「マユ!頑張って!」

 

「あっ!マユのケータイ!」

 

妹と思われる人物のポケットから、桃色の折り畳み式ケータイが滑り落ちてしまった。落ちたケータイは坂道を転がり、一本の細い木の幹の麓で止まる。

 

「そんなのいいから!」

 

「イヤーっ!」

 

母が手を引いて逃げようとするが、マユと呼ばれた少女は頑なに拒んで落ちたケータイを拾いに行こうとする。いつあの光弾が来るかも分からないこの状況で足を止めるのは完全な自殺行為だ。

 

「クッ!」

 

兄と思われる少年が、ケータイを取りに下へと滑り降りる。

 

(主よ…!彼らをお守り下さい…!)

 

ジャンヌはひたすら祈り続ける。大丈夫だ、彼らは争いを望んでいない。きっと主は彼らをお助けして下さる。そんなジャンヌの淡い期待は無慈悲にも叩き折られた。

 

 

《ビシュゥゥゥ》

 

 

《ビシュィィィィィィィィィィ》

 

 

《ドカァァァン》

 

 

《バァァァァァァァァァァン》

 

 

「っ!があああああああっ!」

 

 

(ああっ!)

 

空中と地上にいた二機のロボットが、お互いに相手を撃ち落とすために放った砲撃。その二機のビームの衝突によって生まれた爆風に、ケータイを拾い上げた少年は吹き飛ばされ、凸凹だらけの坂道を転がり落ちる。乾ききった大地に、少年の身体が痛々しく叩きつけられた。

 

(ほ、他の家族は…っ!)

 

「大丈夫か!?さぁ、早く!」

 

駆けつけた兵士に少年は身体を支えられて立ち上がる。一先ず彼はもう大丈夫だろう。だが、他の家族は…。

 

「ハッ!父さん、母さん…マユは!?」

 

少年は振り返って、先程まで三人がいた方向を見る。

 

(…!、いけない!見てしまっては!)

 

しかし、ジャンヌには止める術もない。そこに広がっていたのは、先程まで少年と共に逃げていた大切な家族達の変わり果てた姿だった。右腕は千切れ、糸の切れた人形のように動かない妹。自分の身体から溢れる血液の血だまりに溺れるように死んでいる母。木の下に潰され、最早原型すら留めていない父。見るも無残な光景に、ジャンヌは言葉を失う。何を今更。自分とて今までこんな風に人を殺してきたではないか。そう、頭で割り切ろうとするが、やはり自分にはできない。何の罪もない者達が、一瞬にしてその命を奪われるという理不尽を許せない。

 

(…あなた方三人の魂が、天上の国で救われることをお祈りします。)

 

それでもジャンヌは祈ることしかできない。せめて、亡くなっていった罪のない魂が、これ以上苦しむことのないように。そして…。

 

「う…うああっ、うっ…。」

 

少年は泣き崩れた。もう身体とは繋がっていない妹の右腕だったモノに触れようとして、触れることをせずに伸ばしたその手を強く握りしめた。周囲はまだ戦闘が行われていて、決して安全な状況とは言えなかったが、彼は逃げることも忘れてただひたすらに泣き続けた。こちらから顔を覗くことはできなかったが、地面を濡らす雫がその証拠だった。

 

「う、うっ…!うおおおおおおおおおおっ!」

 

(彼にも、どうか救いがあらんことを…!)

 

天空で尚も戦い続ける二体の巨人を睨みつけ、少年は悲痛な叫びを上げる。彼は戦争によって理不尽にも家族を奪われた。彼はこれから一生、この悲しみを抱いて生き続けるのだろう。ジャンヌは、そんな彼が幸せを手にすることができることを願って静かに祈りを捧げた。

 

 

 

 

 

「…ハッ!」

 

ジャンヌはここで意識を取り戻した。どうやら、気を失ってしまっていたようだ。

 

「…夢、だったのでしょうか。」

 

そうであってくれたらどんなに嬉しいことだろう。しかし、恐らくあれは現実だ。誰かの体験を第三者の視点から覗いてしまったのだろう。恐らくはあの少年の、であろうが。巨大なロボットが出てきたところは少し現実とは思えなかったが、それはここに召喚された時点での記録では、という話なので、今よりさらに未来の話だったとしたらおかしくはない。

 

「それにしても、ここは…。」

 

いま、ジャンヌはどうやら森の中にいるようだった。さっき夢で見た森と違って、木も葉も真っ黒で暗くて生物がいる跡も見当たらず、何とも薄気味悪い。そして、辺りを見回すが自分以外には誰もいない。ただ、目の前には焚き火が出来ていて、自分には布が掛けられているので、自分以外の誰かがいるのは間違いない。

 

 

「…目が覚めたのか。」

 

 

「!?いつの間に?」

 

突然背後から声を掛けられ、ジャンヌは跳ね起きる。

 

「グッ!」

 

しかし、左足の痛みがまだ完治していないため、すぐにふらついてしまう。

 

「…あまり無理するなよ。その足じゃ歩くこともままならないぞ。いくらサーヴァントだからって怪我が回復していない内は無理をしない方が身のためだ。」

 

木の陰から現れたのは、自分より少し背の高い少年だった。彼は赤い軍服を着ていて、癖のある黒髪に、白い肌、整った顔立ちをしている。何よりも目を引くのは、その燃えるような、鮮やかな真紅の瞳だった。

 

 

真名看破のスキルを持つジャンヌはすぐにこの少年が『バーサーカー』のクラスのサーヴァントであることが理解できた。

 

 

「あなたも…ここに召喚されたサーヴァント、ですね?」

 

「…さぁ、どうだかな。」

 

彼はジャンヌの質問には答えなかったが、自分がサーヴァントであることを否定するつもりもないようだった。そもそも、サーヴァントの存在を知っている時点で『その道の人間(魔術師)』であるということなのだが。

 

「…まぁ、ずっと寝ていられてるよりはマシだな。」

 

バーサーカーはその手に持っていた薪を焚き火の中に投げ入れる。パチッ、とした破裂音の後、火はより勢いを増して燃え上がる。バーサーカーはそれを確認し、ゴソゴソと腰に下げているポケットバッグの中に手を入れ、その中から携帯食料を二つ取り出すと、一つをジャンヌに投げ渡した。

 

「…ありがとうございます。」

 

ここでジャンヌは腹が減っているということを認識する。本来、サーヴァントは魔力が尽きぬ限り消滅することはなく、食事というものを必要としない。しかし、自分は今確かに腹が減っている。それは何故か?

 

「私は…『受肉』、しているのでしょうか?」

 

何らかの要因で、サーヴァントが人間としての肉体を得ることはなくはない。そうなると、魔力が尽きても消滅はしないが、サーヴァント特有の霊体化ができなくなったり、一部の宝具に制限がかかってしまうこともある。そもそも受肉をする理由が全く分からない。

 

「今頃気付いたのかよ。ルーラーってのは案外鈍臭いんだな。」

 

その言葉を聞いたバーサーカーが鼻で笑い飛ばしてきた。ジャンヌはムッとして彼を睨むが、ここでまた新たな違和感に直面する。

 

(ステータスが…分からない?)

 

目の前の彼がバーサーカーということは理解できる。しかし、それ以外のステータスが全く読めない。真名看破のスキルは、サーヴァントのクラス、ステータス、真名、宝具と、あらゆる情報を得ることができる。気配遮断スキルを持つアサシンのサーヴァントなら幸運の数値次第では読めないものもあるが、バーサーカーの、しかもほぼ全ての情報が分からない程幸運値が高いサーヴァントは珍しい。

 

「…あなたは、一体何者ですか?」

 

 

「俺か?俺は…そうだな、『C.E.(コズミック・イラ)のバーサーカー』とでも呼んでくれよ。」

 

 

「コズミック・イラの…バーサーカー…。」

 

C.E.(コズミック・イラ)。日本語に訳すると「宇宙世紀」となるが、ジャンヌの知っている限り西暦二千十九年現在までにそんな年代は聞いたこともない。

 

「聞いたこともない年代だ…って顔してるな。そりゃそうだ。コズミック・イラは本来アンタの住んでいる世界は相容れない世界だ。そもそも、本来俺がサーヴァントとして召喚されることはあり得ない。魔術とは一切の関係がない世界だからな。ここでアンタと俺が出会えたことが一種の奇跡なんだよルーラー。…いや、ジャンヌ・ダルク。」

 

「…私のことをご存知なのですか?」

 

「この世界の情報を持ったサーヴァントならその旗を見れば誰だって分かるさ。俺でもな。オルレアンの乙女、若き革命家。アンタはフランスにとって希望の象徴だった。でもその強すぎた愛国心が仇になってやがて宮廷では孤立するようになって、さらに敵に捕まって、終いには祖国にも見放されて火刑に処されて哀れにも十九歳の若さで死亡…。悲しい人生だな。」

 

C.E.のバーサーカーはジャンヌの後ろの木に立て掛けてある旗を指差して皮肉を込めた言葉で言い放つ。

 

「…私を哀れんでいるのならお構いなく。私は、自分の人生を悔いてはいません。最後の火刑も、これまで多くの人を手にかけた私への罰と救済であると受け入れています。たとえそれを愚かな考えだと笑われようと、私の意志は揺らぐことはありません!」

 

ジャンヌはC.E.のバーサーカーの目を見てはっきりと宣言する。曇りのない強い意志を持ったその眼力に気圧されたのか、バーサーカーは2つの紅を彼方へと逸らす。鮮血と見紛うほどに鮮やかなそれには、生気の篭った光はない。少しの沈黙の後、彼はハハッと笑う。

 

「随分と素晴らしい思想をお持ちしていらっしゃるようだな。聖女と呼ばれるだけのことはあるようだぜ。」

 

言葉ではあざ笑っているようだが、言葉を発したその唇は震えているようだった。先程の軽口とは違って、自分の本心を隠したいがために敢えて口に出した言葉だと、ジャンヌは冷静に推理する。

 

「それより、C.E.のバーサーカー、ここは一体何処なのでしょうか?」

 

彼のことも気になるが、とりあえずまずは情報を得ることが先決だと思ったジャンヌは彼にこの状況についての質問をする。ここは一体何処で、何故自分はここに召喚されたのか。彼なら、何か知っているかもしれない。

 

「悪いけど、俺だってそんなこと知らないよ。気づいたら召喚されていて、訳も分からず歩いていたらスケルトンの大群に襲われているアンタがいたから宝具で助けてやって、とりあえず森が見えたから、その中なら休めると思ってアンタを連れてここまで来たらアンタが寝てたから、とりあえず暖をとるために火を起こして、森で薪になる枝を集めてたんだ。」

 

「それでは、やはりあなたが先程私を助けて下さったのですね。ありがとうございます。」

 

「いや、礼はいいよ。その旗を見たらアンタがルーラーのサーヴァントってのは何となく分かったからな。こんな状況だし、味方になってくれそうなサーヴァントがピンチの時は助けておいて損はない。」

 

淡々と話す彼の言葉が、やはりどこか嘘をついているように感じる。自分を助けてくれたことや、味方がいた方が良いというのもどうやら本当のようだし、自分としても有難いとは思っている。しかし…。

 

「それでは、あなたのことも話していただけませんか?」

 

「…どうしてそんなことをする必要がある?」

 

ここは一つ、相手にカマをかけてみよう。そう思ったジャンヌはC.E.のバーサーカーに自分のことを話して貰おうとする。単純に興味がある、というのもあるのだが。彼は予想通りの反応を返して来た。想像以上に嫌そうな表情をしていることも含めて。

 

「いえ、私のスキル『真名看破』は、本来ならサーヴァントの全情報を得ることができる筈なのですが、何故かあなたの情報はあなたがバーサーカーであるということしか得られませんでした。『気配遮断』を持つアサシンのサーヴァントなら幸運の数値次第では分からないこともありますが、あなたは幸運値が基本的に低いバーサーカーのクラスなのでその可能性も低いと思いまして…。何より、あなたは私のことは分かっているのに、私はあなたのことを何も知りません。それは不公平というものだと思います。ですので、私はあなたのことをもっと知りたいと思って」

 

「嫌だね。アンタに話すことなんて何もない。」

 

ジャンヌが言い終わらない内にC.E.のバーサーカーはきっぱりと断る。このよく分からない状況の中で、唯一協力できそうなサーヴァントにも真名を言おうとしないことから分かっていたが、彼は頑なに自分の本心を隠そうとしている。C.E.のバーサーカーという呼び名も、真名を知られたくないという彼の思いが作った仮の名前だ。名はその存在を表すものだが、真実の名前をクラスで隠さなければならないという裏の鉄則があるサーヴァントという存在は、自らの存在を隠し他と交わることを許されない悲しい存在であると思ってしまう。

 

「何故、あなたはそうまでして自分を偽ろうとするのですか?」

 

その言葉が耳に入った時、C.E.のバーサーカーはそんなことも分からないのか、といった表情でジャンヌを睨みつける。紅い、鮮やか瞳の発する眼力に気圧されて、ジャンヌは思わず息を呑む。

 

「それが、英霊がサーヴァントとして存在する意義ってヤツじゃないのか?自分を偽り、他人を信じず、(マスター)の命令を遵守し、自分以外のサーヴァントを全て消す。それが『聖杯戦争』だろ?自分の欲望を満たすために、自分以外の生命を弄ぶような奴らがいて、そいつら同様、自分の願望を叶えるために手段を問わない英霊って名前の人形(サーヴァント)がいて…。多くの生命が犠牲になろうと知ったことじゃないんだ。だってそいつらは皆自分が一番可愛いんだからな。だから…!だから…。」

 

それは、C.E.のバーサーカーが初めて見せた偽りのない本心だとジャンヌは確信する。彼は憎んでいるのだ。魔術師達の殺し合いで多くの罪なき生命が犠牲になる聖杯戦争というものを。そして、そんな戦いに参加させられるサーヴァントとなってしまった自分自身を。彼に何があったのかは分からないが、C.E.のバーサーカーというサーヴァントがどういった性格の人物なのかはある程度推測できる。

 

「…確かに、あなたの言うこともそうですが、今は非常事態です。助けていただいたことはありがたいと思いますが、マスターも他のサーヴァントともいないこの状況で、背中を預けることになるあなたのことが分からなければ、協力してこの状況を乗り切ることは難しいと思います!」

 

それでも、相手のステータスやスキルについて知っていないと、いざ強力な敵に遭遇したときに連携が取れず痛手を負うことになるかもしれない。そんなことにならないように、やはり彼の能力だけでも知っておきたい。

 

「…。」

 

C.E.のバーサーカーは真剣な表情で考え混んでいる。彼にも、自分の弱点などを相手に突かれた時に助けて貰えないかもしれないといった不安があるのだろう。あと一言で、彼を説得できるかもしれない。

 

「ですので、どうか…。」

 

 

《ビシュン》

 

 

声をかけようとしたジャンヌは突然の彼の行動に驚く。ジャンヌに向かって、彼は一瞬でさっきのライフル銃を取り出しその引き金を引いたのだ。放たれた銃弾はジャンヌの横髪を掠め、後方へと消えていった。

 

「っ!?突然何を!?」

 

「…どうやらここも安全じゃなかったみたいだな。」

 

耳を澄ませると、複数の足音が聞こえてきた。足音の数は聞こえるだけでも五十体前後。足の使えないジャンヌに太刀打ちできる相手ではない。

 

「…!恐らく、先程のスケルトンでしょう。今のこの足でどこまでやれるか…!」

 

「…俺が一人で相手をする。アンタはその辺にでも隠れてろ。」

 

C.E.のバーサーカーの背中に機械的な赤い翼が生えていく。先程の戦闘で見た、あの灰色の悪魔のようなロボットもこれと同じ翼を持っていた。つまりさっきの鎧は自分の身に纏うタイプの宝具で、この翼もその内の一つなのだろう。

 

「え!?あの!ちょっと!?」

 

ジャンヌの呼びかけには応じず、C.E.のバーサーカーは赤い翼を広げて光の翼を展開し、そのまま残像を残しながら飛び去っていった。ジャンヌには、その背中がとても悲しそうに見えた。

 

 

「C.E.のバーサーカー…。一体何のため、誰のためにあなたは戦い続けるのでしょう。」

 

 

堅く閉ざされた彼の心を開く手段を、今のジャンヌは持っていない。何より、こうして2度も助けてもらっているのに彼に何もしてあげられないというのが余計にジャンヌは悔しかった。

 

 

 

 

 

森を抜け、赤黒い荒野に出た。スケルトンの大群の上空にC.E.のバーサーカーは佇んでいる。彼を見上げ、骸骨どもはカタカタと不気味な音を出して威嚇してくる。その数はおよそ二百匹。先程から既に弓を持った何体かはこちらに弓を射るものの、向かって来る矢は左腕に召喚された盾によって防がれるため、彼には届かない。

 

「…お前らは俺と一緒だ。死んでいるのに、死ぬのを許されずに生かされ続けている。…お前らも、俺も、この世から消えるべきなんだよ。」

 

《ビシュン》

 

その言葉を合図に、C.E.のバーサーカーは先程使ったライフル銃を取り出して容赦なく発砲する。高熱のビーム弾が直撃したスケルトンはすぐにバラバラに砕け、地面に骨がばら撒かれる。

 

()()()()

 

しかし、敵も黙って撃たれているばかりではない。弓を持ったスケルトン達が全員一斉に弓を引いて、ビームの盾では防ぎきれない程の矢を放ってきた。

 

「チッ…!」

 

背中の紅い翼を広げて光の翼を展開し、残像を残しながら高速で右に回避する。スケルトン達は残像に惑わされて正確に狙いを定められていないのか、見当外れな方向に矢が飛んでいく。

 

「…一瞬で終わらせてやる。」

 

銃を霊体化させて消すと、彼は一本の剣を召喚する。その剣はこれまた異質なもので、機械的な刀身に本来刃があるはずの部分に窪みができていて、その窪みにレーザーが通っている。何より、大きさが二メートル程あるソレは剣と呼ぶには余りにも大きすぎる。

 

「…ハァッ!」

 

しかし、持ち主の身の丈を超える長さの剣を彼は難なく片手で振り回し、大勢のスケルトンをなぎ倒していく。一体、また一体と、次々とスケルトン達は地面に還っていった。残るスケルトンは、もうあと百匹程だろう。

 

「そこだ…『ビーム・コンフューズ』!」

 

スケルトンが一直線に並んでいる箇所を見つけると、彼は一度大型の剣を地面に突き刺し、ビーム刃のブーメランを取り出してそれをその箇所に投げる。ブーメランに斬られたスケルトン達は次々とその場に崩れ落ちる。そのまま彼は先程のビームライフルを召喚し、ブーメランに的確にビームを放つ。真っ直ぐに進むビームはブーメランに弾かれることによって周囲に拡散され、それによって広範囲に攻撃することができるようになったのだ。どうやらこれは宝具ではなく、『ビーム・コンフューズ』と呼ばれるテクニックのようだ。

 

「これで…終わりだ。」

 

自身に帰ってきたブーメランをしまい、地面に突き刺している剣を引き抜くと、そのままそれをスケルトンに投げ飛ばす。剣は円を描くように最後のスケルトンに向かっていき、スケルトンの身体を跡形もなく吹き飛ばした。剣はそのまま空中で回転の向きを変えて、やがて地面に突き刺さった。

 

「…。」

 

静寂。周囲に存在するのは、骸骨の残骸や燃え広がる炎。ただそれだけ。生命らしいモノは見当たらず、死屍累々としたおぞましい光景が広がっている。地面に突き刺さった大型の剣が、スケルトン達の弔いの十字架のように見える。後ろを振り返っても、そこにあるのは漆黒に包まれた森だけだ。ここはこの世の地獄か、それとも…。

 

 

「!?、がはっ!」

 

 

突然の攻撃に、C.E.のバーサーカーは吹き飛ばされる。勢いよく地面を転がり、先程倒したスケルトンの残骸に背中をぶつけてやっと動きを止めることができた。顔を上げると、そこには彼の知っているあるモノがあった。

 

 

「…ザム、ザザー…。」

 

 

いつの間にそれはそこにいたのだろうか。非人型の平らな外見に、四方向を向いているビーム砲は甲殻類の蟹を思わせる。装甲の色は深緑で、紫の鋭い瞳からは無機質さが際立っている。『ザムザザー』と呼ばれた全高十メートル程あるそれは、明らかに並のサーヴァントが一体で対処できる相手ではない。

 

「…またお前を倒さなきゃいけないのかよ。面倒臭いな。」

 

ペッ、と吐き捨てると、C.E.のバーサーカーは光の翼を展開してザムザザーに接近し、ビームブーメランの出力を上げて作ったビームの剣で斬りかかる。だが、敵の装甲には傷らしいものは見当たらなかった。サーヴァントの召喚した武器ですら、このザムザザーの前では無力だ、とでも言いたいかのように。

 

「だったらこいつを食らえ…!」

 

敵から放たれるビームを躱し、彼はザムザザーの腹部に回り込む。体制を整える暇もなく、少し不安定な格好でザムザザーの腹部装甲にビームの剣を突き刺す。が、やはり刃が装甲を貫通する前にビームが消えてしまう。

 

「クソッ…!これでもまだ弱いってのか。贅沢な奴だぜ。」

 

だったら、とブーメランをしまい、光の翼によって残像を出しながらあるものがある場所へと向かう。それは、先程スケルトンを始末するために投擲し、拾う間も無く放置していた二メートル程の大剣が刺さっている場所である。剣が刺さっている場所の周囲は十分ザムザザーの砲撃の射程内に入っているのだが、残像の効果で相手は満足に狙いを定められていない様子だ。ザムザザーから放たれた砲撃は、全て見当違いな方向へと飛んで行った。

 

「…っ、よし、これで…。」

 

難なく大剣を引き抜き、C.E.のバーサーカーはすぐに一度その場を退避しようとするが、ここで相手は彼の予想していなかった行動に出た。なんと、ザムザザーは巨体であるにもかかわらず彼の予想を超えるスピードで接近し、その巨大な砲口を鉤爪に変形させて掴みかかってきたのだ。

 

「な…、ぐぁっ!」

 

咄嗟に身体を上昇させて避けるが、すんでのところで間に合わなかった。巨大なクローに右足を掴まれてしまう。獲物を捕らえたクローは振動によって熱を発生し、C.E.のバーサーカーの右足からプスプスと煙が上がっていく。それと同時に、足を焼かれる痛みが彼を襲う。

 

「グ、グウッ…!」

 

痛みを必死に堪え、何とかクローを大剣で斬りつける。それが敵に効いたのか、ザムザザーは放り投げるようにC.E.のバーサーカーを地面に叩きつけた。衝撃で軽く地面に窪みが出来る。

 

「く、クソッ…!俺は…、こんなところで俺は…!」

 

右足は使い物にならず、背中の翼も魔力切れで使えなくなってしまった。こうなれば彼はもう満足に動けない。つまり、ザムザザーの格好の的、という訳だ。何とか状況を打開するために宝具を使いたい所だが、彼は使おうとしない。

 

「対人宝具が通用する相手じゃない…!対軍宝具も効かない…!対城宝具は…、チッ、チャージに時間がかかる!」

 

C.E.のバーサーカーはこの状況を打開する方法を考えるが、考えても考えても打開策は浮かばない。そうこうしている間も敵は待っていてはくれず、ビームの雨が彼に降りかかる。

 

《ビシュン》

 

「…っ!」

 

その内の一つがC.E.のバーサーカーに直撃しようとしたその時だった。

 

 

「バーサーカー!」

 

 

なんと、ジャンヌがC.E.のバーサーカーを掴んでそれを避けたのだ。

 

「な?ルーラー、何で!?アンタ、怪我は…。」

 

ジャンヌは足を怪我をしていた筈だと、C.E.のバーサーカーは幽霊でも見ているような驚愕の表情でジャンヌを見ている。

 

「それなら、気合いで何とかなりました。」

 

自慢げにそう言うと、ジャンヌは太腿が見えるように紺のスカートをチラ、とたくし上げる。先程まで結んであった包帯はすっかりとれて、傷も完治とまではいかないもののある程度良くなっていた。

 

「ハッ、やっぱ『堅い女』の噂は伊達じゃないみたいだな。」

 

「なっ!?それ、どういう意味ですか?」

 

C.E.のバーサーカーの挑発に食ってかかろうとしたジャンヌだが、そこでザムザザーからの砲撃が飛んできたので急いで彼を抱えて後方にジャンプして躱す。すると、相手も攻撃が当たらないことに苛立ちを感じたのか、ビーム砲のエネルギーをチャージし始めた。

 

「不味い…、このまま一帯を吹き飛ばすつもりだ!」

 

「バーサーカー!私の後ろに!」

 

ジャンヌは即座に彼の前に立ち、旗を召喚して構える。

 

 

「『我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)』!」

 

 

~それは、戦において聖女ジャンヌ・ダルクが常に先陣を切って掲げ、付き従う兵士達を鼓舞した旗。天使よりの祝福によって味方を守護する結界宝具~

 

 

ジャンヌが宝具を展開し、間一髪でザムザザーの砲撃を防いだ。周囲の炎は消えて、辺りはただただ真っ黒に焦げた大地が広がるのみである。ザムザザーも結界を突破しようと躍起になっているのか、ビームを止めるそぶりを見せない。

 

「っ!このままではジリ貧というものですね。」

 

「…だから、俺が対城宝具で奴を落とす。ルーラー…いや、ジャンヌ・ダルク!」

 

意を決した、という表情で、C.E.のバーサーカーはジャンヌの背中に声をかける。

 

 

「…俺が、対城宝具を使うまでの時間…俺を守って欲しい!お願いだ!」

 

 

それは、ずっと自分を隠し続けた少年の、偽りのない心からの叫びだった。やがて、ザムザザーもエネルギーが尽きたのかビームを放つ砲口から煙を上げて一度動きを止める。それを確認して、ジャンヌはくるりと振り返って彼を見据える。沈黙…が、訪れることはなかった。

 

「もちろんです。バーサーカー。あなたは相手を倒す、それだけに集中して下さい。私が絶対に、あなたを守ってみせます!」

 

そう言って、ジャンヌは満面の笑みで少年に返した。それにつられて、彼もまた、少しずつ頰が上がっていった。

 

「ヘッ、それにしても、天使の祝福で悪魔を守るなんて、皮肉な話だよな。」

 

照れ隠しか、彼は顔を逸らして鼻を人差し指で掻く。

 

「いいえ、天使は時として悪魔さえも救済するものです。」

 

「俺が悪魔だってことは否定しないんだな。」

 

ハハ、と彼はさらに声を上げて笑う。

 

「…やっと、心から笑って下さいましたね。」

 

「……!ああ、そうかもな。」

 

そして二人は今一度、目の前の敵に身体を向ける。相手もようやく再起動し、一度距離をとってまたエネルギーのチャージを開始する。先程とは比べ物にならない程、チャージ時間が長い。心を持たぬ機械は、平然とここら一帯を焼け野原にするのだろう。

 

 

「…俺は、お前らとは違う…。敵を殺すためだけに作られた兵器と、心をもっている俺を…一緒にするな!」

 

 

そう言って、C.E.のバーサーカーもまた自身の魔力を大剣に集中させる。周囲の景色よりもさらにドス黒い赤の魔力が、巨大な機械の剣に収束され、剣のビーム刃の色もまた、鮮やかなピンクから赤黒い血のような色へと変わっていく。

 

「…!まだだ、まだ足りない…!」

 

 

《ドシュウウウウウウウウウウン》

 

 

しかし、チャージは敵の方が早かったようで、先程よりもさらに出力の高い赤のビームがこちらに直進してきた。C.E.のバーサーカー一人で戦っていたら、到底防ぎきれる威力ではないだろう。だが、彼は一人で戦っている訳ではない。今の彼には、共に戦う仲間がいる。

 

 

「主の御業をここに…。我が旗よ、我が同胞を守りたまえ!

我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)』!」

 

 

先程使用した結界宝具でジャンヌがC.E.のバーサーカーを守る。しかし、いくら宝具とはいえ相手の砲撃も並のサーヴァントの宝具を上回る威力のため、少しずつ押され始めている。

 

「ク…、ううっ、っ…。」

 

それでもジャンヌは食い下がる。自分が今守っている彼が、この逆境を跳ね返す切り札であり、二度に渡って自分を助けてくれた恩人であり、背中を預けた戦友だから。そして…。

 

(きっと、『彼』も見ています。)

 

夢の中で見た、戦争で家族を失った少年のことが頭をよぎる。あの少年のような人をもうこれ以上、増やすことのないように。自分の力で、多くの人の幸せを守ってあげたいから。

 

「っ…ハァァァァ!」

 

絶対にここを動かない。そういう決意を込めた叫びを上げるジャンヌ。そして、その時はきた。

 

 

「ジャンヌ!」

 

 

C.E.のバーサーカーがジャンヌの名を呼ぶ。突然のことで少し慌ててしまったが、旗を離すことはしなかった。とはいえ攻撃を防ぐことで手一杯なため、後ろは振り返らずに耳でしっかりと彼の言葉を聞こうとする。

 

「…!いいえ、こちらこそ。では…!」

 

彼が言った言葉はたった一言だが、それだけでも価値があるものだった。それを聞けたことによる満足感に酔いしれたくなる気持ちを抑えて、ジャンヌは彼に全てを託す。

 

 

「…戦争の果てに全てを失い、哀れな戦士は一人孤独に笑う。その剣は自由を殺し、その力は正義に敗れ、その身体は破滅の道を歩むのみ。その存在は誰にも望まれず、その心は誰にも理解されない。運命に抗おうとした(つるぎ)よ、運命(さだめ)のままに敵を撃て。

運命に縛られた機械大剣(アロンダイト)』!」

 

 

大剣を赤黒い魔力で包んだバーサーカーが、両の手で握った大剣こと自身を弾丸として敵に特攻する。ザムザザーの砲撃はまだ続いていたが、それを無視して彼はジャンヌの横から敵に大剣を突き出して飛んでいく。高出力のビームの海に逆らうように、彼は真っ直ぐにザムザザーに向かっていく。そして…。

 

 

「うおおおおおおおおおおっ!」

 

 

C.E.のバーサーカーの対城宝具は、見事にザムザザーを貫いた。

 

 

 

 

 

「…何とか、生き延びたようですね。」

 

「…そう、だな。」

 

「とりあえず、この空間について私達はまだ何も知りません。情報を集めるべく、一呼吸置いて移動しましょう。」

 

「…ああ、そう…、する、か…。」

 

それだけ言って、C.E.のバーサーカーは地面に崩れ落ちた。

 

「!、バーサーカー!?」

 

ジャンヌが即座に駆け寄り、抱き寄せて彼の胸に耳を当てるが、心臓は正常に動いている。ただ疲れて眠ってしまったのだろう。

 

「ふぅ、ともかくこれで一安心ですね…。」

 

ふと、彼の寝顔が目に入った。こうして見ると、自分より幾分か幼く、そして何より猫のような愛らしさがある。つい、彼の頭に手を伸ばそうとして、慌ててその手を引っ込めた。

 

「いけない!私は何をしようとしているのでしょうか。こんなことをしてもし彼に気づかれたら怒られるだけじゃ済まないわ。」

 

そう自分に言い聞かせて、ジャンヌもまた、その場に座り込んで身体を休めることにした。

 

砲撃によって、周囲は地面が抉れ、チリ一つ見当たらない。森も、岩も、全て跡形もなく消滅している。しかし、ジャンヌは、C.E.のバーサーカーはまだ生きている。生きている限り、明日はやって来るだろう。




C.E.(コズミック・イラ)のバーサーカー

真名 ???

出典 ???

属性 秩序・悪・人

ステータス
筋力(A) 耐久(A-) 敏捷(A+) 魔力(D) 幸運(E) 宝具(EX)

スキル
???(EX) ???(D) ???(A+)
狂化(EX) 騎乗(EX) 不屈の意志(C)

宝具
運命に縛られた機械大剣(アロンダイト)
全身から放出されるエネルギーを大剣に纏って敵に特攻する。Aランク対城宝具

『???』
全身を灰色の機械的な鎧に包む。様々な武器を内包。EXランク 対人(自身)宝具

『???』
詳細不明。『狂化』により封印されているが…?

ジャンヌの真名看破を持ってしてもステータスが分からなかった謎多きサーヴァント。性格は静かだが、少し暗い。が、同時にすぐ熱くなる。自分の生前について触れられることを極端に嫌っている。どこか自分を偽っているような態度を取るが、生前に原因があると思われる。バーサーカーだが意識疎通が容易。この空間のことについては何も知らないと言っているが…?

ある程度ステータスを考えてみました。一応種運命を見返したりwikiとかで情報を集めながら作っています。ぶっ壊れにならない様にしたつもりですが…。Fateはアニメ4作品(2006、UBW、ZERO、アポクリ)とFGOもやってましたが、サーヴァントのステータスの基準はさっぱり分かりません…。細かい解説をするとキャラが分かってしまうのでそれはまた次回に。(もう皆分かってる)


次回予告

争いがなくならないから、力が必要になるのです。

また戦争がしたいのか、アンタ達は!

いくら綺麗に花が咲いても、人はまた吹き飛ばす…!

戦争がない世界以上に幸せな世界なんて…あるはずがない!

それが、俺の運命だったんだ。

次回、Fate/SEED Destiny ②C.E.の真実

ルナ…俺が…俺のせいで、そんな…。
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