たとえばこんな短編集   作:捻れ骨子

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 流行ってるうちに書かなきゃ。



例えばこんな無惨様

 

 

 

 

 歴史の闇に潜み、人間を文字通り食い物にしてきた怪異がある。

 【鬼】。人を喰らい、己の血を触媒とした【血鬼術】なる技を振るう化け物。その頂点に立つのが【鬼舞辻  無惨】という、平安時代から生き残っている鬼だ。

 時は大正。著しい文化の発展を遂げる日本。その裏側で、無惨を中心とした鬼の一派は、密やかに、しかし確かな脅威として存在している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無惨の配下。その中でも幹部格の精鋭が【十二鬼月】と呼ばれる者たちである。

 彼らは最側近たる【上弦】と、【下弦】に分けられ、それぞれ壱から陸までの順位が与えられている。そして今現在、下弦の鬼たちは強制的に集結させられていた。

 

「こ、ここは……俺たちはいつの間に……」

 

 己のいた場所からいきなり一カ所に集められ、戸惑う鬼たち。そこは日本家屋の様相を思わせながらも、複雑怪奇な構造をした建造物であった。【無限城】。無惨の拠点である。

 そのことに気づくより先に、べん、と琵琶の音が鳴り響いた。

 同時に現れる気配。はっと見上げれば、そう離れていない位置にある張り出しの上、妖艶な着物姿の女が自分たちを見下ろしている。

 何者、と誰何するより先に、その女が口を開く。

 

「跪いて、頭を垂れよ」

 

 叩き伏せられたかのような勢いで、即座に土下座する鬼たち。姿では分からなかった。気配でも分からなかった。だがその声、それに込められた威圧感。その人物は間違いなく――

 

(((((む、無惨様だ……っ!)))))

 

 己の主。鬼の頂点。なぜ姿形が変わっているのか分からないが、それが現れたことに戦慄と恐怖を隠せない。

 

「も、申し訳ございません! いつもとお姿も気配も違っていた物で……」

「ほう?」

 

 鬼の1人が言い訳じみた言葉を放つが、たった一言の重圧に押し黙る。

 

「この無限城の中で、お前たちに気配も感じさせずに現れるのが何者なのか。十二鬼月ともなればそれぐらいは即座に理解してもらいたい物だ」

 

 平伏する配下を見下ろし、女――無惨は言葉を紡ぐ。

 

「昨日、下弦の伍が鬼狩りに討たれた」

 

 その言葉に鬼たちはびくりと身を震わせる。自分たちと同格の鬼が討たれたという情報。それを知った無惨が何を言い出すのか。それがとてつもなく恐ろしい。

 

「この百年あまり、上弦は顔ぶれも変わらず鬼狩りたちを葬ってきた。……しかしお前たちは、何度入れ替わったかな?」

(そ、そんなこと、俺たちに言われても……)

 

 無惨の言葉を受け、しかし面と向かって言う勇気も無く、下弦の陸、末席に位置する鬼【釜鵺】は内心で思う。だが――

 

「そんなことを俺たちに言われても、か」

 

 心の中を言い当てられて、ぞわりと総毛立つ釜鵺。

 

(俺の考えを呼んだ!? ま、拙い……)

「何が拙いのだ? 私はお前たちの『親』ぞ。考えを読むことなど造作もない」

 

 そこで無惨は表情を変えた。

 

 ()()()()()

 

「危機感が足りぬなあ釜鵺。お前たちの同格が討たれると言うことは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言うことだ。知らぬ存ぜぬでは済まされぬ話ぞ」

 

 くつくつと嗤いながら笑えぬことを言う無惨。釜鵺は生きた心地もしない。

 震える五人。その心境など知ったことではないと言わんばかりに、無惨は「そういえば」と話を続ける。

 

「下弦の肆、【零余子】よ。お前は鬼狩りと遭遇したとき、いつも真っ先に逃げることを考えているな?」

 

 ひぃ、と小さく悲鳴が上がる。名指しされた者、少女の姿をした鬼零余子は、がばりと身を起こして弁明を試みる。

 

「そ、そんなことはございません! 私はあなた様のために……」

「言ったはずだ。私に嘘は通じぬ」

 

 いつの間にか、無惨が目の前に立っていた。恐怖のあまり言葉を失い、涙を流しながら呻くことしか出来なくなった零余子の顎を、無惨はつい、と人差し指でなぞる。

 

「そう怯えるな。思わずなぶり殺しにしたくなってしまうではないか」

 

 愛い奴よとくつくつ嗤う無惨の姿にはおぞましさと恐怖しか感じられない。蛇に睨まれた蛙よりも確かな危機感を零余子は感じ、意識を飛ばしかけている。そんな彼女に対して無惨は――

 

「私はお前を()()()()()のだよ。その臆病さ、その生き汚さ。ただ力に溺れ考えなしに人を食い散らかす輩よりは、よほどいい」

 

 意外な言葉を投げかけられ、零余子は呆けたように目を丸くする。その様子に再び嗤い、無惨は平伏する配下をぐるりと見回した。

 

「鬼狩りたちは力を増してきている。生き残るには創意工夫も必要となろう。零余子のように逃げの一手というのも一つ。己の特技が生かせる領域に引きずり込むのも一つ。ただ力を振るうのが能ではないぞ?」

 

 私は無駄な消耗を好かぬと、無惨は言う。それは配下に何らかの情を持っているからではなく、己の『道具』が減らされるのを嫌う。そのようなものなのだろう。下弦の鬼たちはそう感じている。

 

「さて、説教はこのくらいにしておこう。……お前たちを集めたのは他でもない。この鬼舞辻  無惨、お前たちに頼みがある」

 

 下弦の鬼たちは戦いた。無惨は下弦の鬼に直接命令を下すことは少ない。だが『頼み』という体で命令を下されるとき、それは大概()()()()をされるときだ。

 何を命じられるのか。戦々恐々としている鬼たちに向かって、無惨は言う。

 

「最近、鬼狩りの中に『日輪の耳飾り』をつけた者がいるという。そやつを私の元に連れてこい。……ただし五体満足でな。多少傷つけても構わんが、口のきけない状態や、まして鬼にすることなどは許さぬ」

 

 やはり無茶ぶりであった。生き延びるために創意工夫しろといった口で、鬼狩りの剣士を、しかも五体満足で連れてこいなどとは。困難にもほどがあると考える……それすら見透かされると分かっているが。

 その内心の不満ですらも、無惨には愉快に見えるらしい。

 

「罠を張って追い込む。人質を取る。鬼狩りどもを出し抜く手段はいくらでもあろう。自身が下弦の伍――【累】とは違うと思っているのであれば、それを証明してみせるが良い」

 

 死した下弦の一角を引き合いにして言う。そうはいっても腰が引けているのは目に見えている。だから無惨は()()()()()()()

 

「とは言っても何の報いもなければやる気も起こらんだろう。……そうだな。無事私の元に耳飾りの剣士を連れてきた者には、()()()()()()()()()()

 

 伏せたまま、鬼たちがざわめいた。基本無惨配下の鬼は、無惨に血を分けられることによって増え、そしてその血が多ければ多いほど強くなる。だが同時に無惨の血は猛毒であり、それに耐えて適合したものでなければ鬼にはなれないし強化も出来ない。と言うか適合しなければ死ぬ。例え十二鬼月であろうともそれは変わりなく、これは強くなる機会であるが命がけと言うことでもあった。

 しかし、無惨が一度血を与えた者に再び与えることはまれだ。より強い力を手に入れる機会であることは間違いない。

 鬼になった者は本能的に力を求める。これは賭けであるが、一度血を受け入れ適合し、十二鬼月まで至った自分たちであればあるいは……鬼たちの中に野心がむくむくと鎌首をもたげ始めた。

 

「ま、まことに、まことにございますか!?」

 

 恐る恐るといった感じで下弦の弐、【轆轤】が問う。多少のことでは命は取られぬと見たのだろう。それは正解であったようで、無惨は咎めるでもなく答える。

 

「私は嘘は言わん。この無惨の言葉が信じられんか?」

「そ、そのような事はございません! ですが二度も血を与えるなど、滅多に無かったことでございますので」

「それほど重要なこと、そう思え。そしてそれを任せるからには……分かっておろう?」

 

 語外に期待しているようなことを匂わせる。今度こそ鬼たちは色めきだった。

 それを見て取った無惨は、口元を三日月の形に歪める。

 

「やる気になったようで何よりだ。……では吉報を待つ。力と知恵を尽くすが良い」

 

 べん、べんと琵琶がかき鳴らされ、下弦の鬼たちの姿が次々と消える。

 無限城の中に残されたのはたたずむ無惨。そして、いつの間にやらその傍らには琵琶を構え座した女の姿がある。

 よろしいので、と琵琶の女が問うた。無惨はふふんと鼻を鳴らしながら言う。

 

「血のことか? 私は嘘は言わぬと言った。耳飾りの剣士を連れてきたらば、ちゃんと与えてやるとも」

 

 ただし、とその言葉は続いた。

 

「与えた血に耐えられるかどうかは奴ら次第だろうがな。……それ以前に、()()()()()()()()

 

 くつくつと再び笑い声がこぼれる。

 

「鬼狩りども……今は【鬼殺隊】と言ったか。人知れず闇に潜む存在でありながら、力を付けていることには違いない。一度その力を測らねばならぬと思っていたところだ」

 

 長きにわたって無惨一党と戦い続けている鬼狩り。時代を経て形を変え、今は鬼殺隊と名乗り活動を続けている。その戦力は幹部たる下弦の鬼を討つまでに研ぎ澄まされ、結果下弦の鬼たちが入れ替わる速度は徐々に速まってきている。

 そして、日輪の耳飾り――かつて己を死の寸前にまで追い込んだ剣士と同じ物を付けた存在が鬼殺隊に加わったと知り、無惨は彼らの脅威を今一度図る必要性を感じていた。

 己の血という餌に釣られた下弦の鬼たちは、試行錯誤しながら彼らに挑むだろう。それにどう対応するのか。あるいは状況が大きく変化するかも知れない。

 いやはや全くもって――

 

「実に()()()()()()()()()()()

 

 嗤う。無惨は嗤う。

 彼らは鬼殺隊を、己に死の恐怖を与えた者を祖とする組織を、()()()()()()()()()()()()

 下弦の鬼『程度』で押しつぶされるようであれば所詮それまで。だが乗り越えるようであれば。

 

 くつくつくつくつくつ。

 

 地獄の釜が茹で上がるような嗤い声が響く。不快で愉快。相反する思いを同時に抱きながら、無惨はおぞましい笑みを浮かべている。

 

「さあ鬼殺隊よ、お前たちは私をどう苛立たせて(楽しませて)くれる?」

 

 長き時を生きた鬼。闇に生きてきたその存在は、己の愉悦がためだけに動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 

 

 うちの無惨様。

 

 何をとち狂ったかラスボスらしくなった無惨様。きれいになるのはあるけどラスボスらしさがますのは無いんじゃね? と言う思いつきでこうなった。

 原作に比べマイルドになったように見えるが、結局無茶ぶりする。下弦の鬼を道具としか見ていないのは一緒だが、道具と書いておもちゃと呼ぶ類い。そしておもちゃは十二分に遊び尽くす質。

 人間が大嫌いで大好き。もちろん好きはおもちゃに出来るという意味……なのかどうか。下手をすると「やはり人間は素晴らしい」とか言い出しかねない。

 慢心さが小物風味で無く、どちらかと言えば某英雄王風味。命の危機すら苛立ちながらも楽しむ系ではなかろうか。

 ある意味原作よりも弱く、そして原作よりも強い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけの2

 

 

「あ、あの、それでなぜ女の姿なのでしょうか……?」(←恐る恐る聞く轆轤)

「ん? いやなに興が乗って女装してみたら、妙に似合っていたのでな。ちょっと見せびらかしに来た」(←フンスとドヤ顔の無惨様)

「は、はあ……」(←ものすごい反応に困る轆轤)

「なんだもう少し面白い反応をせぬか。欲情するとか嘔吐するとか」

(((((無茶言うなし)))))

 

 愉快だけど無茶ぶりはする無惨様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけの3

 

 

「お許しください、お許しください無惨様ぁ!」

「ふふふ……そう言いながら、お前のここはこうなっているではないか」

「ああっ、いけませぬ。そのようなことはいけませぬぅ!」

「お前は私の命に従っていれば良いのだ。……そうら、私の手で果てるが良い」

「無惨様ぁ! んあああああああ!」

 

 パワハラじゃなくてセクハラする無惨様。(なおバイ)

 色々と滾るな!  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 はい流行りの鬼滅でなんか思いつきました。 旬のうちが美味しいと海原雄山も言ってます多分。

 こんな無惨もアリじゃね、と個人的には思うのですがいかがだったでしょうか。こんなん相手だと鬼殺隊は大苦戦……と思いきや、なんかあっちも強化されているような予感が。でも続きはないと思います。おまけ? もっと一発ネタだよ。

 それでは今回はこの辺で。
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