「やあ、久しぶりだね潜伏者君?」
「…こんにちは、ペルシカリア博士」
病室でレイラが持ってきてくれた本を読んでいるとペルシカリア博士がやってきた。
ちなみにレイラが本を置いていったのは暇つぶしのためだ。
さすがに鹵獲したハイエンドモデルを上の許可なく歩かせるわけにもいかないため、それまでは病室に軟禁することになるから、と申し訳なさそうな顔で謝っていた。
本を閉じて視線を彼女へ向けると、感情の読めない笑顔で備え付けの椅子に座る。
「あの時は名乗ってくれなかったけれど、再開が予想よりも早くて嬉しいね」
「もう二度と会うつもりはありませんでしたから。それで?今回は何の用でしょうか。まさかただの挨拶というわけでもないでしょう」
「ええ。今日はあなたに届け物があるの。まずはこれ」
ペルシカリアが取り出したのはデータチップ。そこに入っているものについては予想が付く。
「依頼していた改造傘ウイルス…」
「そう。予想以上に早くできたから届けに来たわ。そして、今日の本命はこっち」
次に取り出されたのは武骨な輪っか。それを私へと差し出す。
「これは?」
「あなたを監視するためのユニットよ。首につけるタイプなの。機能としては――って、ちょっと」
「こう、でしょうか。どうですか?付け方は合っていますか?」
「合っているけど…。付ける前に説明させて頂戴」
「どうせ逃亡や反逆をしたときに爆発でもするのでしょう?目に見える信頼は大事ですからね」
「はあ…。言いたいことが分かっているようで何よりだわ。ここの指揮官はともかく、グリフィンの上層部はあなたを信用していないようだし」
それは当然だろう。むしろレイラのほうの判断が甘いくらいだ。それはそれとして、文字通りの首輪とは…グリフィンの上層部もなかなかにいい趣味をしている。
「……」
「何です?このユニットに不備でも?」
「いえ、人形とはいえ年端もいかないような姿の子にこういう首輪は刺激が強いと思っただけよ」
人形相手に何を言っているのやら。
見目麗しい人形ならともかく、色々な意味で小さい私にそんな需要はないだろう。
「じゃあ、私はそろそろ行くわね」
「傘ウイルス、ありがとうございました。後で確認しますので」
「うん、じゃあね」
ペルシカリア博士はやるべきことはやったとばかりに病室を去っていった。
先ほどよりも肩回りが重くなった原因である首輪を撫で、改造傘ウイルスの出来を確認するためにデータチップをつまみ上げるのだった。