東方黒鉄伝   作:荒無 時竜

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朝起きた俺は、見覚えのある紅い館へと向かう

空は快晴、雲ひとつなく

肌寒いがそれも、風情と言うものだろう

とても3年ぶりとは思えぬほど、景色は変わっていなかった

上から見た湖には、相変わらず妖精が舞い

可愛い一人の少女は、門に身を寄せ寝こけていた

微笑ましく思いながらも、その目の前にそっと着地する

オレンジ色をした髪の毛は、相変わらずの綺麗さだった

アニメか漫画のようにぷく~っと広がった鼻風船を指先で触ると、ぱちんとそれは弾けた

びくっと華奢な身体が震え、目にも留まらぬ速さで土下座した

「すみませんでしたっ!」と響く声。土下座を練習した三年だったらしい

コンマ何秒という世界だった気がするよ

「……相変わらずだな、美鈴」

「へっ?」

下できっちりとした土下座フォームの美鈴は、ゆっくりと顔を上げた

最初、脅えたような目だったのが、緩み、微笑み、引きつり、泣く

あっという間の五段変形。表情練習も上達したか

「そっ、蒼真さん……夢じゃ……」

泣きじゃくりながら言う美鈴の頭にコツンとチョップを入れる

あでっ、なんていうマヌケな泣き声が響いたらそれはもう合図だろう

「落ち着いたよな?」

「はい、おかえりなさいです」

可愛い顔した何時もの美鈴が、もう目の前に居た

少し目が潤んではいるが、関係ない

素晴らしい居眠り門番だ、と俺は頭を撫でじゃくる

暫くなでた後、手を離すと「不名誉ですね」と明るく言った

 

直に中へ通され、長い廊下を歩く事になる

でも、もう慣れた道。次の角を曲がれば、其処には本の世界が広がっている

懐かしい木の香りだ

「美鈴。貴女、本になんて興味あったかしら?」

本から目を離すことなく、日陰の少女の声を聞いた

小声で内気な少女は、少し毒舌になったのかもしれないな

なんて考えながら月のアクセが付いた帽子ごと、頭をぽんと叩く

「……美鈴?」

流石に異変に気付いたのか、本で口元を隠しつつ上を見上げてきた

どう見えているのかは良くは分からない

ただ、とてつもなく嬉しそうな顔をしたように見えた

「ただいま、パチュリー」

「おかえりなさい、蒼真」

パチュリーはそう言うなり直、帽子を深く被った

本で顔色も良く見えない。

でも、全員集まらなきゃな?と俺はその手を掴んだ

細い指が、向こうから絡んできた気がする

 

同じ景色に舞い戻り、今度は三人で廊下を歩く

カツカツと、直に響くは軽い足音

どこまでも完璧で、どこまでも清楚な銀髪のお方

「久しぶりですね、蒼真さん」

「あぁ、俺はそんな気がしないんだけどな」

本当に、タイムスリップしたかのようで実感は無い

「そうですか」と、スカートを揺らせて先を歩いていく

言葉を交わす必要は、もう無いと思ったのだろうか?

いや、部屋を照らす明かりが刹那の間だけ映した滴を、見逃すわけには行かないだろう

彼女の手には、なぜかハンカチがある事も……

 

スタスタと軽く歩いてゆく四人

とても可愛い刺繍が施された子供部屋のような部屋

咲夜がゆっくりとドアを開けると、ベットに四肢を投げ出した金髪幼女が居た

「咲夜~?」と、少し顎を引き此方を見る

一瞬。身体に衝撃が走った。

スパンッ!と決まる音がして、身体が後方に勢い良く吹っ飛んだ

ガッ!と背中を廊下の壁に打ち付けるが、正直痛くはなかった

腕の中で泣いてる子が居たら、痛さなんて気にしてられないだろ?

背中の洋服を必死に掴んでくるフランの頭を撫でながら

「大きくなったな?」

「うんっ!」

なんて、他愛も無いことを告げた

笑う少女を抱き上げて、最後の部屋へと足を進めていく

 

「久しいな、レミリア」

「ええ、三年も消えてしまって……とても心配したわ」

「館の主に心配されたとなっては、治らなきゃ失礼だな」

苦笑しながらも答える

それを聞くレミリアは、涙など一切なく笑っていた

咲夜が面白い顔をしているから、きっと散々泣いたんだろうな

心配掛けないようにってか?……気心の知れた吸血鬼だ

「それで、どんな用事?」

「簡単な話だ、指切りをして欲しい」

俺はすっと右の小指を出す

「指切り……小指を結ぶあの?」

俺はそれに頷いた、これは闇を倒すために必要な事だから

ただ純粋な光。子供染みた、硬い堅い約束が……

「約束事は?」

「生きて帰ってくる事」

「……面白いのね、いつでも」

達観したような口調で細い小指が出される

お互いの小指が固く結ばれ、目と目が交差した

すると、其処から赤い光が弾けて飛んだ

それは椿の花弁の紋様へと灯る

一枚目の花弁は、鮮やかな赤を宿らせるた

 

「私、レミリア・スカーレットは約束するわ。そして命令する、願うわ

ーーーもう一回、全てが終わった後に笑って話せることを」

 

「ああ、約束だ」

 

華奢な指はと太い指が、あまりにも簡単に一本の糸を紡ぎだした

 

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