東方黒鉄伝   作:荒無 時竜

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最近、塾が忙しい……
今、新しい挿絵かいてます
前回とは違う鎧ですので、少しばかりお楽しみにww


薫る風

「相変わらずだな」

少し前の夏の日、その時も見た地上の太陽

華麗な黄色の絶妙な美しさに見せられて、俺は懐かしくも此処に来ていた

晩夏だと言うのに、まだ最後の元気を振り絞る向日葵達

それは、彼らの主人の愛情を表しているようでもあった

「いい黄色だな。綺麗だよ」

目の前にある向日葵の葉を優しく撫でながら俺は言った

誰でもなく、向日葵達に

フラワーマスターの花テクニックと言うものがあるのだろうか?

毎年毎年、人を惹きつけて離さない地上の太陽は後僅かながらの夏をサンサンと咲き誇るのだろう

 

「綺麗でしょう?」

「ああ、凄く綺麗だ。無数の太陽が輝いている様だよ」

「ふふふ、じゃあ栄養になってあげて?」

ギイイイイン!!

鋭い物が俺の鎧に触れた

劈く様な金切音が辺りに響き渡る

「久しぶり……なんて言っても覚えてないか」

「いいえ、覚えているわ。のこのこ来てのこのこ帰った妖怪でしょう?」

立ち上がると、俺の首元にぐっと傘の先端が突きつけられた

無慈悲に傘に力が入るのがわかる

けれど、傘は動かない

力が強まっても、動かないのは変わらない

理由は簡単、俺の鎧が硬いからだ

今回は前回より長く居させてもらおうかとおもって、何時もより硬い『合金』にしてきたのだ

「くっ、死になさいよっ!!」

「えー、美少女に殺されるのは本望ですけど……出来れば一緒にお茶が飲みたいなぁ」

途端、一気に三倍近い力が傘に入る。べこんと鎧が少し凹んだ

あーあー、嫌だなぁ。なんて思いつつ俺は指を鳴らす

そこかしこの露出した地面がグニンと曲がった

幽香は直に後ろに飛びのいた!俺の目の前に土色をしたジャラリとした物が落ちる

 

「さすがは花妖怪の幽香さん、反応が他とは違う!」

「アンタねぇ、馬鹿にしてるの?だったら今すぐ此処で殺すわよ?」

「釣れないなぁ、幽香さんのお手伝いなら好きなだけしてあげられるのに」

俺は右手をぐっと上げると、地面からカリウムやリンが浮き出た

植物三大栄養素、根と花を良くする物である

無論、多すぎてはいけないが少なくても育たないなんていう例のアレだ

「……少しは役に立ちそうだけど、正直愛情込めて花を育てないなんて極刑よ」

傘の先端がキラリと此方を向く

其処には先ほどまでは無かった光が凝縮されてーーー

刹那の光線なって、俺に向かって走り出した

真っ白に輝いた光線は俺の鎧を照らし、花畑を照らした

避けるのもいい、だが花畑に飛び火しちゃ駄目だろう

逆切れされても困るし

「いいや、ガード」

俺の声と共に、目の前に土で出来た盾が形成される

 

それは光線に当たると直に紅く染まった

しかし、真下の地面真横の地面から供給され続ける土に、無限とはいえないスペルカードの方が先に折れた

酷い土煙の向こう側、少し荒れた息をする幽香が立っている

「……お茶ぐらい、あげましょう」

「どういう気変わり?」

「貴方の後ろの向日葵が『風一つ吹いてこなかったよ』って言ってるのよ

私は花に差し掛かる寸前に光線を消すなり曲げるなりする自信はある、だから撃ったのに

花のため……光線全部を受け止める人なんて始めて見たわ」

嫌味っぽい話し方だが、結構お褒め頂いているようだ

「ついてらっしゃい」なんて言う幽香の後を俺は苦笑しながら小走りした

 

質素な家、それが最初の印象

綺麗に手入れされた如雨露やスコップが印象的な綺麗な部屋

赤いチェックのスカートがとても良く似合っていた

「それで、貴方はどんな能力を?」

「そこですか?」

「ええ、其処よ。花に利があるのなら聞いておいた方がいいから」

笑ってお茶を飲む幽香

本当に花が好き……いや、愛しているのだろう

向日葵だけじゃない、そのことが家を囲む花全体から伝わってくる

「俺の能力は『鉱物を操る程度の能力』です。土、水、金属が主ですね」

「……そう、なら土を耕すときなんかは便利そうね

水も引いてきて欲しいし……定期的に通う事を許しましょうか」

ズズズッと、お茶をすする幽香

俺も釣られて飲む

緑茶……確かにそれだ

けれど、奥が深い苦味で温かい美味しさで

表現がしがたい、いや表現しきれないような……家族の温かみのようなものを感じた

 

「凄く、美味しいです」

「ふふっ、味だけは良く分かるようね」

そういって緑茶の茶葉、その生涯を語ってくれた

種まきのときから、摘むまでのささやかな一時を

とても嬉しそうに、愉快に、楽しげに

花と話せるような、そんな幽香にとって大きな大きな庭なんだろう

そう深く納得した

だってさ、植物を語る幽香って、その綺麗さを実感させるような

正直に言えば可愛い。その一言に尽きるんだ

「それでね、その時あの子ったらね」

笑いながら、向日葵、菫、蓮なんかの花の話を続ける幽香

小窓から吹く風が、豊かな花の香りを運びながら、小さく髪を揺らせた

もう少しだけ、夏で居てくれ

 

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