今回は本作の指揮官視点。
指揮官の名前はシーラだったんですが、好きなドルフロ小説の指揮官と名前が同じだったので急遽レイラに改名しました。
グリフィンの極秘拠点。
私、レイラはAR小隊が見つけた「傘」ウイルスの対策会議のためにここに呼び出された。
「来たか」
私を待っていたのは本部からの命令を私に伝えるためによく顔を合わせるヘリアンさん。
そして私の所属するグリフィンの最高責任者、クルーガー社長だった。
「ク、クルーガー社長!」
慌てて敬礼するが、クルーガーさんは手を振ってやめるよう示す。
「いい。ここは公式な場ではない。楽にしろ。なにしろ、これから君と顔を突き合わせて会議をするのだからな。あまり固くなられても困る」
「は、はい!」
とはいえかたや所属企業の社長、かたや入ったばかりの新米指揮官だ。緊張は仕方ないと思う。
「レイラ指揮官、君は会議室で待っていてくれ。私はクルーガー社長と少し話がある」
「分かりました」
ヘリアンさんに促され会議室に入る。
中は私が受け持つ支部の指揮所とさほど変わらない。極秘拠点なのだからあまり大きな設備は入れられないのだろう。
置かれていた椅子に座り、二人を待つ。
机に置かれていた資料を流し見するとやはり傘の概要が書かれていた。
すると、私の端末に通信が入る。誰だろうと出てみると、相手はM4だった。
「指揮官、聞こえますか?実はそちらに危険が迫っているのがわかり、ご、れ…ら…を…」
「M4?どうしたの?ごめんなさい、上手く聞き取れなくて」
「し…かん…。いま…そこから…はなれ…」
「M4?M4!?…だめね、完全に切れちゃった」
通信障害だろうか?いや、しかしここはグリフィンの拠点だ。そんなことが起こるはずが…
そこまで思考した時、轟音が響き、爆発と共に私は意識を失った。
♢
「…ぺい。新兵。起きろ」
聞きなれない声に慌てて目を開き、周囲を見渡す。
そこは先程までいた会議室ではあったものの、その様相は一変していた。
壁は崩れ、爆発によって生じた炎は天井まで届いている。
その景色は今の状況をはっきりと表していた。
――敵襲だ。
「起きたか。運がよかったな。君の頭に当たったのがライフルではなくそれを納める棚だったなら即死だったぞ」
私を起こすために跪いていたクルーガー社長は立ち上がり、私へ拳銃を一丁手渡した。
グリフィンから支給されるものではない、武骨な拳銃だった。社長の私物だろうか。
「銃の使い方は分かるな?この状況を覆さねばならん。私はこの支部の指揮を執る。君は端末を使って部隊を展開、この拠点を襲撃している鉄血を撃退しろ」
「は…はい!了解しました!」
「いい返事だ。では頼んだぞ」
クルーガー社長は私の返事を聞くと去っていく。
かっこいいおじさまってああいう人のことを言うんだろうな…。
っと、見惚れてる場合じゃない。
私がシステムを開くと、問題なく起動する。幸い指揮システムは無事みたいだ。
現在動ける人形を編成し、臨時部隊を組む。
反撃の始まりだ。
♢
襲撃からしばらく経ち、状況は優勢に傾いていた。
鉄血のほとんどは破壊され、残っているのは極僅か。
ハイエンドモデルでも出てこない限りは戦況が覆ることはないだろう。
――そんな風に一瞬でも気を抜いたのがいけなかったのだろうか。
背後から足音が近づいてくる。
グリフィンの人形じゃない。彼女達は今前線に出ているはずだから。
ならば、答えは当然。
「鉄血、人形…」
扉が外れた入り口から入ってくるのはリッパーと呼ばれている下級鉄血兵。
その体はボロボロだったが、その機械的な冷たい視線は私を確かに捉えていて。
「っ…!!」
咄嗟にクルーガー社長から預かった拳銃を取り出し発砲する。
何発かはリッパーの体に命中するもののその機能を止めることはできない。
敵の銃口が私を捉える。
後は引き金を引けば、私、は――
死の恐怖に目を瞑る。
しかし、予期した痛みはいつまでたっても来なかった。
「無事ですか?」
聞いたことのない女の子の声。
それにつられて目を開けると、リッパーは頭部を失って倒れていて、そばには見慣れない人形が立っていた。
グリフィンの人形ではまず見られない武骨なブレード。
機械的な印象を与えるアーマー。
見たことはないけど、間違いなく鉄血の人形…、しかも恐らくハイエンドモデルだ。
「あ、その…」
「怪我はないようですね。では私はこれで」
私に怪我がないことを見て判断したんだろう、彼女は踵を返して立ち去ろうとする。
「ま…待って!あなた、鉄血、だよね。なんでグリフィンの私を…?」
彼女は私の叫びに足を止め、こちらを振り返る。
無表情ながらも、その顔にはさっきのリッパーのような冷たい印象は感じなかった。
「敵の敵は味方…というわけではありませんが。単純に私にとっても今の鉄血は敵だというだけです」
「え、それは…」
「話すつもりはありません。…ここは戦場です。気を抜かないように」
視線を私から外した彼女は今度こそ指揮所から出ていく。
彼女がいなくなって私は指揮を放り出していたことに気が付いた。
無線からは部隊長から鉄血兵が撤退した報告が聞こえる。
私はいったん彼女のことを忘れ、事後処理をすべく部隊へ指示を出し始めた。