鉄血の潜伏者   作:村雨 晶

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過去編三話目。

そろそろ蝶事件が近づいてくる頃合い。
今のうちに幸せを噛みしめてね潜伏者ちゃん(ニッコリ)


鉄血での日常 3

 

 

「今日の講義は!私よ!」

 

「…」

 

「何よその目は!」

 

 

今日は破壊者姉さんによる建築物の解体の講義である。

とはいえ、破壊者姉さんはグレネードによる爆破解体がほとんどで何も考えずやってるように見えるんだけど。

 

 

「あ、私が何も考えず爆発物を発射してると思ってるんでしょう!これでも私は最小限の爆薬でもビル解体ができるくらいには得意なんだからね!」

 

「はあ…」

 

「信じてないでしょあんた!いいわ、そこまで言うならあんたに私の持つ解体技術のすべてを教えてあげるわ!」

 

 

ぷんすかと頬を膨らませながら電子黒板にデータを表示させていく破壊者姉さん。

 

 

「いい?まず解体で大切なのはその建物の構造を把握しないといけないわ。どの柱を壊せばどの個所に影響が出るのかとか影響が出るまでどれくらいの時間がかかるのかとか…。演習問題を用意したからそれを解いてみなさい」

 

「分かりました」

 

 

資料に記載されている問題を解いていく。その内容は意外としっかりしていて、専門外な私にとって難しいものばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

「…終わりました。確認をお願いします」

 

「はいはい。…うん、少し間違ってるところはあるけどこれなら大丈夫ね」

 

「破壊者姉さんはいつもこんなことを考えながら戦っているのですね、流石です」

 

「うえっ!?そ、そうよ。私はすごいんだから!じゃ、じゃあ今度は実践よ!この前排除した人間人権団体が拠点にしてた建物があるからそこに行きましょう!」

 

「はい」

 

 

私は破壊者姉さんの先導で鉄血の施設を出る。

外出届などを出した覚えがないけど破壊者姉さんが手続きをやってくれたのだろうか?

 

車に乗り、しばらく走らせるとコンクリートで造られた建造物が見えてくる。

何かの工場跡のようで、機材のようなものが錆びついたまま放置されていた。

 

 

「じゃあここを解体しましょう。はい、これはここを解体するために最低限必要な爆薬ね。そう簡単には爆発しないけど取り扱いには気を付けて」

 

 

破壊者姉さんからプラスチック爆弾を手渡され、建物の柱へ設置するよう指示される。

 

私はさっきの講義を思い出しつつ建物を支えている重要な柱へ爆弾を設置した。

 

 

「準備できました」

 

「うん!じゃあ爆発させるから安全な場所まで離れましょ」

 

 

二人である程度離れ、爆弾を起動させる。

建物の中から爆音が響き、中央から崩れ落ちていった。

 

 

「成功よ!流石潜伏者、一発で成功するなんて思わなかったわ!」

 

「破壊者姉さんの教え方がよかったんですよ」

 

 

私に飛びついて撫でまわす破壊者姉さん。

まるで自分のことのように喜ぶ姉さんの様子に私も顔が綻んだ。

 

が、その瞬間、私達は大量の車両に取り囲まれる。

思わず身構えると車から代理人姉さんや錬金術師姉さんが下級人形と共に降りてきた。

 

 

「ここにいたか、探したぞ二人とも」

 

「破壊者…あなた、自分と潜伏者の外出届を忘れましたね?」

 

「え?…あっ」

 

「しかもこの建物の破壊許可も取っていなかっただろう。おかげで上が騒いでいるぞ」

 

「あー、それは…」

 

「破壊者姉さん…」

 

 

二人の追及に目を泳がす破壊者姉さんに思わず呆れた視線を向けてしまう。

どうやら諸々の手続きをせずに今回の講義は行われたらしい。

 

何かしらの言い訳をしようと口をもごもご動かしていた破壊者姉さんだったが、代理人姉さんに襟首をつかまれ代理人姉さん達が乗ってきた車へ引きずられていく。

 

 

「あなたには山ほど説教があります…覚悟しなさい、破壊者」

 

「潜伏者ーっ!助けてー!」

 

 

半泣きになりながら連れていかれていく破壊者姉さんを私は呆れの目で見送るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

工場跡から戻ってきた後、私は錬金術師姉さんの講義を受けに講義室へ戻ってきていた。

 

 

「はあ…。破壊者には困ったものだな」

 

「破壊者姉さんに悪気はないので…」

 

「分かっているとも。だからこそ困っているんだが…。まあいい。ともかく講義を始めるぞ」

 

 

頭を抱えていた錬金術師姉さんは振り払うように首を振り、私と向き合う。

 

 

「今日の内容は変装術だ」

 

「つまり、潜入のためのスキル、ということですね」

 

「そうだ。お前には光学迷彩の他に擬態機能も付いている。人形はもちろん、人間にも変装できる優れものだ。しかし肝心のお前が化けきれないのであれば意味がない」

 

 

そこで、と姉さんは様々な服をかけたラックを持ってくる。

 

 

「お前には今日、様々な人間に変装してもらう。服を見てどのような年代、性格の人間になれるかを試してみろ」

 

 

姉さんの指示通り、服を適当に選び、それに合った人間の姿へ変える。

私が姿を変えるたびに姉さんが妙にいい笑顔で写真を撮っていたが、あれは一体何に使うのだろう。

 

 

 

 

 

 

何度か服を変え、姿を変え、時に姉さんからの修正をもとに変装データを蓄積していく。

おかげで様々な年代の姿に変えることができるようになった。

 

 

「よし、今日はここまでとしよう。…しかし、お前のその擬態機能は素晴らしいな。女性にしか姿を変えられないとはいえ年代すら変えられるのは幅が広がる」

 

「視覚データさえあれば姿形を完全に模倣することも可能ですよ。ほら、このように」

 

 

私は処刑人姉さんのデータを再現し、姿を変える。

 

 

「おお、処刑人そのままだな。…潜伏者、頭を撫でてもいいか?」

 

「え?はい。どうぞ」

 

 

少し頭を下げて差し出すと優しく撫でられる。

 

 

「ふふ、処刑人は恥ずかしがってこういうことをさせてくれないからな、新鮮だ」

 

 

しばらく私を撫でていた姉さんだったが、やがて手を離す。

 

 

「見た目を変えているだけだが、触感もあるのだな」

 

「はい。コープラップスを使った技術だとは聞いていますが…」

 

「なるほど…便利なものだ。お前のそのスキルには期待している。早く私達と戦場に出られればいいな」

 

「はい」

 

 

錬金術師姉さんの言葉にうなずく。

私が作られて一月が経過している。私の初任務の日も徐々に近づいてきていて、私は期待に胸を躍らせていた。

 




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