鉄血の潜伏者   作:村雨 晶

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今回は潜伏者視点、というかこれから基本誰かの視点でやります。
第三者視点は描写するものが多すぎて面倒くさいし(作者にあるまじき発言)


第13話

 

――潜伏者視点

 

 

侵入者姉さんの拠点でコンピューターを操作する。

画面には「傘」の詳細が表示されている。

私が「傘」の情報を見たのは蝶事件が起こる数週間前であり、今現在の性能を知る必要があったためだ。

 

 

「性能は昔とさほど変わっていない・・・。でも、侵入者姉さんに夢想家お姉さまが改良を施してる。昔以上に厄介な代物になってるわね」

 

 

他の人形の電脳に侵入し、プロトコルを書き換える・・・、要は無理やり鉄血の人形に仕立て上げるウイルス。

私達を作ったプロフェッサーすら非人道的であると判断して封印したもの。

それをまさか掘り出して使ってるとはね。・・・いや、夢想家お姉さまや錬金術師お姉さまは蝶事件が起こる前から敵に対しては容赦しなかったからむしろ納得できる。

 

これがかつてAR小隊が見つけたとするなら既に誰かに使われていると考えていい。

現時点で最有力は・・・。

 

 

「AR15、かしらね。狩人姉さんに言っていたことも気になるし」

 

 

「鉄血の命令を内部から書き換えた」 「知らないうちに手に入れた能力」

彼女は確かにそう言っていた。だが鉄血のネットワークは強固だ。電子戦を想定して造られた人形ならともかく、普通の戦術人形にそんなことができるはずもない。

だが、()()()A()R()1()5()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「傘」は入り込んだ人形を鉄血のものへと変えてしまう。その過程でAR15が鉄血の人形であると下級の人形達が誤認してしまったのなら、辻褄は会う。

 

そう仮定すると、今AR小隊を抱えるグリフィンは内部情報が筒抜けとなっていることだろう。

何故かは分からないが、鉄血はAR小隊を、さらに言えばM4A1に執着している。

ならば、必ず動きがあるはず。

 

 

「そうすると、やっぱりグリフィンに赴かなくちゃね。あまり行きたくはなかったけれど」

 

 

グリフィンに行くとなると相応の準備が必要になる。

私は鉄血の人形であり、そしてそのハイエンドモデルだ。下手に潜入して鹵獲でもされたらどんな目に遭うかは想像できる。

 

 

「いや、待てよ?確かグリフィンはI.O.Pと共同で動いていたはず・・・。そしてAR小隊はI.O.Pの16Labが作り上げた戦術人形だったはず」

 

 

戦術人形はメンテナンスが必須だ。

鉄血の人形は頑丈さと量産性に優れるのが特徴であり、グリフィンの人形は多様性と修復の容易さを特徴とする。

そしてAR小隊のように機密の塊のような人形は特に厳重に診査されるはず。

 

 

「なら向かうべきはグリフィンの基地じゃなくて、16Labのほうか」

 

 

それならさほど難しくない。

あそこは日々戦場で壊れた人形達やダミーが運び込まれ、修復や再利用にまわされる。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「傘」の情報を手持ちの端末にダウンロードし、続いて16Labの情報を表示する。

 

 

「会うとしたら彼女か」

 

 

画面には16Lab主席研究員、「ペルシカリア」のデータが表示される。

私はそれを見てI.O.Pへ潜入する準備を進めるのだった。

 


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