やはり私の先生は間違っているようで間違っていない。   作:黒霧Rose

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本編早くしろよ。

と思うのは分かりますが、とりあえず箸休め。

シリアスばかりだと心がもたない。

・・・主に私の。


番外編 二代目の最近の日常

 

朝起きて、最初にするのは布団を直すことだ。学校から帰ってきてぐちゃぐちゃの布団を見ると、なんだかすべてのやる気がなくなる。それは私のプライドが許さないので、まずはそれを絶対にする。

次にするのは、歯磨き、洗顔、髪の毛を直すことだ。乱れきったままの私で学校へ登校するなど、これまた私のプライドが許さない。

 

一体どれほど私のプライドは高いのだろうか?

 

話を戻そう。次にするのは朝食の準備だ。多くは昨夜の残り物をそのまま出す。こうすると、時間短縮に繋がり、身支度に時間を割くことができるのだ。昨日の夕食と大して変わらないというのは、些か面白みに欠けるが背に腹はかえられない。

そして、そのままお弁当作りにシフトする。余分に作り、これまた朝食に回す。改めて考えると、朝食を1から作るというのはなんだかんだで面倒なことだと気付かされる。

朝食も終わり、制服に着替える。制服のまま料理をすると、万が一の時、みっともない姿で学校へ行くことになる。やはり私のプライドは高い。

カバンの中身を整理し、姿鏡で自分を確認する。

 

「今日も問題なく美少女ね」

 

容姿端麗なのは自他ともに認めているので、自分で言う。事実とは、言うだけなら別に問題などない。ただの確認のようなものだ。

 

「それにしても、いくら生徒とはいえこんな美少女に揺れ動かないなんて、先生には困ったものね」

 

私は1年生の頃から、教師の目線すら奪っていた。それは男性のであり、女性のでもある。相手は生徒だというのに、そんな色欲にまみれた目線を向けるのは如何なものかしら。

けれど、比企谷先生にはそんな目で見て欲しいと思っている自分は、一体どれだけワガママなのだろうか。

 

「ワガママでプライドが高いだなんて・・・正直最悪ね」

 

自分で言ってて少し悲しくなる。

 

一体全体どうしたというのだろうか。文化祭が過ぎてからというもの、朝起きても、授業を受けていても、廊下を歩いていても、家に帰っても、寝る前も、気付けば比企谷先生のことばかりを考えている。1番ひどいのは部活の時間だ。比企谷先生が来ればそれだけでなんだか心が喜ぶし、来なければ日常が少しずつ色褪せていく。

 

いえ、本当は分かっている。文化祭の後に言われた、もらった彼からの返事が事の発端だということぐらい。それぐらいに私は嬉しかったのだ。たったそれだけのことで、なんでもなかったことに少しずつだが、意味を見出すことができる。それだけで、自分の人生が素晴らしく感じてしまうものなのだ。

 

しかし、こんなことを考えていても仕方がない。それに、学校に遅れてしまう。

 

「・・・いってきます」

 

返事なんてない。一人暮らしなのだから当然のことだ。それなのに、どうしてか、比企谷先生からの『いってらっしゃい』が欲しくて、もう意味が分からなくなっていく。

 

 

 

ねぇ比企谷先生、今日は部活に来てくれるわよね?

 

 

 

そんな淡い想いを抱きながら、今日も私は登校をする。

 

 

 

 

 

休み時間、最近の私は用もないのに廊下を歩くようになった。正確に言うなら『用がない』のではなく『目的がある』のだ。

答えなど単純明快、比企谷先生と会うことだ。彼はこの学校の先生であり、どこかのクラスで授業をしているはずだ。ならば、こうして廊下を歩いていればいつかは会えるのではないかと、そういう魂胆がある。

 

なんだか卑しいわね。

 

少し自己嫌悪に陥りつつも、目的の人物が見えただけでそんな思考は吹っ飛ぶ。

 

 

「・・・こんにちは」

 

廊下で教師とすれ違う時は、挨拶をする。当然のことをしているだけなのに、相手が比企谷先生なだけでなんだか特別なことをしているような気分になる。

 

挨拶は素晴らしいわね。

 

「おう」

 

 

短い返事。けれども、それだけで私の心は満たされる。単純なのは私の心の方らしい。挨拶を返すこともまた当然のことのはずなのに、期待してしまう。

 

 

「あ、そうだ。雪ノ下、5限目の現代文だが、急遽俺が出ることになったらしい。クラスの方に伝えといてくれ」

 

 

朗報。この言葉の使い方はこうだ。

 

「ええ、分かりました」

 

周りにも生徒がおり、今は部活中ではない。故に私は敬語で話すことにする。なんだか教師と生徒っぽいわね。

 

教師と生徒だったわ。

 

自分でも混乱してしまうくらいには、舞い上がっているのだろう。けれど、それは仕方のないことだ。望んだもの、望んだことがこうして実現する。

 

実現することだからこそ、それは現実なのだ。だってそうでしょう?『実現』と『現実』という漢字は、同じなのだから。

 

「ああ。よろしく頼む」

 

 

 

 

 

 

 

偶には、期待してみるものね。

 

 

 

 

 

 

 

ハッキリ言おう。今の私は優越感と、ちょっとした不機嫌の狭間に居る。

 

何故こうなったのかと問われれば、私はこう答える。

 

『比企谷先生が悪い』と。

 

 

あれは比企谷先生が5限目の時間、J組に現れた時のことだった。

 

「雪ノ下から連絡は行ってると思うが、5限目は俺が出ることになった。そういうわけで、よろしく」

 

黒板の前に立ってそう言っのだ、眼鏡姿で。そう、眼鏡姿で・・・だ。

 

彼がそう言った瞬間、クラスの雰囲気が弾けた。正確に言うなら、クラスの女子たちがはっちゃけた。

 

 

「眼鏡ちょー似合ってる!!」

「うわ、かっこよ」

「できる男って感じでたまらない」

「優しく指導されたら、私・・・」

 

 

そう言い始めたのだ。私は何度か見ているので、あまり新鮮味はないのだが、どうやら他の女子たちにはそれが衝撃的だったようだ。

 

「先生!どうして今日は眼鏡なんですか?」

 

クラスの中でも、比較的明るい子が質問をしたのだ。

 

「視力悪いから。今日は曇りだから暗くて、後ろの方とかあんまり見えなくてな」

 

そう返した。なんともそれらしい返事である。言われてみれば、比企谷先生は夜になると眼鏡をかけている気がする。職員室に鍵を返しに行った時も、眼鏡をかけながら仕事をしていた。更に言うなら、以前私の家に来た時も、眼鏡をかけていた。彼の返答通りなら、夜道がとても暗く、危険だと判断したのだろう。

 

「似合ってますよ!」

 

また例の子が先生に言葉をかける。どうして大勢の前でそんなことが言えるのだろうか?疑問とともに、少しばかり羨望を向けてしまう。

 

「そりゃどうも」

 

 

それからというもの、いつもの授業とは考えられないくらい、授業中の挙手が目立った。それも女子、女子、女子である。比企谷先生も挙手をしてくれるのが、反応をしてくれるのが嬉しいのか、少しばかり笑みを浮かべていた。それを見ていた女子たちの反応は凄かった。

 

 

「わ、笑った!」

「やばい、超いい!」

「優しそうだなぁ」

「あんな優しい笑みで指導されたら、私・・・」

 

 

後半の方に、先ほどとあまり変わっていないことを言った生徒がいた気がするが、気にしてはいけない。というよりも、是非ともその先を言わないでいただきたい。

 

もっとも、私は比企谷先生の笑みを何度か見ている。確かに笑う回数は少ないが、それでも見てきた、見ていた。けれど、それを知っているのは、このクラスでは私だけだというアドバンテージが無くなってしまった。

 

しかも、周りの生徒を相手するばかりでこちらを向いてもくれない。私は指名をされなければ、基本的には発言をしないので確かに仕方がないと言えよう。それでも、納得できないというのが私のプライドの面倒なところだ。

 

 

いえ、どちらかと言うとワガママ・・・かしら。

 

 

本当に厄介な女だ。

 

 

「・・・雪ノ下、お前は本文を読んでどう思った?」

 

 

 

「え、ええ、私は少しばかり筆者は言いすぎだと思います」

 

突然の指名が来る。それが嬉しい。比企谷先生でなければ、面倒だとか、またか、と思っていただろう。それなのに、比企谷先生が私を指名してくれたことが、今は何よりも誇らしかった。

 

 

 

 

 

だってそうでしょう?私だけが、唯一比企谷先生の方から指名されたのだから。

 

 

 

 

 

私の不機嫌なんて、これだけで吹っ飛ぶのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談だが、放課後の部活に先生が現れた時、いつもより紅茶が美味しく感じたのは気のせいではないと思う。

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