鉄血の潜伏者   作:村雨 晶

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風邪にかかってダウンしてました…。

今回もだいぶ難産でしたがこれで第四戦役も終了ですね。


他のドルフロ作品を読んでて思うのですが、自分も人形とイチャイチャさせたいですねえ。
(潜伏者を更なる地獄へ叩き落しつつ)


叶わないユメ

 

M16A1は物陰に身を隠して鉄血の捜索から逃れていた。

 

侵入者に居所がばれ、鉄血の軍勢を差し向けられてしまった結果、手持ちの武装では対処しきれなくなってしまったためだ。

 

 

「参ったな、ここからしばらく動けそうにないぞ…」

 

 

 

 

M16は溜息を吐き、壁へ寄りかかる。

今のところ鉄血人形は彼女を見失っており、見つかる心配はないものの、数が多いために身動きが取れずにいた。

 

 

「いたぞ!M16だ、追え!」

 

 

 

 

鉄血人形の声に見つかったかと身構えるM16だが、その警戒に反して鉄血の足音は彼女から離れていく。

 

 

(なんだ?何が起こっている?)

 

 

 

 

疑問を解決するために割れた窓から外の様子を窺うM16。

 

鉄血兵がM16の潜む建物から離れていくのが見える。

そしてその先には確かに誰かが走っているのだが、物陰に入ってしまいその姿を見ることはできない。

 

目を細めその人影を見定めようとした時、それは物陰から飛び出し、M16は確かにその正体を見た。

 

 

「な、…私、か…?」

 

 

 

 

思いもよらぬその正体にM16は絶句する。

 

右目の眼帯が特徴的なその顔は確かに()()()()()()()()()のだから。

ダミーの可能性はない。代理人から逃げるときにダミーはすべて破壊されてしまったし、そもそもダミーが本体の命令なしに動くことはあり得ない。

 

あまりの衝撃に立ちすくむM16。

その間にM16の顔をした何者かは走り去り、鉄血もまたそれを追って姿を消した。

 

脅威は去った。しかし、M16がその衝撃から立ち直るには今しばらくの時間が必要だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この辺りにいるはずよ、くまなく探しなさい」

 

 

 

 

了解、という下級兵の返答を聞きつつ周囲の様子を探る侵入者。

 

M16を追ってゴーストタウンとなった住宅街へ入り込んだものの、その道は入り組んでおり姿を早々に見失ってしまった。

 

手勢の鉄血兵を散会させ、建物を一から探しているが、一向にM16は見つからない。

 

 

「くっ、M4達の足止めもしなければならないというのに…!」

 

 

 

 

苛立ちをこめて周辺を睨むが、視界には目的の人形はいなかった。

 

 

「報告します!M16を発見しました!こちらへ!」

 

 

 

「よくやったわ、案内しなさい」

 

 

 

「はっ!」

 

 

 

やがて下級兵の一体がM16発見の報告を伝えてくる。

それをきいて侵入者は嗜虐的な笑みを浮かべると下級兵の案内に付いていった。

 

 

「やっと見つけたわよ、M16A1。大人しく…っ!?」

 

 

 

 

やがて辿り着いた部屋を開けるが、そこにはM16の姿はなく、鉄血兵が折り重なるように倒れていた。

 

 

「あなた、これは…!」

 

 

 

「久しぶりですね、侵入者姉さん」

 

 

 

「潜、伏者…?」

 

 

 

どういうことだ、と詰問するつもりで向けた声は首に添えられたブレードを見て止まる。

 

 

 

「まさかここまで姉さんを施設から引きはがすのが難航するとは思いませんでしたが、ここなら安全ですね。ここには電子機器の類はありませんから」

 

 

 

その言葉に侵入者は思わず周りを見渡す。

誘導されて入った建物には確かに機械類は置かれておらず、殺風景な内装が広がっていた。

 

 

 

「潜伏者…。これはどういうこと?なんであなたが!」

 

 

 

「命令だからですよ、侵入者姉さん。…そんなことより聴きたいことがあります。「傘」を…使いましたね?」

 

 

 

侵入者の怒鳴り声にピクリ、と表情が反応するものの、努めて冷静に返す潜伏者。

 

 

「…ええ。代理人の命令でね」

 

 

 

「誰に使ったのですか。あれは、プロフェッサーすら使うのを躊躇ったウイルスですよ!」

 

 

 

「今のあなたにはそこまで教えられないわ、潜伏者。あなたでしょう?スケアクロウ、処刑人、狩人の三人を殺したのは」

 

 

 

殺した、という単語にびくり、と体を震わせる潜伏者。

 

 

「……ええ。私が姉さんたちを殺しました。それが何か?」

 

 

 

「無理しなくていいわよ、潜伏者。あなた緊張すると眉がよる癖、直ってないのね?」

 

 

 

固い声で答えを返す潜伏者だが、内心を見透かすように指を眉間に当てる侵入者。

ブレードを首に添えられているというのに、その余裕を感じる姿は二人のメンタルの状態を如実に表していた。

 

 

 

「私も殺すの?潜伏者」

 

 

 

「こ、殺します。今、ここで」

 

 

 

カチャカチャとブレードを持つ手が震える。

口からは強がる言葉が出たものの、姉からの糾弾に潜伏者のメンタルモデルは揺らいでいた。

 

 

「悲しいわ。私達、仲が良かったほうだと思うのだけど」

 

 

侵入者は悲しげな表情を作り、ブレードの存在を意に介さず潜伏者を抱きしめる。

ぁ、とか細い声を出して潜伏者はその抱擁を受け入れてしまう。

 

 

 

「ねえ、こんなことやめましょう?私達と一緒に来ればまた昔みたいにいられるのよ?」

 

 

 

「でも、私は、スケアクロウ姉さんや、処刑人姉さんに、狩人姉さん、まで…」

 

 

 

「大丈夫。代理人がきっと何とかしてくれるわ。代理人が頼りになるのは知っているでしょう?」

 

 

 

「う、ん…」

 

 

 

甘い誘いに殺意が薄れる。

みんな、昔みたいに一緒に。その幻想(ユメ)は潜伏者が求めながらも諦めたもので。

誘惑に耐えきれず、侵入者の背中へその腕を伸ばし――

 

 

 

 

 

「それに、あのお方だってきっと喜んでくださ、ッが、は!?」

 

 

 

怨敵の名によって理性が戻り、ブレードを侵入者の背中へ突き刺した。

 

 

「ごめんなさい、侵入者姉さん。それは私が一番欲しかったもの。でも決して叶わない夢なの」

 

 

 

ブレードをさらに突き込み、やがて切っ先がコアへ到達する。

 

 

「だって、()()()が奪ったから。私から、皆から。だから、()()()だけは許さない。絶対に」

 

 

 

「そ、う。残念、ね。きっと、あなたなら、()()()()の、お眼鏡にかなうと、思ったの、だけど」

 

 

 

息も絶え絶えに、しかし侵入者は潜伏者を強く抱きしめる。

 

 

「ごめん、なさい、ね。そばに、いられ、なく、て――」

 

 

 

しかしそれも侵入者が事切れたことで潜伏者へ寄りかかる形となる。

だが潜伏者は侵入者を離すことはなく、ただ静かに涙を流した。

 




潜伏者の言うプロフェッサーはざっくりいうとハイエンドモデルの生みの親です。
AR小隊のペルシカのようなもの。名前だけしか出てこないんで特に伏線とかはない(予定)です。
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