平和な日々が二ヶ月ほど続いた
椿の必死な説得により 腰には椿がちゃんとついている
なんで持ち歩かなきゃいけないのか
まったくわからなかったけど
ともかく、この二ヶ月は平和だった
どの位平和かというと
妹紅をからかったり
文と取材をしにいったり
にとりと発明したり
妹紅をからかったり
天魔の部屋をかたしたり
妹紅を箱にインさせたりだ
「はぁー 疲れる」
俺は今、山を登っていた
なんとなく そう、なんとなくである
「にしても、寒いな」
息が白い それもそうだろう 冬だからな
うおぉぉぉん
ぞっとするような感じ 悪寒が走った
目の前の‘空間’に筋、亀裂がはしった
ぴょこんと可愛いリボンが端にある
「へっ、イキナリのご登場ですね 八雲紫さん」
わっ と広がったその亀裂からぎょろっと目がのぞいている
「ふふふ 私のこと 知っているのね」
そこの亀裂の向かい側 そこにはもちろん スキマ妖怪 紫がいる
俺は、口を開く
「冬眠を差し置いての御用時とは、なんですか?」
「ふふふ、貴方は一体何をどこまで知っているのかしら」
「その事を問いただすために現れたのでしょうか? 違うでしょう?」
「そうね 違ったわ 頼みたいことがあるのよ」
俺をさらっておいて 一体何なんでしょうね
利用されるのか はぁ
「なんですか?」
聞かないと話は進まない 聞くだけ聞いてやろう
「村を妖怪が襲ってるのよ 妖怪が急に増えてね 村の賢者も不死鳥も 満身創痍よ」
妖怪を入れてるのはお前じゃないのか
にしても村がねぇ お世話になったし いこう
てか、慧音と妹紅弱くね?
戦いはそんなに必要じゃなかったのかな
「わかった そこまで送ってくれないか? 」
「ありがとう 言われなくても送ってあげるわ 私は、状況しだいで援軍を連れて行くから」
ふぅ と声が遠くなる
ぎょろっとした目に見られながら 俺は人里へと降りた
「ぐぁっ」
「慧音!!」
妹紅が叫ぶ
慧音が数十匹の妖怪に囲まれている 妹紅は手が出せない
村人は無事だが 慧音がすごい
体中 青アザだらけである
妹紅は慧音が人質になったから手が出せないのか 納得
慧音も数で負けたみたいだし どことなく安心
さてと やろうか
「てめぇら なーにしてんだ」
俺は地面に降り立つなり そう言う
「蒼真 着てくれたのか 慧音が、慧音が」
妹紅がそう言う
「くくく そこの雑魚 てめぇは引っ込んでな 俺らぁこの守護神様とその白髪を食い漁りたいんだからねぇ」
いい子は帰れ とか 周りのが次々に言う
俺は 大きく息を吸った そして
「あっははははははははははははは」
笑った
「てめぇ なに笑ってやがるんだ!!」
キレやすそうなのが一匹叫ぶ
ガチリ そう頭の中でなにかが外れた音がした
心が塗り変わる 前、屋敷追放以来だ
妖力の量が目に見えて変化する
さっきのを1とすると100ぐらい
そのくらいである
「今か 楽しかったぞ 蒼真」
そう 椿の声が片隅で聞こえた
しかし狂乱した俺には もう何も届かない
「ひさしぶりだぜええええええ 表に出るのはよぉ」
俺じゃない俺が叫ぶ
妖怪は身構えようとするがもう遅い
瞬時に鎧を構成 右手で椿を取る
そしてーー
椿が心臓の位置、左胸に深く突き刺す
なぜ刺したかはわからない いや手が勝手に動いた
その椿は、体の中に何かを残して溶け、両腕のほうに流れていく
どこかで見た文字 いや文章が鎧の周りをうずまく
この文は形を変えて、意味の無い配列を生み出す
それがとけるように鎧に溶け込む いや‘引き込まれる’
椿だったものは右手と左手を鋭いエッジに変えていく
鎧の形状があらあらしくなる
もはやこの世には妖怪を含めても存在しない そんな化け物が舞い降りた
何も寄せ付けない強靭な鱗
禍々しく生える無数の棘
暗く沈んだ黒い瞳
その体を軽々と上げる強靭な翼
全てを噛み砕く強大な牙
一振りで物をなぎ倒す強大な尻尾
踏み出すたびに地鳴りを起こす足
空をも切り裂くエッジ
言うならばバーサーカー もうとどまることは無かった
一歩を踏み出したかと思った直後
数匹の頭が宙を舞う エッジが閃光のようにその首を刈り取っていた
そのまま、軽やかにターン 尻尾で何人かの体を叩き潰す
その背にギラリと光ったのは鱗よりも一回り大きい剣のようなビット
ビットはその背の近くにいた妖怪の四肢をもぎ取った
声さえ出せぬ状況になりつつある
しかし 獣は叫んだ
「グウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
10のビットが踊るように縦横無尽に駆ける
「ううぅあああああああ」
「いたいいいいい」
「いやだああああああああああああ」
そんな声が上がる
そのうちの一匹の頭 そいつを
齧りとった
残った体をその他に投げつける
口に含んだ頭を俺はゆっくりと飲み込むと 足元に向けてニードルを繰り出す
まだまだ 虐殺は終わらない 終わらせない