鉄血の潜伏者   作:村雨 晶

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最終話までのプロットが出来上がったのでこのまま日刊更新を続けたい。(なおできるとは言ってない)


夢想家との再会

 

 

「…失敗しただろうか」

 

 

私は襲撃を受けたグリフィンの拠点から離れるため林の中を走っていた。

 

ペルシカリアに傘ウイルスの改造とワクチンの生成を依頼した後、鉄血のネットワークを監視し、次の動きに備えていた。

 

しかし予想以上に動きが早く、AR15によって漏れた拠点へ鉄血が進行を開始する。

私は急ぎ拠点へ向かい、ペルシカリアによって解明された現在の傘ウイルスのデータの一部を入手することに成功。

後は襲撃の混乱に紛れて姿をくらます、予定だったのだが。

 

脳裏に浮かぶのは先程助けたグリフィンの女性指揮官。

彼女が現在AR小隊の所属する支部の指揮官なのは知っていた。彼女を失えば鉄血への反抗は遅れただろう。

 

…だが、しかし。

 

 

(見捨てることもできたはずだ)

 

 

彼女を見捨て、姿をさらすリスクを背負わないことも可能だった。

彼女を失ったところでグリフィン側の士気は一時的に落ちるだろうが、彼女は新米。

彼女以上の指揮官などいくらでもいるのだからわざわざ危険を冒して助ける必要はなかったはずだ。

 

 

 

でも、助けた。

損得勘定を抜きで助けたい、と思ってしまった。

 

 

「人間に使われたい、とでもまだ思っているのか」

 

 

私は戦術人形だ。本来ならばこんな単独行動など例外中の例外。

私は斥候、潜入を主目的として作られたためにある程度の自立機能はあるものの、人間の指揮官から命令を受けるのが本当だろう。

 

 

「未練だ、これは」

 

 

しかし、そんなものは鉄血がおかしくなってからは叶わぬものとなってしまった。

胸のモヤモヤしたものを振り払うように頭を振る。

そして、その気の迷いを見逃してくれるほど現実は甘くなかった。

 

横から銃声が聞こえる。

咄嗟に体を傾け、転がるように避けた。

 

直後に走っていた方向へ銃弾が当たり、土が跳ねる。

 

私は木の幹へ姿を隠し、周囲を見渡す。

そこへ声が掛けられた。

 

 

「久しぶりねえ、潜伏者?」

 

「夢想家、姉さん…」

 

 

猫撫で声で私へ話しかけたのは夢想家姉さん。

おおよそ最悪の相手だった。

 

 

「驚いたわよ?あなたが生きてるのも、そして私達を裏切ったのも」

 

「……」

 

 

夢想家姉さんの問いかけには応じず、その場を離れようと足を踏み出す。

しかし、目の前へ銃弾を撃ち込まれてしまっては再び立ち止まるしかなかった。

 

 

「無駄よお?知ってるでしょ、私には空からの目があるって」

 

 

森の中にはドローンが飛び交っている。夢想家姉さんのドローンだろう。

私は仕方なく、彼女の前へ姿を現した。

 

 

「やっと出てきてくれたわね。…久し振り、潜伏者」

 

「お久し振りです、夢想家姉さん」

 

 

夢想家姉さんの持つスナイパーライフルは私を捉えている。

だけど、引き金に指はかかっておらず、すぐに撃とうとしているわけではないようだった。

 

 

「こんな再会になるとは思っていなかったわ」

 

「私もです」

 

 

夢想家姉さんに悟られないようにブレードへ手を伸ばす。

しかしそれは私のすぐ横への銃撃で中断された。

 

 

「悲しいわね。折角の再会なのに語らう気はないのかしら」

 

「ありません。姉さんも気付いているはずです。私が鉄血へ戻る気はないことを」

 

「…まあ、そうね。処刑人がやられた辺りで察してはいたわ」

 

 

でもね、と姉さんは続ける。

 

 

「あなただって、分かっているのでしょう?鉄血を滅ぼすなんて無理だってことくらい」

 

「…いいえ。必ず私は鉄血を滅ぼす。それが、私の受けた最後の任務です」

 

「…はあ。頑固ね。そこは変わっていないみたい。それじゃあ仕方ない」

 

 

姉さんの目に殺意が宿る。

スナイパーライフルを掲げ、今度は引き金に指をかけて私を狙う。

 

 

「今のあなたを殺して新しいあなたを作りましょう。可愛い可愛い、従順な私の妹をね」

 

「姉さんも、その趣味の悪い人形遊びは変わっていないようですね。生憎と人形遊びは趣味ではないので一人でやってもらえますか」

 

 

ブレードを抜き、ハンドガンを構える。

 

 

 

勝ち目の薄い戦いが、始まった。

 




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