たとえばこんな短編集   作:捻れ骨子

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たとえばこんなぐだおさん

 

 

 

人理継続保障機関フィニス・カルデア。未だ存在していた魔術と科学の粋を結集し、人類の営みを永遠に存在させるため秘密裏に設立されたその機関にて、「2016年を最後に、人類は絶滅する」という研究結果が『証明』された。

 それを覆すべく行われた霊子転移(レイシフト)――擬似的な時間移動を用い、過去で歴史が狂うとされた異常時間域――特異点に介入し歴史を修正しようと言う試みが実行される。

 しかし初のレイシフトの直前、『爆発事故』が発生しシステムが致命的な損害を受けてしまう。これにより被験者(マスター)たちは一人を残して全滅。唯一残った予備のマスター、【藤丸 立香】は偶然発動したレイシフトに巻き込まれ、特異点である2004年の日本、冬木という都市に降り立つこととなった。

 そして……。

 

「先輩! 所長! ここは私が!」

 

 どがん! と身の丈を越える巨大な盾を地面に突き立てた軽装鎧姿の少女――【マシュ・キリエライト】は背後に向かって言う。

 先の事故にて瀕死の重傷を負った彼女であるが、なぜか立香とともにレイシフトに巻き込まれた際、爆発でマスターを失ったサーヴァントと融合し、【デミ・サーヴァント】となってしまった。

 わけも分からないまま意識を取り戻した立香と契約し、襲いくる骸骨とかなんやかんやを蹴散らしていくうちに、同様にレイシフトに巻き込まれたらしいカルデア所長【オルガマリー・アニムスフィア】と合流。生き残っていたカルデアの医師【ロマニ・アーキマン】と連絡を取ることに成功し、彼女らは現状を打開するため特異点発生の原因の探索を開始した……のだが。

 

「サーヴァント! ダメよマシュ、今の貴女じゃそいつには勝てない!」

 

 オルガマリーが悲鳴のような声を上げる。マシュの前に立ちはだかるのは暗き影を纏った存在。ゴーストライナーたるサーヴァントのさらに影。不完全な英霊、【シャドウサーヴァント】。不完全なれどもその基本能力は本物と同等。覚醒したばかりのマシュでは太刀打ちできないとオルガマリーは訴える。しかし現状で対抗できるのは自分しかいないとマシュは覚悟を決め――ぽん、と叩かれた肩に気をそがれる。

 

「女の子前に立たせてその影で震えてるってのは、どうにも性に合わないね」

「え?…… 先輩!?」

 

 それを成したのは立香。彼は煤けてぼろぼろになった様相ながらも、皮肉めいた笑みを浮かべてマシュの前に出る。

 

「止めなさい藤丸! あんたごときでどうにか出来るはずがないじゃない!」

「そうです先輩! 今までの骸骨兵とは訳が違うんですよ!?」

 

 オルガマリーとマシュが訴えるが、立香は意にも返さない。そう、これまで立香は彼女らと『同等にエネミーを蹴散らしてきた』が、さすがにサーヴァントは桁が違う敵だ。魔術のまの字も知らない人間が挑むのは、蟻が象に立ち向かうのと同意である。それが分かっているのかいないのか、立香は――

 

「まったく……あのじいさん、絶対こうなることが分かってて『これ』押しつけただろ」

 

 ぶつくさい言いながら、懐から何かを取り出す。

 それは両手の平を会わせたくらいの大きさの、何らかの機械。そのことが合図になったかのように、シャドウサーヴァントが襲いくる。

 疾風のような攻撃をかろうじてかわし、立香は背面に抜け出て、手に持った機械を己の下腹部に押し当てる。さすれば機械の両側から金属の帯が延びて、腰に巻き付く。

 それは『ベルト』であった。飄々としながらも威風堂々。そんな立香の姿を見て、オルガマリーは思わず問いただす。

 

「なんなのよ……あんたなんなのよ!」

 

 その問いに――

 

 

 

(ここで推奨BGM 「ARMOUR ZONE 」)

 

 

 

 

「運命の破壊者(デストロイヤー・オブ・フェイト)、らしいですよ」

 

 こう答え、ポケットから『何か』を取り出す。それは『呼符』と称されるカードに似ていた。その表面には立香の持つ『令呪』と呼ばれるものと同じ紋章が刻まれている。

 それをくるりと指先で翻し、立香はこう言葉を放った。

 

「変身」

 

 言い放ってカードをがしゃりと機械――バックルにはめ込む。

 

〈master rid! D,D,D,D,D,D・Fate!〉

 

 機械音声が放たれ、途端に彼を中心に熱風が巻き起こった。

 少年の姿が変わる。ベルトを中心に、何かが体を覆っていく。それはライダースーツと甲冑を組み合わせたかのような赤銅の全身装甲。頭部全体を覆うマスクの額には、立香の令呪を意匠化したようなエンブレムが輝く。

 

「D・Fate……【ディフェイト】ですって!? そんな、あれは……」

『【マスクド・マスターシステム】!? 馬鹿な、あの計画は凍結されたはずだ!』

 

 オルガマリーと状況をモニターしていたロマニが悲鳴のような声を上げる中、立香――ディフェイトは構えを取り、両眼をぶうんと光らせる。

 

「それじゃあ、いっちょやってみますか、ねっ!」

 

 言うが早いか、戦士はシャドウサーヴァントに向かって疾風のように駆けだした。

 対するシャドウサーヴァントも、ディフェイトを脅威と見たか真っ正面から迎え撃つ。瞬時に交錯。嵐のようなシャドウサーヴァントの攻撃を、ディフェイトは難なくかわし、捌き、時折反撃すらしてみせる。その様子を半ば唖然としてマシュは見守っていた。

 

「すごい……サーヴァントと互角に戦ってる。先輩は、一体……?」

 

 その問いに、ロマニが応える。

 

『あれは多分、マスクド・マスターシステム。予想されるレイシフト先の過酷な環境からマスターを護るための特殊礼装……のはずなんだけど、あんな戦闘能力は設定されていないぞ!? 何より企画段階で凍結されてるから現物は存在しないのに!』

 

 どうなっているのだと皆が混乱している間にも戦況は移り変わる。激しく鎬を削っていた二人だが、不意にサーヴァントが攻撃を止め、後ろに下がり距離を取る。その高まっていく魔力を見て取ったオルガマリーは警告の声を上げた。

 

「逃げなさい藤丸! 相手は【宝具】を使う気よ!」

 

 宝具。サーヴァントがもつ固有武器の能力を解放して放たれる、所謂必殺技である。ただ威力があるだけでなく魔術的な攻撃力、いや場合によっては概念すら覆す威力を持ったそれをまともに喰らえば、マスクド・マスターシステムといえど防げるものではない。

 しかしディフェイトは慌ても騒ぎもしなかった。

 

「なに、こっちにもあるさ!」

 

 そう言って彼は、左腰に備えていたカードフォルダーらしきものから新たに一枚カードを取り出し、バックルにはめ込む。

 

〈Phantasm rid! D,D,D,D,D,D・Fate!〉

 

 再び機械音声が響き、ディフェイトの全身から魔力が立ち上り――

 『その姿がかき消えた』。

 轟音、そして衝撃。焼け落ちた建物をなぎ倒し、吹っ飛んでいくシャドウサーヴァント。

 ディフェイトが行ったのは何のことはない、魔力を纏った跳び蹴りである。ただし『サーヴァントすらも反応できない速度の』。

 本来のサーヴァントであれば何らかの防御あるいは回避の手段などいくらでもあったであろうが、ほとんど思考が損失しているシャドウサーヴァントでは対応できない。そしてその耐久力も本物には及ばない。

 砂の像が溶け崩れるかのように消えていこうとするシャドウサーヴァント。それに向かってディフェイトは新たに取り出したカードを投げつける。

 小気味よく空を切って飛ぶカードは、消えゆく影に刺さる。そこから『なにか』を吸い取り、影が完全に消えると同時に再び空を切ってディフェイトの元に戻っていく。

 つかみ取ったカードには新たに何かの紋章が刻まれていた。それを見つつディフェイトはバックルを操作する。

 

「アサシン、ってやつか。……ま、初戦にしちゃ上々でしょ」

 

 その姿が、少年へと戻る。立香はカードをフォルダーにしまいながら、マシュたちを見てにっと笑みを浮かべた。

 

「と、こんな感じで片づきましたけど、いいすか?」

「『よかあないよ』わよ!!」

 

 オルガマリーとロマニが揃って声を張り上げる。額に青筋を浮かべたオルガマリーは、びしすと立香を指して言いつのった。

 

「一体全体どういう事なのか説明しなさい! 下らない誤魔化しや言い逃れは許さないわよ!」

「勿論ちゃんと説明しますって。長くなるから適当にはしょりますけど、そこは勘弁して下さいよ?」

 

 まーまーとオルガマリーを宥める立香。その姿を見ながら、マシュは心の中で疑問を浮かべる。

 

(先輩……あなたは……?)

 

 

 

 

 

 こうして、藤丸 立香ことディフェイトの、長きに渡る戦いが幕を開けた。

 その力をもって、彼は運命に従い破壊するのか。それとも運命を破壊するのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 たとえば仮面ライダーっぽかったりするぐだおさん。

 

 続くわけがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 

 

「なにあれ。なにあれ。つーか俺の出番」

 

 ↑様子を伺ってて出番が奪われたキャスニキ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




始めての人は初めまして。知ってる人は毎度。捻れ骨子というけちな物書きでございます。

普段はガンダムの鉄血ものなんぞを書いているのですが、GWの最中になんか降りてきてこのようなものが出来上がりました。ぐだおさんが仮面ライダーっぽくなる、よくありそうな話です。
で、ものはディケイドっぽい名前だけど多分システムはブレイド寄り。敵サーヴァントの力を取り込んで強くなっていく系。きっとパワーアップしてくと色が変わっていくんだぜ。
なおBGMがARMOUR ZONE なのは、ぐだおさんに「……倒れたくないからだよ」をやらせたいがため。いや思いつきなんで続きませんけれど。

……鉄血ものも思いつきから始まったことには目を逸らしつつ、このあたりでお暇させて頂きます。でわでわ。

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