じゃあな、妹紅
そういった後の夜道は随分と長く感じた
竹林が鬱蒼と月を仰ぐように延びている
そういえば、明日は名月だと思い出す。なら永遠亭で月を仰がねば
まるで、竹たちのように……なんて言うつまらないジョークを笑ってくれる人も、呆れてくれる人も居ない
本当に孤独感が募った
最近は本があるが、何も無いときは本当に孤独感が残る
ようは、寂しいのだ。誰かと居たいのだ
すると、近くの茂みの向こうに一つ、人影が見えた
ぼんやりとだが見える輪郭は、その上に大きなものが被さっている事を分からせてくれた
しかも、夜道に待ち伏せするかのような……だ
向こうは何時からか俺を待っているようで、うずうずと言う効果音が心境描写音がするぐらい身体を揺らがせていた
俺は、自分のほんの前に泥人形を作り歩かせる
「ばああああっ!!」
大きな声を張り上げて可愛らしい少女が姿を現した
月の雲隠れは解け、全体がしっかりと眼に映る
全体を水色とした少女、片目は緋色で傘を持っている
その傘で泥人形をがしゃんと崩すと、傘の少女は振り向きの絶妙なバランスで話しかけてきた
「ケケケッ……残念だなぁ……」
「小傘ちゃん、夜でも茂みじゃ目立つよ」
「だよねー、やっぱり後ろからかなぁ」
そういって顎の下に人差し指を当てる小傘、くそ可愛い
う~ん、なんて唸りながら可愛らしく腕組して悩む
「なんかいい案思いついた?」
「全然っ!!」
やはり、古典妖怪は頭も一筋らしい。ぼっと出て驚かせる、それが妖怪のあり方なのだろうか?
「……あれれ?私の名前、なんで知ってるの??」
「小傘ちゃんは可愛いからね、可愛い子の名前くらい知ってないと」
「……貴方、頭どうかしてるのかしら?」
ありがとうございます
「まぁね、じゃないとやってられないさ」
心の中ではありがとうございます連呼だが、口じゃあますます「変態!変態!変態!」とか
「馬鹿!エッチ!変態!」とか、言われて連呼してしまうに違いない
「ありっ?小傘、何してんの?」
……駄目な妄想の最中に予期せぬ奴がまた現れたもんだ
「おろろっ?ぬえ?」
俺は不安を胸に振り返ると、そこにはどーみてもUFOが浮かんでいた
「あーっ!えと……蒼真!」
「おいお前、忘れかけてんじゃねぇ」
後ろに真っ白な二つの鉄手袋を作って、頭をぐりぐりする
まるでスマ○ラのマスなんとかと、クレなんとかだが、気にはするな
ぬえは痛い痛い!といいながら手袋を振り払うと、耳の少し上を押さえながら叫んだ
「おい蒼真!痛いだろっ!」
「夜遊びしてるんじゃないよ!お前にイタズラされたいと思ってる罪袋が何人居ると思ってる!」
「罪……?がなんだか知らないけど全員腰抜かしてやるよ!!」
……お前ら、驚かしてだからな?決してアレするんじゃないからな?
いや、誤解させたいがゆえに言わせてるんだが
「いや、相手が多すぎるんじゃないかな?
まぁ、いいんだけどさ。小傘ちゃんももう帰りなさい」
「「ヤダ」」
「お菓子やったら帰る?」
「「うん」」
なんとも扱いやすい限りで……お菓子で釣られるのかよ
「だって、疲れたし甘いもの食べたい」
心読まれた……
ほいっと、クッキーをざらっと並べた皿を置く
最近、ラジオ経営にお金が入るようになってきて、提案者の俺に河童製オーブンが送られてきたのだ
将棋漫画なのに時々料理説明が載ってたりする漫画なんかを読んでる俺にとって、お菓子は割りと簡単なものである(あんこを除く
残念ながらチョコチップなんて気の利いたものは無いので、ほぼビスケットだが
ジャムは塗ってるから、まぁ許せ
「普通に美味しい」
「あんた、普通に旨いじゃない」
「ごめん、普通にっていうのが貶し言葉にしか聞こえない」
どーせ、聖の料理が美味しいんでしょう?ナズの料理は手際が良いんでしょう?
塩と砂糖を間違える星ちゃんに萌えるのは……此処じゃ俺くらいか
……まてよ?「お砂糖はどこですかー?」って料理中にどたばたしちゃう星ちゃん……
「「変な顔してるよー?」」
「すまんすまん、今すげえ美味しい事考えてた」
そういって、チラリと机を見るとクッ……ビスケットは数少なかった
詳細としては、焼いた後オーブンから取るの忘れてただけなんだけど
冷めて食べやすそうだし、結果オーライかな?
2人は、渡した麦茶をぐーーっ!と飲み干してカッとカップを机にたたきつけた
ひび割れたカップは一瞬で元に戻る
「あっ、折角困らせてやろうと思ったのに」
「俺の能力、結構便利なんだからな?」
こぼした時も、割ったときも、落としたときも……育児にピッタリ感満載!
「それじゃあ、ぬえ~。そろそろ帰ろー?」
「そーだな、帰ろうか」
おもしれぇ羽根と、べろ~んとした傘が開いた
一方はUFOに、もう一方は木の葉のように壁から下へ落ちていく
薄目を開けた玄武が、グアゥと一言呟いて2人は見えなくなった
きっと玄武のことだから、イタズラでもしたんだろう
俺は苦笑してから布団へ入って寝た
グウッと、玄武が宵闇で笑った
「覚えてろよぉ!」
「ううっ、着地失敗……」
家の真下に広がる平原
その中に2人、倒れこんだ少女が居た
突然、足に枷が付いて下に落ちていったのだ
寸前で取れたから、無事着地できると思ったら、なぜか下はぬかるみ
驚かせ屋が一本取られたってわけさ、ケケケケッ
一つ目の傘は愉快に笑う