FAIRY TAIL~杖遣いの魔導師の物語~   作:塩谷あれる

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第二話です。あと二、三話で序章を片付けたいと思ってます


料理店での会話

「……そうだ、と言ったら、どうなるんだい?」

 

 火竜(サラマンダー)は目の前の灰髪の男の登場に一瞬面食らったようだが、すぐに平静を取り戻し、キザったらしい笑みを浮かべながら言った。それを聞いた灰髪は

 

「へぇ…」

 

 どこか品定めするかのように火竜(サラマンダー)を見た後、自分の肩の上で体を丸め寝る体勢になり始めている橙色の猫を伺った。

 

「おいミケ、こら、寝てんじゃねぇよお前」

『んン~…んンニャァア』

「こんな時ばっか猫みたいにしてんじゃあねぇぞ、おい」

 

 何やってんだコイツ。辺りの人々は皆そんなことを思っていた。いや、よく考えて欲しい。いきなり有名魔導士に今ありげに話しかけたと思ったら今度は猫に話しかける三十路過ぎのオッサン…はっきり言って痛い、痛すぎる。骨折ものの激痛である。何なんだこの男。と、辺りの空気が一気に冷めていく中、猫が口を開いた。

 

『全く…人の安眠を妨害しないでくれるカイ?デリカシーがないヨ、クラウト』

「「「!!!?」」」

「何言ってんだバカネコ。仕事中だっつの。で、どうだ?」

『ん~?んー…』

 

 なんと、人語を話すはずがない猫がペラペラと流暢に人の言葉を話したのである。しかも、灰髪の男はそれがさも当然のように猫と対話している。男に尋ねられた猫は、チラリ、と火竜(サラマンダー)の方を見ると、あくびを一つしたあと眠そうな声で言った。

 

『干渉系の魔法の匂いがスル…多分この人がクロカナ…』

「よしきた。お兄さん、ちょいと一緒に来て貰おうか」

 

 灰髪の男が火竜(サラマンダー)の肩を掴もうとした瞬間、二人(一人と一匹)はたちまち女達に囲まれた。

 

「ちょっとアンタ達失礼じゃない!?」

「そうよ!!火竜(サラマンダー)様はすっごい魔導士なのよ!!」

「クロとか何とか、いきなり何してんのよ!!」

「おっ、うお!?ちょ、ちょいと待てお嬢さん方」

 

 たちまち囲まれ袋だたきにされる二人。それを火竜(サラマンダー)が止めた。

 

「まあまあ、その辺にしておきたまえ。彼らにも何か理由があってこんなことを言ったのかも知れないしね」

「さ、火竜(サラマンダー)様が仰るなら…」

「やさし~♡」

「あ~ん♡」

 

 火竜(サラマンダー)の言葉ですぐに殴るのをやめる。その姿を見て、ルーシィは何かを確信したかのように火竜(サラマンダー)を睨み付けた。

 

「君達の厚い歓迎には感謝するけど…僕はこの先の港に用があるんだ、失礼するよ」

 

 火竜(サラマンダー)がパチン、と指を鳴らすと、地面から炎が溢れ出る。火竜(サラマンダー)はその炎に乗り、何やらパーティーをやる旨を伝えた後、どこかへ行ってしまった。

 

「…クソ、取り逃がした。追えるか?ミケ」

『君が追尾機能はつけなかったんダロ』

「あぁ、そうだったな。仕方ねぇ、急いで港に…」

「あの、ちょっと良いかな」

 

 男が立ち上がり、猫がその肩にまたぴょんと乗り、駆け出そうとする。それを遮るように、一つ声が上がった。二人が振り向くと、そこには

 

「さっきはありがとね」

「『?』」

 

 一人の少女が立っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「いやぁ、良い人だな。お前さん」

『そうだネ』

「いいのいいの、気にしないで。さっきは助けて貰ったし」

 

 クラウトとミケは、先程話しかけられた少女、ルーシィに連れられ食事をしていた。

 

「あの火竜(サラマンダー)って男、魅了(チャーム)って魔法を使ってたの」

「あぁ、らしいな」

『発売禁止になったはずだケド…裏ルートか何かで手にしたのカナ?』

 

 二人の言葉を聞き、ルーシィは確信した。彼らもまた、魔導士なのである、ということを。

 

「ねぇ、アンタ達、何でアイツを追ってたの?」

「ん?あぁ、依頼でな」

『犯罪者の捕獲のお仕事中なんダ』

「犯罪…アイツ、犯罪者だったの!?」

 

 ミケの言葉を聞き、ルーシィは思わず立ち上がった。周囲から好奇の目で見られたため一応座り直したが、その驚きは冷めていない。

 

「あぁ。マジモンの犯罪者だ。ここ最近、街々で若い女が消えてく事件が連続して起こってな。その消えた女の中に、とある名家のお嬢様がいた。その名家の旦那さんが、お嬢様の捜索、及び下手人の捕獲をギルドに依頼したってわけだ」

『一夜にして女達が消えたことカラ魔導士の犯行であることが分かッテ、そこから使用魔法は人の意志や肉体を操る干渉、操作系の魔法である線が高いってことデ調べテタ所だったんダ』

「んでもってさっきの火竜(サラマンダー)を、ミケお得意の魔力解析で嗅いでもらったところ、見事にビンゴ、って所だ」

「…………」

 

 ルーシィは困惑していた。まさか、あの男が犯罪者だったとは。

 

「ってか、だとしたらあの男追わなくて良いの!?」

「あぁ。それは良いんだよ」

「ど、どうして…」

「よくよく考えりゃ、あの野郎は今夜船上パーティーとやらをする予定なんだ。恐らくその船で女達を攫ってくつもりなんだろうよ。だとすりゃ、その港さえ抑えときゃ捕まえられる。もし仲間がいりゃ、それこそ一網打尽だ。その船に件のお嬢様がいるかどうかは分からんが、何にせよそのタイミングでお嬢様の居場所を聞き出せる」

 

 よっこいせ、と年寄りじみた声を上げてクラウトが立ち上がり、それを見たミケはひょい、とまたも彼の肩に飛び乗った。

 

「ごちそーさん。俺の分のお代はここに置いておくぜ。あ、釣り銭があったら貰って良いぞ」

『おいしかったヨ』

「え?いやちょっと、お礼なんだから奢らせてよ!」

「若いお嬢さんがお気になさんな。お礼なら、良い店を教えてくれたので十分だ。次ハルジオンに来るのが楽しみになった。もしそれでも礼がしたいってんなら…」

 

 クラウトはポケットからメモ帳とペンを取り出し、サラサラと何かを書いた後、そのページを破ってルーシィに渡した。

 

「これ、俺の入ってる魔導士ギルドの住所(アドレス)な。もしなんか困ったことがあったら、直接ここに訪ねて、『クラウト・キャスターの紹介で来た』って言えば格安で仕事してやるよ。俺に仕事くれるって意味で、これでおあいこってことにしてくれや」

 

 そう言ってクラウトはひらひらと手を振って店を出て行──こうとしたところで止まり、ルーシィに振り返った。

 

「あぁ、そうだ。さっきの男、分かってると思うが気をつけておけよ。理解している以上、もう魅了(チャーム)は効かん。だが、奴さんがまだ何かを隠している可能性は考慮しておけ。間違っても近づくんじゃあない」

 

 そう言い残して、クラウトとミケは今度こそ店を出たのであった。




何となくですが、ミケはハッピー達エクシードっぽい2頭身の猫ではなく、現実の猫みたいな感じをイメージしてます。因みに、性別は(一応)メスです。
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