東方黒鉄伝   作:荒無 時竜

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真夜中の尋ね人

身体を起こす……と、いっても上半身だけだ

風に揺らぐカーテン、真っ暗かと思っていたが少し太った半月が覗く

淡い光りに照らされて、感覚的に時間は二時ごろ

「草木も眠るような時間に、お客様かね?」

ゆっくりと頭を掻きながら、片目でドアの方向を睨んだ

ぶわっと、一陣の風がカーテンをはためかせ、白く透き通った光が差し込んだ

首のない、甲冑。

「ふふふっ、やはり上が見込んだことはある様で」

「はぁ、名前ぐらい名乗ったらどうだ?」

危害がとりあえず無さそうな事は、一言で分かった

現に、背に負っている剣の柄に触れてはいなかった

「これは失敬。私どもはデュラハンと申します」

それを聞いて、一つため息が出る

 

「西洋の騎士様が一体どんな用件で?」

「上のちょいとした意向だよ。私が来てすぐ目を覚まさない様なら殺してしまえと」

幸い、直に目は覚めたようだけどね?と笑う

非常に軽い雰囲気で話しているが、目覚めたときに感じた殺気は本物だった

混乱しながらも、俺は目の前の椅子へとソイツを進めた

 

「……時に、貴殿」

「なんだ?」

「そなたはこの状況をどう思う?」

「お前と話していることか?」

「いや、影の尖兵。月光蝶。闇烏。この災禍についてだ」

……恐らく、これまでの死角の名前だろう

襲われたときの事を鮮明に思い出す

闇烏……、夜天の時は紅偽の協力がなきゃ勝てなかったと思う

月夜の暴走も、未華の純粋な心。影にいたっては特別そんな事はなかったが、戦い辛さを感じたな

自分の過去、兄弟、痛み。色々な事を引っ張り出してきてくれたよな

「……少なからず、黒幕は俺の知っている人物で。その上でふざけんじゃねぇとは思うな」

「ふふふ、わたしもその立場なら。あるいは紅偽様の立場であれば、そう思ったでしょうな」

どこからともなく、真っ赤に染まった紅茶が現れ、虚無ともいえよう甲冑へ鮮やかに注がれた

その赤は、どことなく不安にさせる色だった

「にしても、貴方もそろそろ隠し事をやめたらどうでしょう?」

「隠し事?なんのことだ?」

「貴方の体の事ですよ」

ひゅっ!と、一閃。黒光りする剣が俺の腹を貫いた

激痛がはし……ることは無い

 

「お前、いつから?」

俺の腹からぼろぼろと肌色をした金属が抜け落ちる

残るのは、真っ白な肋骨だけだ

「負の進化。そう言っていましたね

貴方は身体を鎧で包み戦う。だからこそ身体は…胴体は入らなくなった

必要なのは、骨格だけになったんですよ」

「……意味がわからねぇ。俺がこうなったのはあの『月夜』との戦いの後だ」

「ふふふ、紅偽様もマントの下には肋骨。そして嘘と嫉妬の念が詰まっています

より恐ろしく変化、進化していく事。それがあの方の力なのです」

デュラハンは、そう高らかに訴えた

俺は立ち上がった。奴を殴るために

だが、それは俺に気づかせるためのものだったのかもしれない

身体は、軽かった

予想以上に。いつも以上に

黒い灰が、寝巻きの間から落ちる

「お気づきになられたようで。今日が貴方の進化の日」

首から下と、手首を残して。俺の肉体のほぼ全てが灰と化した

「どっ、どうなってやがるっ!?」

「言ったでしょう?進化の日だと

あの方の力は闇の力。日光に当たらなくなると、そこへ闇の力は入り込む」

俺は一切の寝巻きを脱ぎ捨てた

背骨、肋骨、骨盤、足。

真っ白で細いそれらは月の光りで淡く光った

黒い灰は、蛇の様に浮かび上がり、俺の胸の中で黒光りする正八面体を作り出した

「さぁ、刻印は済んだ!後もう少し。

期待しておりますよ、蒼真様。……いえ、ミスター『クロガネ』」

ひらりと舞ったマントの中に、デュラハンは姿を消した

正八面体は、くるくると肋骨の中を回り続け

絶えず、紫電を発していた。

触れようとしても触れられず、そのもどかしさから俺は外へ出た

済んだ風が、開いた腹を通り抜ける

月光は常に、白い骨を浮かび上がらせる

俺は、自分の哀れさと悲惨さに、止め処ない怒りと、やり場のない悲しみを覚えた

もう、鳴る心は無い

 

 

「デュラハン、良い仕事をしたじゃあないか」

「計画通り、でしょうか?」

「ああ、十分だ。」

赤々とした正八面体が、主の手の上を回る

「紅偽様の方は?」

「順調に、86のモンスター「イルデリタ」を倒したよ」

「左様ですか」

「既に、怨念は溜まりつつある。憎悪もまた、な」

「しかし、皮肉なものですな。忘れ去られるごとに増すものとは」

「だからこそ、幻想郷を選んだのだよ。

八雲……紫と言ったか。あれには感謝しなければならない

あれほどの馬鹿はいないからなぁ」

薄気味悪い笑い声が、闇の中へと溶けていく




一応、これでいいはず
自分の設定と齟齬が出ないようにする事が、はてしなく面倒くさいですww
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