鉄血の潜伏者   作:村雨 晶

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エルダーブレインも出せたので話はここらで一区切り。

今話から過去編に入ります。

時系列は潜伏者が作られてから蝶事件までを予定しています。


潜伏者の目覚め

これは、蝶事件が起こる前。

鉄血の人形たちが、まだ人間の隣人だった頃の話。

 

 

手術台のようなものに寝かされていた人形、私…潜伏者は目を覚ました。

 

 

「目覚めたかい?潜伏者。どうだい、体の調子は。不調な部分などあるかね?」

 

 

白衣を着た頭が寂しいことになっている老年の男が私へ問いかけてくる。

記録されている情報を検索…ヒット。

彼はプロフェッサー。私を作り上げた鉄血の技術者だ。

 

 

「問題ありません、プロフェッサー。システム良好。搭載されている武装も使用可能です。不備はありません」

 

 

「それはよかった。本来ならば、このまま動作訓練に入るんだが、まだ訓練場の準備ができていない。よければ君の姉妹に会いに行くといい」

 

 

「姉妹、ですか?」

 

 

「君より先に作られたハイエンドモデル達さ。今なら中庭にいるだろう。案内は必要かね?」

 

 

「不要です。鉄血保有の施設のマップデータならば記録されていますので」

 

 

「そうか。そうだったな。では行くといい。準備ができ次第放送で招集する」

 

 

「了解しました、失礼します、プロフェッサー」

 

 

私はプロフェッサーへ一礼すると、部屋を出て脳内に記録されている地図を頼りに中庭を目指して歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中庭に到着した私はあたりを見回す。

 

東の国、「二ホン」という国の庭を模して作られたらしいその庭は石と岩と砂が多い。

 

何やら曲線を描いている砂を眺めていると、背後から声がかけられた。

 

 

「あなたが潜伏者ですね?話は聞いています」

 

 

振り向くと、メイドの恰好をした人形が佇んでいた。

 

 

「あなたは代理人ですね?ハイエンドモデルを統括するハイエンドモデル。現場指揮を想定して造られたと聞いています」

 

 

返事を聞いた代理人は何がおかしかったのか、クスリと笑う。

 

 

「私達に固い態度は不要ですよ、潜伏者。私達は姉妹なのですから。さあ、こちらへ」

 

 

優しく手を引く代理人に先導され、中庭の中央に向かうと、そこには黒い長髪の人形と、私と同じ白い髪を後ろで括った人形、そして白い長髪の人形が座っていた。

 

 

「お、そいつが例の新型ハイエンドか?ふーん……」

 

 

「ほう、そいつが処刑人の素体を改修したハイエンドモデルか。確かに面影は似ているな」

 

 

「その子が潜伏者ね?さあ、こっちにおいで潜伏者」

 

 

黒髪の人形は値踏みをするようにじろじろと眺め、白い短髪の人形は処刑人と私の顔を見比べて納得したような声を出す。

白い長髪の人形は私を笑顔で手招きする。

 

 

「私は「錬金術師」。こっちは「処刑人」でそっちが「狩人」だ。みんな鉄血のハイエンドモデルさ。他にもいるが、今は任務で留守にしている」

 

「そうですか。私は「潜伏者」。最新のハイエンドモデルです。諜報、暗殺を目的として作られました。よろしくお願いします。姉様方」

 

 

姉という言葉が出た瞬間、錬金術師姉さんがピタッ、と動きを止めた。

 

 

「…なあ潜伏者。もう一度言ってもらえるか?」

 

「よろしくお願いします、姉様が、たっ!?」

 

「可愛いなお前は。こんな妹が欲しかったんだ!」

 

 

がばっ、と私を抱きしめる錬金術師姉さん。

長身の錬金術師姉さんに対して背の低い私はその豊満な胸に埋まってしまっていた。

 

 

「錬金術師、潜伏者が埋まっていますよ。それにしても潜伏者、なぜそんなことを?」

 

 

代理人姉さんに諫められた錬金術師姉さんから解放された私は首をかしげて答える。

 

 

「プロフェッサーが、ハイエンドモデルは君の姉妹のようなものだと言っていました。私は最後に作られた人形ですので末の妹のようなものになるかと思いまして」

 

「そういう意味なら、俺が一番お前に近い姉ってことかもな」

 

 

今度は処刑人姉さんが私を抱き上げ膝へと乗せる。

確かにその顔はこの中にいるハイエンドモデルの中でも私に最も似ていた。

 

 

「さっき狩人も言ってたが、お前の体は俺の素体を改修して造られたものだ。なんでもそれが一番コンセプトに合うとか聞いたぜ」

 

「ブレードを扱うことを想定している人形が処刑人くらいだからだと聞いている。私もブレードを使うこともあるが、後付けの装備だからな。使う機会は少ないんだ」

 

 

処刑人姉さんが思い出すように言うと、狩人姉さんがそれを補足する。

 

狩人姉さんは手を伸ばし、私の頭を撫でた。

 

 

「お前は私達のように前線で戦うことを想定して造られていない。だから戦場で共に戦うことはないだろうが、お前の能力、頼りにするとしよう」

 

 

「まあ俺の素体を使ってるんだ、優秀なのは間違いねえな!」

 

 

狩人姉さんが撫で終わると、今度は処刑人姉さんが乱暴に私の頭を撫でる。おかげで髪がぐしゃぐしゃになってしまった。

 

 

「さあ、お茶にしましょう。今回は支給品の菓子もありますよ」

 

「酒はないのか、代理人。俺は紅茶よりもそっちがいい」

 

「ならば指揮官に直談判することです、処刑人。いらないならば下げますが?」

 

「待て待て!飲む!飲むよ!」

 

 

代理人姉さんと処刑人姉さんのやり取りを見て狩人姉さんと錬金術師姉さんが愉快そうに笑う。

 

その光景を見て私も薄く微笑んだのだった。

 




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