セカイノヒカリ   作:砂門

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簡単すぎるあらすじ

グリエリーガーとして正式に加わったアースは、修羅とシャオに連れられて寺院を回ることになった


第二話〜第一部隊の日常

修羅とシャオは同じ金堂で住んでいる。そこにアースが加わる形になるのだ。金堂のなかは自由に過ごしても構わない。任務を命じられるまでは寺院の外で買い物をしてもいいし、ほとんど自由。

 

 

 「ほかの金堂とは違うようですが」

 

 「あぁ、建物の色とかも自由に変えていいんだよ」

 

 

 修羅曰く、何でもありとのこと。砂輝は個人の個性と価値を尊重してくれる。修羅とシャオが相談した結果、二人の金堂が出来たのだ。

 

 

 「まぁこの寺院のことを説明しておくと、俺たちの金堂の傍にある蔵は書庫で、ボスが世界中を旅したときにその国々で譲り受けた本を収めてある。自由に読んでいいし、借りてもいい」

 

 

 百万冊以上の本が蔵にまとめて収められており、貴重な文献もそこにある。なかには国宝レベルの本も存在するうえ、修羅はそれをよく読む。テネーブルたちが喉から手が出るほど欲しがるような本さえある。

 

 

 「講堂の傍にある広めの御堂は、道場となっている。自由に組手をして構わない」

 

 

 特に修羅とシャオ、キルアとゲルが利用する場所で、この寺院に属す百人ほどの人間は、彼らが道場にいる間は巻き込まれることを恐れて利用できない。

 

 

 「で、講堂の真横にある蔵は、ボスが溺愛する動物たちが住んでいるんだよ」

 

 「あんな狭い場所に?」

 

 「いやいや、あのなか草原とか森とかジャングルとかあるよ」

 

 

 アースがポカンとしていた。修羅やシャオもあの蔵に入った瞬間に自分の目を疑った。初めて踏み込んだ者は案内人がいなければ間違いなく迷う。動物たちはほぼ野生の状態であの蔵の中で住まう。

 

 

 「謎過ぎます」

 

 「同感だな」

 

 

 一つの県ほどの広さを誇るその場所を小さな御堂のなかに展開しているのだから。アースのなかで砂輝に対して謎が深まった。

 

 

 「俺とシャオの向かいの御堂は、キルアとゲルとまさかの輝夜ちゃんの住まい」

 

 

 むさ苦しい男二人に少女しかも姫君が囲まれている図を想像し、アースは輝夜に対して同情した。

 

 

 「ちなみに、講堂の後には庭があってね、ボスがよくそこでお茶を楽しんでいるらしいよ」

 

 

 枯れない蓮池で年中咲き続ける蓮。その庭で天体観測をすることも楽しみの一つだと修羅は聞いたことがあった。十五夜になるとそこで月見をする

 

 

 「この寺院の一際デカい建物で鳳魔くんと陽魔くんが研究に没頭してるんだ。講堂側が病院で、外側が開発機関になってる」

 

 

 鳳魔による開発と陽魔による医学の発展のためにと砂輝が用意した施設だ。その施設には世界中から研究員と医者が来る。世界に誇る中枢機関である。対人恐怖症であるはずの双子の努力による賜物だ。相手をするのは鳳魔が造ったホムンクルスという人型機械だ

 

 

 「任務以外にもみんなそれぞれに役割があるんだ」

 

 「役割?」

 

 「部門があってね。部隊部門は勿論だけど、解読部門、解析部門、情報処理部門、開発部門、医療部門、浄化部門、諜報部門、監視部門と九つの部門で分けられてるんだ」

 

 

 部隊は、本部だけでも第一班から第五班まで存在する。第一部隊は修羅を隊長としてシャオと鳳魔とアースの四人。第二部隊はキルアを隊長として輝夜とゲル、耀魔の四人。第三部隊は多門を隊長として、そのほか弟子三人から成る。第四部隊は、砂輝が溺愛する三つ子の部隊で、監視部門と兼ねている。第五部隊は、残った三人の弟子たちから成る。この第五部隊はそれぞれの部門が忙しくあまり揃わない。

 解読部門は、古代の石碑の文字や、文献の文章を解読する部門で、修羅が部長をしており、メンバー全員がオグルだ。

解析部門は、諜報部隊から送られたデータの解析をする部門で、輝夜が部長をしている。

情報処理部門は、諜報部員が手に入れた情報の分別をする部門だ。ここの部長はキルアである。

開発部門は、無論鳳魔が部長で様々な発明を行う。

医療部門は、耀魔が部長を務めており、ここは治療班、薬学班やリハビリ班など三班存在し、開発部門に次いで人員が多い。

浄化部門は、シャオが部長をしており、呪術や悪霊などと言ったものを浄化除霊する部門だ。

諜報部門は、ゲルが所属する部門で部長は今砂輝の命令で諜報活動中だ。ゲルも先ほど諜報活動から帰還したばかりだった。

監視部門、ここは第四部隊三つ子があらゆる世界に監視の眼を張り巡らせており、異変を察知すると三つ子から砂輝へと伝達される。

これらの部門があることで、任務を完遂させることができるのだ。部門制の仕組みは砂輝が整えてできたものだ。

 

 

 「なるほど、私はどこへ配属されるのでしょう?」

 

 「入ったばっかだからね、追々配属されると想う。まあ今は、部隊部門第一部隊の隊員として動いてもらうこともあるだろうし、他の部門の手伝いをして向いてる部門に配属されるパターンもある。どこに入りたいかは最終的にキミの判断だ」

 

 「新しい部門を作るという手段もあるがな」

 

 

 浄化部門は存在していなかったが、シャオが自ら砂輝に掛け合い設置してもらったのだ。神界にいた際に彷徨う魂を見ていたシャオだからこその判断だった。本人は学はないが、それでも彼なりの心理と思想がある。砂輝はシャオのその心を気に入っており、入属したいと言った時には二つ返事で受け入れていた。新たな部門を作りたいと言った際も二つ返事で受け入れた。

 

 

 「修羅」

 

 「輝夜ちゃん、どうした?」

 

 「宇流さんから解析の要請が来たんだけど、解読の必要があるみたいなの」

 

 「内部の文字が読めないってことか」

 

 

 時々解析したものの解読を要請されることがあり、古代文字であることが多いのだ。古代文字の解読のスペシャリストである修羅がよくその役目に駆り出されるのだ。

 

 

 「アースくん、やってみる?」

 

 「はい、ぜひ」

 

 

 第二部隊の御堂に入り、輝夜の部屋には五つモニターが取り付けられたパソコンがあった。和室にはおよそ似つかわしくないうえに、年頃の少女の部屋とは思えなかった。修羅はモニターを眺め始めた

 

 

 「あ、あの文字・・・」

 

 「アースくん?」

 

 「太古の天界の文字と似ています」

 

 「ということは・・・神聖文字と似てるってことか。宇流さんは今どこに潜入してるの?」

 

 「トレミーよ」

 

 

 輝夜の言葉になるほどと修羅は頷いた。神聖文字は天界の共通言語であり文字だ。砂輝の弟子であり諜報部門部長の宇流が潜入している場所がトレミーであることが分かれば、神聖文字で情報が書かれてあることに納得がいく。太古の神聖文字を、修羅と輝夜、アースが写した。

 

 

 「神聖文字ならシャオも読めるでしょ」

 

 「うむ、神界では太古の神聖文字を使っているぞ」

 

 

 シャオの発言に修羅と輝夜が彼を睨んだ。早く言えとばかりに。数十分もかけて写す必要などなかったのだから。鬼神の凄味のある睨みに、シャオはすぐに解読を始めた。

 

 

 「終わったぞ」

 

 「だってさ、輝夜ちゃん」

 

 「宇流さんに届けるわ。協力ありがとう」

 

 

 アースの初めての解読任務は、シャオにより解決した。

 

 

 「さてと、やっとだ。アースくん」

 

 「はい」

 

 「ようこそ、第一御堂へ」

 

 

 アースは、第一部隊隊長修羅と握手を交わし、ニコリと微笑み頷いた。

 

 

翌朝、天使アースは襖から差す眩しい光で目を覚ました。翡翠色の瞳を薄く開けると、目の前に小さなウサギがいた。昨夜名付けたこのウサギの名はフウだ。砂輝からこのウサギをどうやって召喚したのかと尋ねれば、即答で風からと告げられたのだ。それを受け、アースはこのウサギにフウという名を与えた。本人が喜んでくれたこともあり、アースも嬉しかった。

 

 

 「朝ですよ、フウ」

 

 「おはよう」

 

 

 ルビーのような瞳の若草色のウサギが答えた。初めはフウが話が出来るということに驚いたが、一日で慣れた。

 ふと、フウが鼻をヒクヒクと動かした。何かの香りを嗅ぎつけたらしい。

 

 

 「みその匂い」

 

 「味噌?これが味噌というものの香りなのですね」

 

 

 鳥籠のまさに鳥のように暮らしていたアースは、味噌の香りを知らないのだ。アースとフウがのんびりしていると、襖が勢いよく開け放たれた。天使とウサギが同時に弾かれるように襖の方へ振り向いた。そこには狐と虎がいた。九尾狐のコンと、黒虎のタイガだ。

 

 

 「おい、コン。まだ寝てるかも知れんだろうに・・・む、起きていたか。おはよう」

 

 「おはようございます、シャオさん」

 

 

 藤色の単を纏う黒髪の少年がニコリと笑った。つい昨日に自分を仲間として迎えてくれた神界代表の神帝シャオだ。シャオの姿を見て自分の着物を見た。白から翡翠色のグラデーションとなった単姿だった。この単は、寝巻はまだないだろうと言って、砂輝がくれたものだ。

 

 

 「あの、この良い香りは?」

 

 「修羅が朝食を作ってくれておるのだ。味噌は砂輝さまの手作りだそうだ」

 

 「修羅さん、お料理が出来るのですね」

 

 

 修羅が料理ができるという事に驚きはしないが、それよりも砂輝が味噌を作っているということに驚いた。どう見てもいい暮らしをしていそうな彼なのに、どうも本人は質素な暮らしを好んでいるようだ。

 

 

 「質素なのは暮らしだけだと思うぞ。さ、そろそろ朝食が出来るぞ」

 

 

 シャオに連れられ茶の間に来ると、見たこともない食べ物のオンパレードだった。アースが知っている食材といえば、果実くらいだ。

 

 

 「アースくん、おはよう。タイガくんたちが起こしたかな?」

 

 「おはようございます。太陽で目が覚めました」

 

 

 台所から出てきたのは、アースが属すことになった部隊の隊長修羅だ。髪と同じような色の単のはずだが、料理がしやすいように紐で裾が落ちないように結ばれていた。その手にはお櫃がある。そこに炊きたてのご飯が入っていた。

 

 

 「美味しそう・・・」

 

 「黄色いのは沢庵っていうお漬物で、その隣の赤くて丸いのは梅干しだ。どれもご飯に合うよ」

 

 

 アースは、初めて食べるそれを口に入れてみた。確かに美味しい。試しに米も食べてみた。ご飯に合うのは間違いない、とアースは幸せそうに顔を綻ばせた。次は梅干しに箸をつけた。「一口はやめておきなよ」と修羅に言われ、小さく齧る。

 

 

 「酸っぱ!」

 

 「あはは、びっくりした?」

 

 「あぁ、お米が」

 

 「和食が合うようでよかった」

 

 

 一人増えた茶の間で、修羅とシャオは朝食を楽しんだ。朝食を楽しんだ後は、シャオが洗い物をしていた。食器洗いはシャオの役割だった。

 

 

 「私もやります」

 

 「洗ったものを拭いてもらえるか?その布で」

 

 「はい。朝食美味しかったですね」

 

 「どうだった?初めての数人での食事は」

 

 「楽しいものです」

 

 

 朝の穏やかな空気感も、修羅とシャオの穏やかな雰囲気も、アースにとっては心地良かった。アースは、黙々とシャオに渡される食器を丁寧に拭いていき、棚に置いた。茶の間に目を移すと、修羅が新聞を読んでいるようだった。

 

 

 「砂輝さまは今頃茶菓子を朝食にしておるだろうな」

 

 「お料理なさるのでしょう?」

 

 「客人から戴いた土産を消費するために朝も昼も晩も菓子を召し上がっておられるそうだ」

 

 

 およそ栄養に偏りのありそうな食生活をしていた。かなりの量の糖を摂取しているというのに、本人の体型は寧ろ痩せ型だ。担当医でもある耀魔が不思議がっていた。

 

 

 「全部魔力の源になっておられるようだ」

 

 「シャオ、アースくん朝刊見てよ」

 

 「はい」

 

 

 修羅は情報収集のために新聞会社四社と契約している。シャオは、時々その手伝いをさせられる。隊長は皆新聞を読む。無愛想で一見学のなさそうなキルアも読むし、当然砂輝とその弟子たちも読む。この国の新聞だけでなく、伝書鳩が他国の新聞を持って来てくれるのだ。

 

 

 「修羅」

 

 「ん、どうした?タイガくん」

 

 「砂輝さまが呼んでる」

 

 

 タイガの発言に修羅とシャオはすぐに服を着替え始めた。アースも修羅に促され、さっさと白の法衣に着替えた。薄い自分の身体とは違い、程よく筋肉のついた修羅と、筋肉質なシャオの身体を傍目で見た時、アースは心の底から落胆した。

 

 

 

 

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