「ねぇ、蒼真?」
久しぶりに見るPC、PSP,DS等の数々に目を踊らせていると輝夜が声を掛けてきた
「ん?どうした?」
なんて、少しそっけないような気もするが返事をする
だって、紫に頼んで頼んで頼んで入手した青春恋愛野球ゲームは、この場でしか出来ないかもしれないのだから
「私は昔、たくさんの求婚を受けたのよ」
「かぐや姫の物語……竹取物語だっけか?ああ、知ってるよ
蓬莱の玉の枝、火ネズミの毛皮だとかを取りにいかせたんだろ?」
「ええ、全員が全員ものの見事に偽物を持ってきてくれましてね」
「求婚を断るための無理難題な方便、見つかるわけは無いだろ?」
そういいながら俺は庭先の地面から7色の綺麗な宝玉と金銀の枝を抜き取り合わせる
それを輝夜の目の前でくっつけて見る
本当に美しい七宝の枝。普通はそう見えるだろう
億万長者が何万、何億と言う金をつぎ込むかもしれない
それこそ、偽者とは気づかずに……いや気づいてもだ
だが、俺や輝夜。幻想郷中の能力者なら『なにか違う』と分かってくれるかもしれない
そう、この偽者には「息づいていた証」が無いのだ
生きていたからこそのそのもの独特の感覚、空気。そして歴史
それが感じられない時点で、たとえダイヤの塊であろうとも、俺らからしたら単なる綺麗な炭と同じ
それこそ燃料に使える炭のほうがいいのかもしれない
そんな事を考えていると、そこの鉢植えをすっと指差す
悲しい色をした盆栽……けれど、こちらの方がよほど綺麗に見える
なんとなく、輝夜に「それに触れてみなさい」と背中を押されるような気がして、俺はこの手で幹に触れた
呼吸。息づいている事の実感。まさしく生命の息吹とでもいえるそれが、脈動が伝わってくる
すると、その木は色を金、銀、瑪瑙へと変え美しい玉を実らせ出す
これが、本当の蓬莱の木か……盆栽だけど
「その偽者とは、比べると失礼なほどハッキリしますね」
「だな、ってか輝夜。話し方が色々違和感あるんだけど?」
「べっ、別にゲームの影響だとかそう言うことは無いのよ?」
良く聞く肯定でござんすね
「まぁ、話し方の違和感は置いておいて
なんで昔の話なんか持ち出したんだ?退屈なお前のつまらない歴史
たんなる嫌な思い出、見たいな感じなのかなぁ?なんて思っていたんだけどさ」
なんて苦笑紛れ目で言うと、何処からとも無く綺麗な扇子を広げて口元を隠した
「なぜ……と言われると困るけれど。そうねぇ、暇つぶしに一つ、貴方にも難問を出して見せるわ」
さすが平安貴族のたしなみか?と思えるほどの着物裁きで輝夜は正座すると、再現するかのように話し出す
「蒼真……と言いましたね、貴方にはこの難題を承っていただきましょう」
「ははっ、かぐや姫様の為ならばこの身を賭してでも必ずや手に入れてまいりましょう」
正直、ノリがいいのは好きだ。
右手で黒髪黄色リボン長髪の方の画面でセーブすると、PCの電源をシャットダウンする
「そうね、貴方にはコレが相応しいわ
ーー私を不思議な気持ちにさせる事ーー
愉快、痛快、妖怪君の貴方なら難しくは無いんじゃないかしら?」
「不思議な気持ち?……むぅ」
少し考える、不思議な気持ちとはなんだろうか?
平穏な、将棋を指すような穏やかな暮らしをしてきた輝夜だ
それこそ、逆に新鮮なものが多いのかもしれない
……
俺の脳裏に浮かぶのは、それこそ今までのゲーム脳が繰り出す答え
恋心、恋する気持ち。それを輝夜に持たせればいいのだろうか?
いやいや、ギャルゲーやエロゲーならそれでいい
しかし、主人公のレベル(俺)はまだ12だ
輝夜なんてラスボス辺りが丁度いいというのに
勝て気がしないよ、蝙蝠や清涼色粘着生物でお腹も経験値もいっぱいだよ
「不思議な気持ちねぇ。ちょいとわからないからなー」
「まぁ、考えるよりも行動したほうが得策では?」
「一気に知的キャラ昇格か、おめでとう
それじゃあーーな、少しお話でもしようか。」
「お話?」
ああ、少し昔のお話さーーなんて言って俺は話を始めた
いつかに見た話に俺のアレンジを加えたような話だ
『花の病姫』
昔々っても、そうは離れていない
ある王国のお姫様のお話さ
その子はずっと体が弱くて、両親も西へ東へ大忙し
身分が高いってだけで、同年代のお友達は出来ないまま
ただひたすらに本だけを読むような暮らしだった
彼女の事は花瓶の花だけが見つめていたんだ
医者は始めから治らない病であることを知っていた、でも隠したんだ
なぜだかわかるか?
ーーわからないわ、なぜ治せないのかも
人間完璧じゃないからな、どこかに必ず欠点がある
それが時に大きな病を生み出すんだ
でも、治るって思っていれば治るかもしれない。思い込みの力は凄いのさ
ーーそうなの……続きを早く
ああ、でもお姫様はどんどん難しい本を読むようになって
その内知ってしまったんだ、治らないって
自分が信じた本が、自分の希望を破る瞬間。
それが辛くて悲しくて、彼女は段々と凍り付いてしまった
最初は少し悲しくなるだけだった
でも、段々それは大きくなっていって彼女は心を封じてしまった
いつ死ぬか分からないって言う闇と不安から逃げるように
ーー人間は本当に弱いんですね
彼女はそのうち召使にも冷たくなった
文句ばっかりのわがままな、周りから少しずつ避けられるようになって
そのまま、彼女は部屋に1人
本も何も無い、ベットの上に寝たままの
本当に独りぼっちになったんだ
でも、その時に目に入ったんだ
毎日、自分を見ている白い花があることに
ーー最初にあった花ですね
そうだ、ある日素っ気無い召使に聞いたんだ
「このお花はなんなの?」って
そしたら召使は答えた
お嬢様には覚えはありませんか?って
隣の国の王子様が毎日毎日送ってくださるのです。って
お姫様は思ったよ、1人じゃなかったのかなって?
その時、別の召使が部屋に入ってきた
その後ろには見たことも無い男の人が立っていたんだ
彼女は彼に言った
私は貴方なんて覚えてない、私は直にでも死んでしまうの
哀れんでいるのなら、今すぐにでも姿を消して
それに彼は答えた
哀れみなどありません、今はシアワセでいっぱいです
彼女は驚いたよ、なんでってすぐさま聞いた
ーーー『貴方に会えたからです、ずっと会いたかった』
俺はそこで言葉を区切ると直に別の話に切り替えた
そこから先の話を聞きたがる一方だったけど俺は話さなかった
この話には此処から先は無い
聞いた人がハッピーエンドにするのかバットエンドにするのか
全ては聞く人次第なのだ
「輝夜、今日の話はどうだった?」
帰り際に輝夜にたずねる
「私の負け、かもしれないわ
あの話を今度兎にしてみ様と思うの、個人っていうものに少し、興味がもてたから」
その言葉に頷いて俺は永遠亭を後にした