最近は全然書いてなかったのに、急激に東方界隈に復帰することを決めました。いわゆる、初心に帰ろうという魂胆ですね。なのに、読者参加という無謀な事をやっているので、この先生き残れるか分かりませんが、これから長い目で付き合ってくださると幸いです。それでは、ゆっくりしていってね!
__あと何回僕は死ねばいいんだ?
少年は呟く。最善の道を目指していた彼が、壊れる瞬間でもあった。その様子を、一人の女妖怪はずっと見ていた。救いたい。そう願って、彼の近くに行くことを決めた。
”境界線”はとっくの昔に変わってる。なら、彼女なりに手を伸ばすだけだ。そしてその先に居たのは、世界に絶望していた少年。だから。彼女は彼に微笑みをむける。
「あなた。私の息子になりなさい」
「……えっ?」
その日から、彼の人生は変わった。そしてそれから日は過ぎて__
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「ただいまー」
「お、竜也か。お帰り」
BAR
「ただいま。藍姉さん。母さんは?」
「まだ仕事中だ。いつになく今日は張り切っていてな……まぁ、あの人は竜也が来てから本当に変わったよ。子煩悩にもな」
「あはは。でも僕は助かってるから、それでいいんだよ」
「まったく、お前は本当に”紫様”に甘いな。逆も然りだが」
藍の言う”紫様”とは、この家。八雲家の主の事だ。そして幻想郷でもかなりの重鎮なので、それにより仕事量が多い。今もそのために仕事をしているのだ。まあ、夕飯には帰ってくるだろうというのが、二人の見解だ。
「それじゃあ、もう少しでご飯ができるが……今日も酒の用意はできるか? 因みに今日はブリ大根だ」
「それじゃあ、黒牛のぬる燗にしとこうかな? 合うって聞いたことあるし」
「お、黒牛か。いいな。カクテルも飲みたいが」
「了解。後で用意するよ」
竜也と藍は、酒を飲むことが多い。普段の仕事の疲れを癒すために、色々と試行錯誤したりしているのだ。その一環にあるのが、酒でもある。二人は度々何かあると飲んでいるのだ。
「とりあえず、私は調理に戻るよ。今日の料理も期待してくれよ。竜也」
「ふふ、楽しみに待ってるよ。藍姉さん」
藍が厨房に戻ると、竜也も用意をするために一旦荷物を部屋に置きに行った。彼の部屋はパソコンと携帯。いくつかの本が入った本棚が置かれている。そして、よく見るとゲームもある。普通の現代でも見る部屋だ。少年らしい部分もあるが、本棚の中身は確かに漫画もあるが、文学作品もいくつか置いてある。ライトノベルもあるし、彼はどうやら小説が好きなようだ、よく見ると、PCの画面も執筆中になっている。という事から、彼自身も小説を書いている事が窺える。
「さて、そろそろかな?」
荷物を置いたあとは、居間。英語で言えばリビングに向かう。長い廊下を歩いていると、その途中で猫耳と二本の尻尾が生えた少女に出くわした。
「橙。もうそろそろご飯だよ」
「ありがとうございます竜也様。今日もお仕事お疲れ様ですっ」
この猫少女は橙。藍の式神として仕えていて、八雲家に様々な奉仕をしている。同時に修行中でもある事から、竜也や藍が鍛えたりもしている。そして、最近正式に”八雲”の名称を貰うことになる。という話題が上がっていることは、彼女は知らない。
「それじゃあ行こうか。橙。藍姉さんが料理を作って待ってるはずだからね」
「ですねっ。藍様の料理は美味しくて好きなんですっ」
「はは、僕もだよ。藍姉さんの料理は欠かせない」
橙と会話しながら歩いて行くと、居間ではすでに藍が料理を用意して待っていた。机にはブリ大根やほうれん草の白和え。だし巻き玉子が置いてある。
「藍様、お疲れ様です!」
「おー、美味しそうだな」
「おお、橙と竜也が一緒に来たのか。あとはこれで紫様が来るだけだな」
「だね。母さんはいつ来るかな?」
藍と竜也が予想をしていると、障子が音を立てて開く。そこから長い金髪を靡かせた女性が、にこりと笑いながら立っていた。そう、彼女こそが。
「ふふ、待っててくれたのね。ありがとう、竜也。藍。橙」
「お帰りなさい。母さん」
「お帰りなさいませ。紫様」
「お疲れ様ですっ、紫様!」
「ふふっ、今日も我が子は可愛いしカッコイイわぁ」
「ち、ちょ、母さんっ」
紫は颯爽と竜也に抱きつくと、賢者と呼ばれる風格もなく猫なで声で竜也を撫でる。まさに子煩悩な母親だ。だから、藍はその様子を呆れはするが同時に微笑ましく思っていて、橙は羨ましそうに見ている。大方、竜也に抱きつきたいのかもしれない。まあ、橙の真意は定かではないが。
「それじゃあ食べましょうか。竜也。今日のお酒は?」
「ちょっと待って。確か、このスキマに……あったあった」
スキマというのは、八雲家が使う異空間のようなもの。色々使用用途もあって、今回竜也が開いたスキマは倉庫として使っていた。そしてそこから取り出したのは、黒牛という日本酒。何かの本でブリ大根に合っていると見た覚えがあるからだ。それを徳利に注ぎ、同時に取り出したぬる燗を作る機械にセットする。
「竜也様。相変わらず好きですよね、お酒」
「まあね。橙達と同じように飲むうちに、いつの間にか好きになって」
「ふふ、今では私達よりお酒に詳しいんじゃないかしら?」
「まさか? 母さんにはかなわないよ」
ご飯を食べながらの家族の団欒は、とても暖かい気分になる。竜也や紫。藍に橙の四人は、一緒に食べられる時は必ず一緒に食事をする。仕事で一緒に食べられない時も多いが、こうして一緒になる時は四人で話しながら食べるのだ。そうこうしているうちにぬる燗もできて、竜也が紫のお猪口に注ぐ。紫は竜也が注ぎ終わると、ブリ大根と共にクイっと一気に飲み干す。
「んーっ、ブリ大根に合うわぁ……やっぱり至福ねぇ。この時間は」
「紫様。本当に竜也にお酌をしてもらうのが好きですね」
「ええ、息子のお酌よ。喜ばないわけがないじゃない!」
紫は満足そうな顔をしながら、さらにブリ大根に手を伸ばす。藍としてはこのような紫が見られて、なんとなく安心していた。竜也も橙もだ。仕事詰めで疲れた姿を見せる彼女を見ているし、こうして元気ならそれが良いとも思っているからだ。だから、その元気の源になれているのなら。と竜也は思っている。それを、紫は感じているのかもしれない。
「ああ、そうね。竜也。あとでちょっと話があるわ。良い?」
「え? あ、うん。いいよ」
紫のことを考えていた竜也は、話があるということに首を傾げる。なにか特別なことはあったか? 思い出せない。誕生日でもないし、なにか特別なことはあるのだろうか。可能性を幾つか出してみるが、結局よく分からなかった。
「ふふ、美味しいわね。藍のブリ大根」
「ありがとうございます。紫様」
まあ、今は食事を楽しもう。竜也はそう決めると、ご飯とブリ大根を口に放り込む。やはりというか、藍の料理はとても美味しかった。
■■■
「で、母さん。話があるって何?」
「ふふ、そう焦らないの。今から話すわ」
紫に呼び出された竜也は、一体紫が何を言うのかと気になっていた。今までの傾向から、突拍子の無いものが出てくる可能性もあるし、はたまたただの雑談かもしれないし。いずれにしろ気になるのは確かだから、紫の言葉を待つ。
「……そうね、竜也。あなたは小説を書いているでしょう。それの繋がりを持ちたいとは思わない?」
「え? まぁ、欲しいけど」
紫の言葉は色々と含みを持たせている。竜也はそんな気がするが、その含みが理解できない。だから、そうなる事も理解していた紫は、笑みを浮かべた。
「貴方は普段は様々な二次創作を書いているけど、たまに。所謂東方……私達の小説を書いていたりするでしょ?」
「え? まあ、ね。それがどうしたの?」
東方。紫や藍。橙……それ以外にもたくさんの少女達を描いた作品がある。勿論紫はその存在を知っているし、竜也が自分達を描いた東方を使って小説を書いているなんて、何年も前から知っていた。だから。
「その東方に携わる人たちを、招待しようと思うの。どうかしら?」
「……母さん。それ本気?」
「ええ、本気よ。彼らにとっても良い経験になるでしょうね」
「幻想郷の存在が公になっても?」
「あら、私か
「……はぁ。中々に母さんらしいよ」
こういう時の紫は行動するとわかっているし、竜也は若干の諦めと母の計らいに少しだけ感謝を覚えた。別に嫌な訳では無い。ただ、とても大事な幻想郷が心配なだけなのだ。そもそも、彼は__
「……いや、まぁ。考え過ぎ、だよね」
「何がかしら?」
「なんでもない。それで実行するのは?」
「数日後よ」
「……了解」
紫の言葉を受け取った竜也は、忙しくなるな。と笑う。その様子を見ていた紫も安堵して一息ついた。そう、全てはここから始まる。東方に関わる人達の、どこかにあった物語が__