綺麗な風が吹き抜ける
上から見下ろす風景は、何時に無く壮大で
そんな中俺は空の、大きな大きな豪邸に向かっていた
何十と言う綺麗な桃は、地面を覆いつくし
何人かの男女はそれを必死こいて収穫していた
天界の当たり前の風景と言えるのではないだろうか
山々、木々を眺めながら飛んでいると、見た事あるふりふりと布が視界に飛び込んだ
「お久しぶりですね、蒼真さん」
「こんにちは、衣玖さん」
「……毎回思うのですが、私にだけさんが付きますよね」
少々苦笑いをした衣玖は、何も言わずとも豪邸の方へと連れて行ってくれる
「にしても、まだ病み上がりと聞きますが?」
「衣玖さんはやっぱり、情報伝達が早いですね……」
こちらの驚かそうという魂胆は見透かされているらしい
なんて考えると、心でも読んだかのように「天子がそういう人ですから」と
苦労が良く分かるようなセリフを淡々と告げたのだった
豪邸は直に見えてきて、大きさ装飾共に圧倒される
でかすぎるっつーか、こりすぎっつーか
「天界の名家ですので、威厳がありますゆえ」
「さっきから思うんだけどさ、空気以外も読めるようになってない?」
そもそも、人との間の空気まで読めるとか、そういう能力じゃなかった気がするんだが
恐るべし、奔放お嬢様……
「たああああああああああ!」
ブンッ!と上空からもの凄い勢いでダイブキックが炸裂しかける
慌てて横に回避すると、下からやるわね!と盛大な声が掛かった
「本当に久しぶりじゃない、ノタレ死んでると思ってたわ」
「ただいまって感じかな?」
「そうね!まぁ上がっていきなさい」
高飛車感がすげぇ上がってる気がしてならないが、まぁ3年あるからなぁ
なんて勝手に自分で納得して、青い髪を追いかけて行く
西洋式のイスに腰掛けて、出されたお茶を一息に飲み干した天子は直に話し出す
「いろいろ大変だったのよ、アンタが倒れた後。
そりゃ幻想郷大騒ぎだったんだから、私まで薬探しに駆り出されて」
と、本人に言う事なのか?と思えるほどの事を散々口にしていく
けれど、天子のお陰で状況は大分見えてきた
霊夢や魔理沙は異変が起こると瞬く間に制圧したらしい
紅魔館連中は、本を読み漁り終には黒魔術にまで手を出しかけたとか
冥界や地獄は、魂一つ一つを懸命に調べ上げ
永遠亭でさえ、蓬莱の薬を処方しようとしたとか
「もう、アンタの居ない3年間は波乱しかなかったわ
正直言うと、さっさと他の連中に顔を出してやりなさい」
「花見のときの礼が言いたいけど、気恥ずかしいから追い返した……むぐっ!」
「いっ、衣玖は黙ってなさい!!」
天子は青の髪にそぐわないような顔をして、帽子をふかく被った
衣玖はそれを見るなり「桃を切ってきます」と言い直に出て行った
バタン……と、一つ向こうのドアが閉まると、天子は話し出す
「……アンタと何かやったって思い出は、正直少ないわ」
「まぁな、お前が興味を持ったのは霊夢や魔理沙。俺みたいな遊び人じゃない」
「ええ、そうよ。でも、アンタは見てて面白かったわ……退屈しないくらいに
衣玖と2人で良く眺めさせて貰っていたのよ」
「そりゃあ気付かないよ、天界だろ?」
「ええ、でも時々ふらっと来て話して帰ってく
アンタとそれだけの時間をたくさん過ごしたのは、私の大切な思い出……」
「桃切ってきましたよ」
……タイミングすげぇな、衣玖さん読んでわざわざBADタイミングを突っ走ってきたよ
差し出された桃を俺は一つまみ、口に放って食べる
「甘いな」
「屋敷の桃ですから」
「………」
もう、すっかり拗ねてる天子を指差して衣玖を見ると
とても見た事無いようなイジワルな顔をして笑って見せた
俺はそれを見て、帽子を思い切り深く被らせた後天子に話しかけた
「なぁ、天子?」
「……なによ」
「指きりしてくれ」
「……はぁ」
大きく天子はため息を付いて、こっちを見てくる
複雑そうな顔をしていたが、顔色には曇り一つ無かった
「あんたに常識を求めちゃいけなかったのね」
「それは、他の人が返すべき言葉ですね……」
「衣玖、顔が帽子で面白い事になってるのに、ネタを挟まなくていいわ」
少し笑いながら天子が指を出してくれる
俺も、指をだしてそっと絡める
「また、桃でも食べにきなさい。何時でも歓迎するわ」
「ああ、全部終わったらな」
指先を黄色の糸が包み込んだ
それは煌びやかに光りながら新しい花弁となって、刀を彩った