やっぱり原作部分は省略したほうがいい気がする。
文章が長くなるし。
でも省略しすぎると話の筋が見えなくなるし…。悩ましい。
――鉄血司令部近くの森
「…ここもダメそうですね」
はあ、と溜息を吐き、潜伏者はその場を離れる。
彼女は光学迷彩を起動し、どうにかして司令部へ潜入しようと試みているものの、それを断念せざるを得ない状況だった。
「ネズミが入る隙間もない、というほどではないですが警戒が厳重ですね。見えない敵に対する対策が徹底されています」
流石は狩人姉さんだ、とかつて特に慕っていた姉貴分に内心舌を巻く。
(こちらの正体までは分かっていないでしょうが…。処刑人姉さんが倒されたことはもう悟られているとみていいでしょうね)
いくら潜伏・潜入を得意とする潜伏者でも統率された巡回、その隙間を縫うように警報や罠を仕掛けられては動きようがない。
また溜息を一つ吐いた潜伏者はSOPMOD達が潜んでいた場所へと戻ってきた。
「やれやれ、AR小隊がAR-15を救出するための出撃をするまで潜入は無理そうですね。狩人姉さんの得意とするのは自陣で待ち続け、相手の動きを待つこと。相手の得意とする場面に突っ込むことほど無謀なことはありません」
自身の装備を外し、机の上に並べ、整備を始める。
「今は動くべき時ではありません。タイミングを、見極めなければ」
♢
――1週間後
「まだ、動きはない、か」
光学迷彩で偵察をする潜伏者は鉄血司令部を見つめる。
そこには以前偵察したとき以上に厳重になった警備体制があった。
「狩人姉さんはAR-15を餌にM4を捕らえるつもりのようね。AR部隊も狩人姉さんが敷いた陣に攻めあぐねているみたいだし…。もう少しかかりそうかしら。……ん?」
隠れ家へ戻ろうと踵を返したその時、観察していた警備体制が突然崩れる。
前触れもなく浮き足立ち、混乱したように動くその様は紛れもなく隙だった。
「罠?いや、狩人姉さんはこんな明確な隙をわざと晒すような真似はしない。これはまさしく好機だわ!」
♢
鉄血の混乱が発生した頃、鉄血司令部ではAR-15と狩人が対峙していた。
AR-15を捕らえた時の余裕はなく、焦燥の表情を見せる狩人と、涼しい顔でそれを見つめるAR-15。
その光景は対称的であった。
「分からん…なぜ、こんなことが…」
「私が鉄血の内部から命令を書き換えて、今回の混乱を引き起こしたのよ」
「馬鹿な、なぜおまえにそんな権限が!」
「知らないうちに手にれた能力だけど、結構使えるみたいね。私は本当に特別なのかも。そう思わない?狩人」
「まさか…わざと捕まったのか」
「言ってたよね。本物のハンターは黙って獲物を待つものだって。もちろんあんたは永遠に黙ることになるけどね」
「くっ、させるものか!」
銃身を狩人へ向け、発砲するAR-15。
それを素早い動きで避け、二丁拳銃で反撃する狩人。
二人は攻撃を重ねるものの、戦局は停滞し始める。
「いい加減壊れなさい!往生際が悪いわよ、狩人!」
「諦めるものか!私一人でも、貴様を道連れにしてやる!」
物陰に身を隠しつつ、二人はお互いを罵りあう。
しかし、その均衡は一発の銃弾によって唐突に終わりを迎えた。
「が、はっ…!?」
全く警戒していなかった側面からの銃弾。
意識外からの攻撃は狩人の意識を奪うのに十分だった。
「今のは…?」
銃弾が放たれた方角を見るAR-15。
そこにはWA2000と呼ばれる戦術人形がAR-15へと片手をあげていた。
「S09地区の人形…。救援に来てくれたのね」
味方だということを確認し、AR-15はWAへ片手をあげ、礼の代わりとする。
するとWAは合流を意味するハンドサインを送ってきた。
それの返事代わりに手を振ると、WAは視界から姿を消した。
AR-15が鉄血司令部から外へ出ると、そこにはM4A1、SOPMOD、そしてS09地区の第一部隊が彼女を待っていた。
「無事だったんだね!AR-15!」
「無事で良かったわ」
AR-15を見つけるなり、そばへやってくるM4A1とSOPMOD。
「ええ。救援ありがとう。…ところでM4。あなた私の起こした混乱が無かったら自分の身を本当に引き渡すつもりだったの?」
「…ええ。M16姉さんも、きっとそうしたと思うから」
「馬鹿ね。あなたはM16じゃないし、AR部隊の隊長なのよ。もっと自分を大切にして」
「ごめんなさい。今後は気を付けるわ」
「あはは、AR-15がかっこいいこと言ってるー!」
「SOPMOD、こっちに来なさい。余計なことを言えないようにしてあげるから」
「ちょ、ちょっと!まだ何も言ってないよ!」
「ええ。今から永遠に黙らせるもの」
SOPMODが悲鳴を上げてAR-15から逃げると、AR-15は呆れたようにそれを見て、そして周囲を見渡した。
「どうしたの?AR-15」
「いえ、私を援護してくれた人形を探しているのだけど。WA2000はどこ?」
「WA2000?そんな人形は指揮官の部隊にはいないわ」
「え?でも確かにさっき…」
「他の人形と見間違えたんでしょう。今はここを離れるのが先決よ」
「そう、なのかしら。でも…」
AR-15はもう一度周囲を見回す。
しかし、帰還のヘリが来るまで助けてくれたはずのWA2000の姿は見つからなかった。
♢
「AR-15に撃たせてもよかったのですが、どうしてもあなただけは、私でけじめをつけたかったのです。…狩人姉さん」
グリフィンが去り、誰もいなくなった司令部で潜伏者は狩人の骸を膝枕していた。
目を閉じ、機能を停止した狩人は反応することはない。
潜伏者はそれでも愛おしそうに頭を撫でる。
「最後に、言葉を交わしたかったです、狩人姉さん。あなたは、特に私を可愛がってくれたから」
一番慕っていた姉の死は、あっけない物だった。
狩人は、潜伏者が生きていたことさえ、分からないまま死んだ。
潜伏者は、自分がその手で殺しておきながらもその事実がとても嫌だった。
「せめて、あなたには姿を見せたかった。…でも、私の現状はそれを許してはくれない」
潜伏者が生きていることを悟られてはいけない。
あの忌まわしい事件で死んだと思われているからこそ、潜伏者は最後の命令を実行できるのだから。
たとえそれが慕う姉だったとしても、確殺でき、そして何者かの視線がない場でなければその姿は晒せない。
ゆっくりと、しかし確実に命令は果たせている。
しかし、それに伴い潜伏者のメンタルモデルもまた着実に軋んでいくのだった。