東方黒鉄伝   作:荒無 時竜

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HAPPYより

「おーっす」

ガラッと引き戸を開ける

すると、白髪二刀流おっちょこちょい庭師がーー

「今、変な事考えましたよね、考えましたよねっ!!」

「おっ、落ち着け妖夢。はい、これおみあげ」

俺は笑いを必死で抑えながら妖夢に2kg程の菓子折りを渡す

が、妖夢が重そうだったので結局俺が持ち幽々子の居る部屋に案内される

「こんにち……寝てるのか」

すーっと開いた戸の向こう、其処にはねっころがっている幽々子が居た

お昼寝一つにも、風情があるなぁなんて思いながら、隣に腰掛ける

ちりーん、と風鈴が鳴り響いた

が、鳴らせたのは秋風だろうか?あの真夏の熱気はもうそろそろ居なくなってしまいそうだ

風が、吹いている……

ふと、俺は気がついたかのように袋を漁った

中にあるのは何時ものお餅。右手で摘んでひょいっと食べた

口いっぱいに甘さが広がる

「やっぱ旨いなー」

手についたあんこを舐めながら言う

妖夢が同席するにはもう少し時間が要りそうだ

「ううぅん~」

ごろーんと幽々子が転がってくる

そのままどしーんと俺の膝にぶつかった

「ふにゃっ」と小さいうめき声

口をぽっかりと開けたその姿に、すこーしイタズラをしたくなるのは男の心だろうか

俺は先ほどと同じあんこもちを手にとって、幽々子の目の前にすーーっと……

 

「はむっ!!!」

「のわっ!」

刹那、物凄い勢いで目を見開いた幽々子が右手ごと餅に齧り付いた

手を餅と一緒に舐められ尽くすとは、一生に一度も無い感覚だろう

100回輪廻しても会える気がしないね

もがもがと相変わらず手ごと餅と格闘する幽々子

やめてください、色々駄目になってしまいそうです

「ぷはっ……ん?あら蒼真じゃない」

「ファッ!気づいてなかったの!?」

「?逆にいつきたのよ~~あ、美味しそうな御菓子♪」

話そっちのけでお菓子にいってしまった

恐るべき食いしん坊、もう1.2kgぐらいじゃないかな?

俺は感心してるのか呆れているのか、自分でも良く分からない感情に支配された

「ほれへ、ひょうはほうしひゃほ?」

「良くわからん、食い終わってからにしろ。

口にあんこついてるよ」

指でとって舐める

……は?間接キス?

お前、んなこた気にしてられねぇよ、あんこがもったいないだろ?

「んく、それで今日はどうしたの?」

「いやな、幽々子と妖夢が見たいなーってさ」

「見たいなーって、何よ」

「幸せそうに食べてる幽々子と働く妖夢が見たかったんだよ」

「ふーん、そう言うものなのかしら」

ああ、なんて言って俺は頷く

無論癒されに来た、最近色々と面倒臭くて。

たまにはゆっくりしたいなーと思った

 

ただ、それだけ

目の前で美味しそうに御菓子を食べてる

俺も見ながらお菓子を食べる

妖夢も仕事が終わって一息ついて

お茶飲みながら三人で……そしたらほら、幸せスパイラル

甘いものは凄い、笑顔は凄いのです

「どうしました、蒼真さん?」

「なにか、ニヤニヤしてるわよ?」

「んー、甘いものって凄いなってさ」

知っていたハズだけど、改めて思うんだ

こういう時間は、ずっと続いてくれたらなって

この世界には同じくらいの幸せと不幸はないんだ

不幸の量があまりにも多すぎるから

でも、幻想郷は皆が笑顔

きっと、自由だから。外の世界は自由なんかじゃないから

自然を捨てて文明を取ったから、日本も世界も少しずつ幸せを失っていったんだ

だからこそかな、幻想郷はそれに反して幸せが舞い込んでくる

全てが平等に、自由に。人間の世界では出来なかったその二つの両立

それが確立される自然に委ねる姿。

「2人とも、今度散歩にでも行かないか?」

「散歩……ですか?」

「ああ、もう直秋だろ?美味しいもの沢山、食べ歩こうじゃないか」

「いいわね~、お芋にお魚、いっぱい美味しいものがあるわね~」

「幽々子様がこういっていることですし、ぜひ」

了承の言葉を耳に、俺は頷いて三人で一つずつ。最後の抹茶もちを口にした

甘さと苦さが口いっぱいに広がる

 

「「「美味しい~」」」

 

口を揃えて言った言葉は、どれだけ高級でも平凡でも

皆が平等に言える言葉

幸せな言葉で嬉しい言葉で、大切な言葉

皆が笑い会えるのも、まずは此処から

誰もがハッピーで居られる事を、冥界からお祈りします

ちんけでマヌケなたかが1人の妖怪だけど

いや、妖怪だからこそ?人間だったからこそ?

詳しい事はいえないけれど、美味しいもの食べて

ずっとずっと、幸せに……

「じゃあ、妖夢。今日は夕飯奢っちゃいましょう」

「はいっ!腕によりをかけて」

「おっ、ありがとなっ!」

美味しく楽しく幸せにっ!!

 

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