「ほい、霊夢」
頭を撫でながら手に三枚ほどお札を握らせる
あと、みあげの入った袋も
二つを大事そうに抱えた霊夢は真っ赤な顔で俯いていた
もう少しで完全に秋と言うところまで来た
緑色だった草木が少しずつ、夕暮れのような赤へと染まっていく
前よりも幾分涼しい風を、縁側に座って受けていると
「はい、蒼真。少し熱いから」
とお茶が差し出される
それを受け取ると、霊夢は俺の横に座って自分のお茶を飲んだ
「最近、景気が良いらしいじゃない」
「大体は外のおかげだけどな、ラジオと言い先生と言いさ」
「まぁ、私もこーやって色々貰えるから助かるんだけどさ」
お安いご用さ、なんて言って熱いお茶をすすった
質素だが、霊夢の温かさが篭った神社自慢の一品だな
「ふぅ」
湯気のこもる息を吐いて、ゆっくりと空を仰ぐ
真っ青な空、そこに浮く白々とした雲たち
流れる時間の中、一人だけ止まっているような感覚
「蒼真、今日の夕飯ご馳走しようか?」
「ん?いいのか?」
「今日ね馬鹿魔理沙が冬でも無いのに鍋が食べたいって
それで何人か来る事になってるのよ」
「鍋かー、そう言うことなら頂いていくよ」
そういいながら俺は大きく欠伸をした
涼しい風に温かい日。まさに睡魔の好きそうな感じだ
「ふふっ、寝る?」
「ん~、いや。夜寝れなくなるしな」
「なら、起こしてやるよ」
3人目の声、それと同時に頭にチョップが飛んできた
程よい痛みが頭に入る
「う~、それは肩にやって欲しいよなぁ」
「またこったの?」
そういって呆れ顔をする奴を、俺は首をそらせて見る
「よ、萃香」
「久しぶり~、お酒は?」
「萃香、毎回集らないの」
霊夢が半場怒ったように言うが、俺は構わず酒瓶を出す
無論、肩たたきの報酬としてだが
光る白みがかった液体が揺れるのを見て、萃香は唸る
「これ、結構高いモノじゃなかったっけ?」
「いつもより頑張ってもらおうと思ってさ」
首を軽く捻ると、ゴキキッと間接の音がした
呆れたような、嬉しいようなそんな表情の萃香の手が肩に伸びる
小さな手だが、もんで貰うとその力強さがよくわかる
首の付け根中心にコリコリと揉み解されていく
「気持ち良いかい?」
「少し痛いけどな、そのぐらいじゃないと効かないし」
ぐっ、と親指が肩に押し込まれる
一瞬、かなりの激痛が走るが泣き言は言ってられない
なんてったって、こうしなきゃ治んないから
「蒼真、アンタ肩こるの早すぎでしょ」
「いやぁ、ラジオMCがこんなに辛いとは思ってなくてさ」
パァン!と肩が思い切り叩かれる
激痛だが、それと同時に笑顔の萃香が「おーしーまいっ」なんて言うから痛みなんて感じない
まぁ、言う所コレがお約束なんだよなぁ
「ほい」
「さんきゅー」
腰に手をあてておっさん見たいにぐ~っと酒を飲んでく萃香
その様子を笑ってみていると、霊夢がすすす~と来て
ごろんと、俺の膝に、寝転がった
「れっ、霊夢?」
「私、後で料理を頑張るんだからさ、それなりの報酬があっても良いかなと思って」
……確かにそうだな
「コレがご褒美になるんだったら、いくらでもどーぞ」
ゆっくりと髪を撫でていく
ツヤのある黒い髪、やっぱり綺麗な髪の子は良いな
「おやすみ、霊夢」
「おーっす、霊夢。お、蒼真に萃香」
「魔理沙にアリス、早苗か。こんばんは」
「今日はお鍋だと聞いて、外出許可を頂いてきました~!」
「魔理沙に連れられて、仕方が無くよ」
「まーまー、とりあえず飲もーよー」
萃香の酒の誘いを取りあえず一回止めて、食卓を囲む
真ん中に熱々のお鍋が煮えている所だ
「全員、お箸持った?」
「「「「「持ったよ」」」」」
「わかった、それじゃあ」
「「「「「「頂きまーす」」」」」」
刹那、3つの手が鍋の上へ躍り出た
一つは霊夢、一つは魔理沙、一つは萃香
狙うのは、一番良く煮えているお肉
6の箸が一斉にその肉を摘んだ!
「ごめんなさーい」
が、それをすり抜けるようにしてヒョイっと早苗がお肉をとる
凄く美味しそうな顔をしていた
「「早苗~~!」」
あ、コイツ奇跡使ったな見たいなそんな感じ
萃香は2人が起こってる間に美味しい所を次々掻っ攫っていく
俺は豆腐と葱と白滝があれば良いか、なんて思いながら焼き豆腐を口に含んだ
良い焼き豆腐である事はさることながら、俺が驚いたのは汁の味付けである
きっと、汁だけでは間違いなく濃いであろう
だが具を食べたとき、その具本来の旨みを消すことなく
逆に味に負けることも無くという絶妙な味付け
「ん~、霊夢。良いお嫁になるなぁ」
「ふぇ!!」
ぶふっ!と魔理沙と早苗が一気に変な音を立てた
2人とも、汁が気管送りにされたらしい
霊夢は今まで見た中で一番赤い顔をしている
「おっ、お嫁さん……!?」
「うん、こんだけ旨いんだ。惚れ込む男は多いと思うぜ?」
「ほっ、惚れ!?」
「蒼真~、霊夢は蒼真に言ってもらえる事が嬉しいんだと思うけど~」
萃香が酒を飲みながらふら~と言う
2人は相変わらず咳き込んだまま
アリスはそそっかしく咳き込んだ二人の世話をしながら
美味しい所を、ちょっとづつ掻っ攫っていく
「俺に言われるのが嬉しい?」
「うんうん、霊夢は結構蒼真の事がーー」
「あ、あ、わああああああああああああ!!」
ガタン!と大きな音がして身体を強張らせる
そのまま首を捻ると、そこに
ーー宙に浮いた土鍋が迫っていた
「ごっ、ごめんなさい」
「平気だよ」
あの後、迫り来る土鍋と汁は能力で止められたのだが
「「わぁ~」」
具だけ、華麗に俺に降り注いで畳と俺の服がめちゃくちゃになった
仕方が無くお風呂だけ借りて、この日は神社を後にした
ただ、土鍋を上に放り投げた瞬間の
あの真っ赤な霊夢の姿を俺は一生忘れる事は無いだろう