やはり私の先生は間違っているようで間違っていない。   作:黒霧Rose

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7話 二代目は千葉村で過去を見る

 

千葉村。小学生の頃、林間学校として夏休みに合宿などが行われる場所だ。なぜこんな話をしているのかというと、私たち奉仕部は夏休みにその林間学校のボランティアとして訪れているからだ。

 

「さて、着いたぞ」

 

車の運転をしてくれた先生が言う。ちなみに助手席に乗っているのは私だったりする。

 

「あ、後から有志のやつらが来るから」

 

先生はそう言って、車から荷物を出す。

 

周りの景色を見ていると、1台の車が停まった。

 

「やぁ雪ノ下さん、結衣」

 

「隼人くん!?って優美子たちもいるじゃん!」

 

降りてきたのは葉山グループの方々だった。

 

最悪ね。どうして夏休みまで彼の顔を拝まなければならないのかしら。先が思いやられるわ・・・この感想、確か先生にも抱いたような?まぁいいわ。

 

「葉山たちも着いたことだし、挨拶に行くぞ」

 

私たちは、目的であるボランティアのために小学生と挨拶をしに行った。

 

 

「俺は葉山隼人です。みんなのお手伝いをします、楽しい思い出にしましょう。よろしくお願いします」

 

そう葉山くんが挨拶を終えると、小学生たちからは黄色い歓声が発せられた。あんな薄っぺらな彼の顔に騙されるだなんて、憐れな小学生ね。

 

「さて、とりあえずお前たちの今回の仕事を教える。簡単に言えば、小学生が安全に今回の林間学校を行えるようにサポートをしてほしい。以上」

 

本当に簡単な説明しかしないのね。けれど伝わったからそれでいいわ。

 

「んじゃ、とりあえずウォークラリーの見張りよろしく。俺は向こうの先生たちに挨拶して、予定とか話してくるから」

 

そう言って、先生は行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

「ただのアオダイショウだよ」

 

「おにーさんすごーい!」

 

葉山くんは現れたヘビを退治しに小学生のもとに向かった。

 

そうしていると、1人の女子を見つけたようだ。

 

「チェックポイントは見つかった?」

 

「・・・うんうん」

 

・・・なるほど。そういうことね。

 

「なら、みんなで探そう」

 

そう言うと、その子をグループに押し込んだ。

 

アウトね。恐らくあの子は、悪意の対象になっている。そういう子は進んで距離をとるもの、つまりそれは悪手よ。

 

本当に、なにも成長していないわね。

 

 

 

 

 

ウォークラリーも終わり、今は全員でカレーを作る時間だ。私は特にやることもないので離れた所にいる。

 

「・・・なにか考えごとかね」

 

「比企谷先生・・・」

 

気付くと隣に比企谷先生が立っていた。

 

「カレー好き?」

 

葉山くんの声が聞こえてきた。そちらの方向を見てみると、先程の小学生に話しかけているようだった。

 

「・・・はぁ」

 

思わず溜息が出てしまう。

 

「なるほど、そういうことか」

 

先生もなにか分かったらしい。

 

「・・・別に興味ない」

 

いい判断ね。とりあえずその場を一旦離れる。そのまま居てしまっては周りの子たちの悪意に晒されてしまうもの。

 

「あ、あはは・・・なにか隠し味とか入れよっか。入れたいものがある人いるかな?」

 

「はい!桃とか!」

 

「あいつはバカか」

 

私も比企谷先生同様に呆れてしまう。由比ヶ浜さん、絶対にカレーに近付かないでね。

 

「ホント、バカばっか」

 

声のした方を見てみると、例の小学生がこちらに来ていた。

 

「世の中そんなもんだ。早く気付いてよかったな」

 

「そうね。どこもそのようなものよ」

 

「・・・名前」

 

「俺は教師の比企谷八幡だ。人に名前を尋ねる時は自分から名乗る、覚えておけ」

 

「う、うん。私は鶴見留美です」

 

「私は雪ノ下雪乃よ」

 

「んで、今こっちに来たのが由比ヶ浜結衣だ」

 

どうやら由比ヶ浜さんもこちらに来たようね。

 

「やっはろー。留美ちゃんだよね?」

 

「う、うん。なんか、そっちの2人と違う気がする」

 

鶴見さんは私と比企谷先生のことを見て言う。

 

「残念だな鶴見。俺も雪ノ下も別種だ、根本からな。だからみんな違う」

 

「あ、あはは。それで、留美ちゃんはどうしちゃったのかな?」

 

由比ヶ浜さんも気付いていたようね。確かに、空気を読んだり、人の感情に敏感だもの。考えてみれば当然ね。

 

「・・・最初はただの遊びだったんだ。誰かが誰かをハブってそれで気付いたらまた元通りになっていて、そんな感じだったんだ。でも私はみんなのこと、見捨てちゃったんだ。だからもう戻れないや。中学行ってもこのままなのかな?」

 

「そうね。中学へ行っても変わらないわ。あなたを攻撃する人と他校の人が一緒になるだけよ」

 

ここで慰めを言ったところでなんにもならない。だとするなら現実というものを教えるしかない。

 

「だろうな。環境は変わらないし、現状も変わらないし、世界だって変わりはしない。けれどこの世界には自分の意志だけで変えられるものがある。なにか分かるか?」

 

「・・・分かんない」

 

「答えは自分だ。お前が変わりたいと思えば少なからずなにか起きる。世界が変わらないというのなら、世界の見方を変えるしかない。そして創るしかない、お前の『世界』ってやつを」

 

・・・そうね。あなたが変わろうとすれば、なにかは変わる。決して大きなものではないけれど、それでもあなたにとっては必ずなにか起こる。

 

「雪ノ下」

 

「なにかしら」

 

「自分の『世界』を創るときに一番必要なのはなにか。これが今回の『魚の居場所』だ。よく考えておくように。俺は昼食作りの見回りに行ってくる」

 

私に問題を出し、先生は生徒たちの方へ行ってしまった。

 

 

 

 

 

「大丈夫かな・・・あの子」

 

夕食の時間、葉山くんがふと呟いた。

 

「鶴見ってやつのことだな、葉山」

 

その発言に比企谷先生が反応する。

 

「はい、なんだか1人になってしまっているようで」

 

「・・・それで?」

 

「可能なら助けたいと思っています」

 

「無理ね。あなたには無理、そうだったでしょう?」

 

私が口を挟む。昼間の彼の行動、そして昔の彼、それら全ても鑑みても彼にはできない。

 

「どうかな、今と昔は違う」

 

「いいえ、違わないわ。昼間のあなたの行動が何よりの証拠よ」

 

「ちょっと雪ノ下さんさぁ、そういうのやめてくんない?」

 

三浦さんね。

 

「お前ら、少し黙れ。雪ノ下、お前は動くのか?」

 

比企谷先生が私にそう訊く。

 

「彼女が助けを求めるのなら、奉仕部として動きたいと思っています」

 

けれど現状、彼女からは助けを求められてない。だとするなら私は動くことができない。

 

「・・・そうか。なら聞こうか、まず葉山」

 

「は、はい」

 

「お前はどうやって鶴見を助けるつもりだ?」

 

「俺の思う最終目標はみんなと仲良くすることです。だから鶴見さんとみんなで話を合いをさせようと思います」

 

本当に変わらない。それでは問題が更に大きくなるだけよ。どうして分からないの?

 

「なるほどみんなと仲良く・・・ねぇ。そこは確かに間違っちゃいない。正しくて善意でそれでいて理想だ」

 

え?

 

「なら」

 

「だがお前が間違っている」

 

「ど、どういうことですか?」

 

「お前の言う目標は確かに正しい。だがお前はあまりにも無責任すぎる、故にお前自身が間違っているんだよ」

 

「ちょっと比企谷先生、どういうことだし!?」

 

三浦さんが比企谷先生に突っかかる。

 

「葉山の言うようにみんなで話し合いをする、ならその話し合いに誰が鶴見を参加させるんだ?」

 

そう、そういうことね。

 

「それは俺たちが」

 

「それが無責任なんだよ。そうなった場合、鶴見の周りからの印象は『高校生に助けてもらった悲劇のヒロイン気取り』ということになる。それでなくても、高校生に助けてもらって調子こいてる、くらいには思われる。更に言うなら、今後話し合いの場を作ったとしてその時お前たちはいないんだ。その時はどうする、まさか鶴見のために学校を休むんじゃないだろうな」

 

「・・・」

 

絶句していた。無理もない、私も同じような気持ちだ。彼の言ったことは推測の域を出ないが、可能性の高い話だ。それでなくても、昼間の彼の行動で鶴見さんは更に悪意に晒されていた、それを踏まえれば更に可能性は高くなる。

 

「雪ノ下、お前はどうしたい?」

 

「・・・私はみんなと仲良くさせようとは思わないわ。私はそういった結果ではなく、過程として『鶴見さん』自身に介入しようと思っているわ」

 

「ほう」

 

「彼女がなにを求めているかは分からない、だから彼女の話を聞き、彼女が私たちにどうしてほしいのか、それを聞いてから行動に移そうと思うわ」

 

「・・・悪くない。だが雪ノ下、その行動もまたある種の理想だ。だとするなら」

 

比企谷先生は少し鋭い目つきになり

 

 

 

 

 

 

 

 

「自分を『救う側』だと、そういう思いは全て消せ。でなければお前はただの自意識過剰だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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