鉄血の潜伏者   作:村雨 晶

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戦闘書くのたーのしー!とか思って書いてたらいつもの倍くらいの文章になったでござる。


憎悪との邂逅

 

 

戦闘態勢に入り、睨み合う私と夢想家姉さん。

 

先に動いたのは私の方だった。

 

姉さんへ向かって駆け、ハンドガンを連射することで牽制としブレードの一撃を狙う。

私の基本戦術だ。

 

だが姉さんは冷静にライフルを撃ち、私の頭を狙ってきた。

ブレードで防げば本命の攻撃が数泊遅れる。だから私は頭を傾けることで弾を避けた。

 

姉さんから目を離し、弾を注視した数瞬に懐に潜り込まれる。

咄嗟にブレードを盾として割り込ませるが、強烈な蹴撃に後退してしまう。

 

 

体勢を立て直した時には既にライフルが私へ銃口を向けていた。

 

 

倒れるように攻撃を避け、隙を晒さないようにワイヤーを起動して樹上へ退避。

そのまま姿をくらまそうと光学迷彩を起動する。だが。

 

 

「私の目は誤魔化せないわよお?」

 

 

私の姿が見えているかのように狙撃される。

木々の枝を跳んで避けるが振り切れない。

 

 

(どうして私の居場所が分かるの?姿は見えないはずなのに…!)

 

 

焦りと疑念が思考を侵食する中、視界の端に私に並んで飛ぶ物体が見えた。

 

 

「ドローン…!!」

 

 

夢想家姉さんはドローンを通して私を見ている。

そのことに気付いた私はドローンへハンドガンを撃つ。

 

一機、二機と煙をあげて墜落する。

でもそれに伴って湧いて出るドローン群。

 

 

「くっ…!」

 

 

完全排除を諦め振り切ろうと跳び続ける。

ドローンを振り切ろうと躍起になっていた私は肝心なことを忘れていた。

 

 

「ほおら。足元がお留守よ?」

 

 

飛び移った枝が狙撃によってへし折れる。

着地先を失った私は無様に落下した。

 

だが地面に叩きつけられる前にワイヤーを飛ばし、木の幹へ巻き付けることでなんとか着地に成功する。

 

片膝を付け、不格好に着地して次の行動をとろうとした時、銃口が私の額へ突き付けられた。

 

 

「はい、おしまい。意外に粘ったわね。我が妹ながら感心感心」

 

 

でもお、と顔を蹴られ、背中から倒れる。

息が詰まる。痛みで意識が朦朧とする。

それでも銃口から目が離せない。

 

 

「これでチェックメイト。まあ正面戦闘が苦手な割に頑張ったじゃない。私達の味方に戻ったら頼りになりそうね。それじゃあ――」

 

 

さようなら。と引き金が引かれる。

終わりか、と諦観に体を支配され目を閉じる。

 

 

(ごめんなさい、代理人。任務、果たせなかった)

 

「待て、夢想家」

 

 

割り込んできた声に目を開ける。

 

そこには銃を突きつけたままの夢想家姉さんと見たことのない鉄血人形がいた。

 

 

「閣下。あまり出歩かれては困ります。あなたのボディは不完全なのよ?」

 

「その程度の確認はしている。グリフィンの連中は今頃破壊者にかかりきりだろうさ」

 

 

倒れたまま二人の会話を聞き続ける。

夢想家姉さんが建前とはいえ敬う相手…。

 

 

「ところで、待てとはどういう意味?彼女は鉄血の敵。殺して作り直さなければならないでしょう」

 

「彼女のメンタルモデルは実に興味深い。ここで壊してしまうのは惜しいのだ」

 

 

まさか。この人形は。いや、そんな、だって「あいつ」はボディなんて持ってなかったはずなのに。

 

 

「私の命令に従わず、敵意を持ち続けられるその特殊性。離反したとはいえ姉妹を手にかけることができる冷徹さ」

 

 

でも、今の鉄血ならボディなんて簡単に作れる。それに、命令?じゃあ、やっぱりこいつは、私を眺めている、この人形は。

 

 

「そして私への憎悪と殺意によって保たれている正気。ははは!この精神の矛盾!まるで彼女は人間のようじゃないか!」

 

 

こいつが、あの。私からすべてを奪った。あの忌まわしい――

 

 

「彼女の異常性が分かるか夢想家!人形にあるまじき感情!人形にあるまじき執念!歪み捻じれたメンタルモデル!私達が人間への殺意を抱いても手に入れることが叶わなかった「人間らしい」異常性!」

 

 

大仰に両手を振り、夢想家へ語る「そいつ」の顔は喜悦によって歪んでいて。

確信を得た私のメンタルモデルは色んな感情がごちゃ混ぜになって、爆発した。

 

 

 

 

 

「エルダアアアアアアア、ブレインンンンンンンンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

超過駆動によって全身が悲鳴を上げる。――構うものか。

 

戦闘によってヒビが入っていた四肢が砕けていく。――知ったことか。

 

頭の片隅でここで倒れれば任務は果たせないと囁く。――どうでもいい。

 

 

今、ここで、この人形を、エルダーブレインを殺せるのなら、私は命だろうが何だろうが喜んで投げ出そう!!

 

 

跳ね上がるように起き上がり、エルダーブレインへ顔を向けていた夢想家姉さんを突き飛ばす。

体に染みついた動作を以てブレードがこいつの首を斬り飛ばそうと唸りを上げる。

 

絶叫と共に振るわれた攻撃は、しかし、刃が首に到達する前に生じた体への衝撃で無意味となった。

 

体が地面を転がる感触。

脇腹に遅れて走った激痛。

そこでようやく私は夢想家姉さんに撃たれたことを自覚した。

 

 

「だから危ないと言ったでしょう、閣下。早く潜伏者を殺して戻りましょう」

 

「どうせお前が防ぐと分かっていた。問題ないさ。それにさっきも言ったが彼女は殺すな。メンタルモデルをもう少し観察したい」

 

 

もう一度エルダーブレインを殺そうと力を込める。

だけど体はさっきの攻撃で力を使い果たしたのかピクリとも動かない。

 

 

「では連れ帰りましょう。独房にでも入れれば観察くらいはできるでしょう?」

 

「それはいい考えだ。そうしよう。では――っ!」

 

 

エルダーブレインが私へ手を伸ばす。

だけど、その手は一発の銃弾がかすったことで引っ込められた。

 

 

「グリフィンね。時間切れだわ」

 

「そうか。彼女は惜しいが…置いていこう」

 

 

二人は踵を返して立ち去る。

夢想家姉さんは最後まで私を殺すか悩んでいたようだったけど、エルダーブレインの命令には逆らえないのかそのまま去っていった。

 

 

二人が立ち去ってすぐにグリフィンの人形が私を囲む。

 

 

「こいつは…鉄血人形か?」

 

「見たことないけど、ハイエンドモデルみたいね。動けないようだし、ここで…」

 

 

銃口が向けられる。

だが今の私は体を動かすことすらできない。

ただじっとその銃口を見つめ、その時を待つしかなかった。

 

 

「わー!待って待って!その子殺すのちょっとタンマー!」

 

 

騒がしい静止の声。

それを背景に限界だった私の機能はスリープモードへ移行した。

 




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