早朝、朝靄に射す朝の木漏れ日
その冷たい光りの中にたくさんの動物達が照らされていく
午前6時半のこの薄明かりの下で俺はテントから出た
中ではまだ慧音を始めとするキャンプの御一行が寝ていた
それを横目で見てから少し笑って、朝の散歩に出かける事にする
ザッザッと、地面を蹴る音が響く
ひんやりと澄みきった空気が鼻腔をくすぐり肺を満たす
朝早くから、鳥たちは獲物を探し
夜の世界に生きる虫やフクロウ達は、ねぐらへと戻っていた
昨日少し残していた肉の欠片を、即席の釣竿に括り付けて川へ放つ
近くの岩に腰掛け、束の間辺りを見渡した
足裏にトントンという何かを叩くような振動が伝わる
それは、少し先にいるウサギさんからのお誘いのようだった
昨日の人参のカケラを置くと、家族か友達かは知らないが二、三匹引き連れてそのまま持っていった
丁度視界から外れた辺りで竿に重みがかかり俺は竿を引く事も、リールを巻く事も無く
釣り糸をその魚に絡ませて捕獲した
名前は知らないが美味しそうな魚だ
それなりに大きいし、朝飯には丁度良いかな?なんて思いながら来た道を戻る
道中、狐にあったりしながらもお互い避けることなく歩いていった
午前7時過ぎごろ、キャンプ場に戻ると慧音と橙は起きていた
早起きの癖が付いているらしい、藍の教育の良さが見て取れるようだ
「蒼真、朝早くからどこに行っていたんだ?」
「ちょっと、男のロマンをね」
と、ちょっと格好つけながら魚を見せる
それなりに驚いてくれたようで嬉しかった
食べられそうな野菜も山からお裾分けしてもらい、焼き魚と野菜の味噌汁、白米
なんていう「The和食」が並んだ
その匂いに引かれて、残りも目覚めて朝食となった
ほんのり苦いのが良いというか、懐かしい感じがする
おふくろの味ならぬ山の味か……
「美味しいな」
「そうだな、皆と食べるからもっと美味しいしな」
慧音が笑顔で返してくれる
あぁ、いいなぁって凄く思ったよ
例えていうなら……そう、家族
俺がいて嫁がいて子供がいて、笑って過ごしてお互い支えあって
「家族みたいだな」なんて、ポツリと言葉を漏らした
すると、慧音は少し赤くなりながら「じゃあ蒼真がお父さんか」とイタズラするみたいに言った
そんなこんなで食事も終わり、テントを片付けた
今度はルーミアとチルノも手伝ってくれたよ
「よし、じゃあ行こうか」
俺と慧音で先陣を切って森の中を歩き始めた
朝、響いてた足音が今は8倍になって聞こえている
そんな些細な一つ一つに、喜びを感じざるおえなかった
「なぁ、蒼真?」
ふいに慧音が話しかけてきた、なんだ?と言って返答を待つ
すると、一つの提案をしてきた
「……蒼真さ、寺子屋の教師になる気は無いか?」
「教師?今も教師だろ?」
「ああ、そう言うことじゃないんだ。今は課外授業の講師……要はアウトドア専門だろ?
私が言っているのは、普通に授業する毎日顔を合わせるような……本格的な先生さ」
そういうことか、と俺は納得したが……少し疑問がある
俺自体が、そこまで勉強できるわけじゃないのだ
「なぁ、慧音……」
そう言おうとして口を開いたのだが、心を読んだのか
はたまた、顔に出ていたのか……真意は分からないが慧音は俺の言葉を塞いだ
「蒼真はアウトドアが好きだろ?」
「あっ、あぁ」
「私が教えるのはあくまで文字、計算、歴史、万物の理なんだ
お前が言う所の国語算数理科社会なんだよ」
確かにそうだな、小学校で皆が教わる4教科
けど、それとアウトドアに何の関係が?
「でもさ、それが最低限の生活を強いられたときに使えるか?って言われたらどうだろうか」
「……確かに、使う所がほとんど無いな」
「だろ?だから蒼真にはさ『技術・家庭・野外活動』なんかの生活についてのモノを中心に教えて欲しいと思うんだ」
なるほど、生き抜く知恵を教えるわけか
確かに幻想郷に着てから様々な武器を試作したり、模索したり
今では火起こしに水の濾過なんかは、バッチコイだな
「でも、それなら慧音も教えられるんじゃないか?家庭科とかはさ」
「確かに『知識』でなら教えられるな、でも子供達に必要なのは好奇心とそれに似合うモノ
つまりは体験者が不可欠なんだよ」
……確かに、そうかもしれない
火起こしの説明を受けたとしても、実践するかしないか
生で見るか見ないかでは十分変わってくる
「少しだけ、考えて見てはくれないか?」
慧音の言ってる事は正しいし、納得できたな
でも……
「なぁ、慧音?」
「ん?考えてくれたか?」
「妹紅は一緒じゃ駄目なのか?」
「妹紅か?いいと思うけど……なんでだ?」
アイツは輝夜を恨んで怨んで、それで蓬莱人になって
心の傷があって、人とも関われなくなって
「アイツは山菜取りとか、アウトドアに長けてるからな
俺のしたこと無い事は妹紅がおしえ……」
「って訳じゃなくて、『人と関わって欲しい』とか思っているんだろう?」
……ははは、表面上の理由を言ってたんだけどなぁ
「なんでわかったの?」
「なんでもなにも、顔に書いてあったさ
それに、妹紅へ対しての其れは私も思うところだからな、賛成だ」
妹紅は人間からの感謝の気持ち、其れが一種の支えになっている所がある
でも、それじゃ駄目だ。感謝と言うのはされる一方じゃない
信頼関係……妹紅から人里へ関わることが必要なのだ
人間を護り、それによって明日を生きる
周りの目、一種の嫌悪感からの脱却は果たせている
なら、次のステップをお節介であるかも知れないが友人として、踏ませてやるべきではないだろうか?
関わりとは、そう言うものだ
「今日はなんだろうな、蒼真の考えが手に取るように分かるよ」
「俺が慧音から感じるのは慈愛だけなんだけどな」
なんて言って笑うと、森の出口が見えた
其処を抜けると、まったく見たことの無い場所が広がっていた。
来る事なんて無かったからだろう
「最後に聞くけど、なんで妹紅を働かせたい理由、嘘を付いたんだ?」
俺は其れを聞いて少し笑った
「理由はどうであれ、狙った方向に転がってくれれば良い
それを俺と妹紅の関係を深める為じゃなく、人里と妹紅にしたかった
ただ、それだけさ」
俺は慧音から顔を背けて6人を見た
結構疲れている様子……まぁ、4時間位ずっと歩いてたからなぁ
「なぁ、皆。外の乗り物に興味ないか?」
「「「「「乗り物?」」」」」
「良くわかんないけど、アタイ乗って見たい!」
「オッケー、ならご期待に添えまして」
俺は土を、石を、金属を巨大な車に変形させていく
無論、コレだけの大人数なら乗れるような車は限られてるだろう
目の前に出来た大きい車は、そんな要望に添えられるようなキャンピングカー
もちろんリュックの中に座布団ぐらいは入れてあるぜ
6人からはおおぉーと言う声が上がり、我先にとチルノが乗り込んだ
後ろの椅子にどかっと座って楽しそうに話し始める
俺は慧音の手を引いて女子席に座らせて
俺も操縦席に座って勢い良くアクセルを踏み込んだ
車が走る道だけは、綺麗に均されていく
映り行く景色に目を輝かせる6人と笑いあう2人を乗せた車は
見慣れた人里へ走っていく……