東方黒鉄伝   作:荒無 時竜

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紅く染まり始めた山は、いつになく綺麗だった

そこに足を踏み入れるなり、見慣れた白いもふもふが胸に飛び込んでくる

わふっ!と言いたげに尻尾を振りながら椛は俺を見上げた

「お久しぶりです!」と、元気な声の挨拶

礼儀正しさに拍車でも掛かったのだろうか?

そんなふうに思いながら俺は「昨日会ったじゃん」とその耳を撫でた

ぴょこんと椛は直に俺から離れて、二人で山道を歩き出す

案内されたのは屋敷ではなく、もっと親しみがあるあの場所だった

放送中とかかれたドアの前にははたてが立っている

「遅いじゃない、待ちくたびれたわ」

「また会えただけでもいいじゃないですか」

と、二人が言う中、ドアの向こうからはにとりと文の声がする

2人にナイショで放送中のトコロへお邪魔し、ビックリさせようと言う企画なのである

はたての携帯には、動画のように念写が繰り広げられていて、2人を驚かせるタイミングを模索しているようだった

「よし、5秒後に突撃するわよ?」

そういったはたてに俺は親指をたてて頷いた

 

「あややや、にとりさん災難でしたねぇ。どうでし……」

「久しぶり~~!」

文の言葉を遮るかのようにガッシャーンと勢い良くドアを開けて、中へ突っ込む

放送中の2人も、ガラス奥の河童や天狗も皆揃ってぽかーんとしてしまった

なにがなんだかと、理解できずに出来た静寂。

その中で、一番最初に口を開いたのは文だった

「そっ、蒼真さん?」

「久しぶり、元気してたか?」

俺がそう言うと、文の目に涙が溜まり始める

にとりも、気付けば目が潤々としだしていた

「ほっ、ホントに蒼真?」

「正真正銘、本物でっせ」

俺はそう言いきって見せた

文とにとりの顔が緩み、目から溢れるようにして水玉が零れ落ちていく

「無事なんですね……よかった……」

「一時期はどうなるかと……」

と、文とにとりはそれぞれ言って、お構いなしに抱きついてきた

真っ黒なTシャツが、濡れて一層黒味を持ち始める

そんな様子を見て、少し貰い泣きしそうになりながらも、俺はマイクに向かって話した

「皆、帰ってきたぞ」

その一言だけでよかったと思う。

ぶつっとマイクの電源を落として、二人の頭を撫でる

片隅で見ている椛とはたても、なんだか泣きそうな顔をしていた

「おがえりなざい……蒼真さん……」

「ただいま。文」

「心配したんだぞっ……」

「ありがとな、にとり」

それだけの言葉を交わすと、2人はすっと離れて座っていた椅子についた

はたてと椛が、椅子を持ってきてくれて5人で円を作って話し出す

「2人とも、泣きすぎじゃない?」

「だっでぇ……」

「仕方ないですよ、私たちだって昨日散々だったじゃないですか」

「なっ!椛、言わない約束でしょ!」

「お前ら、泣くなって」

俺はもう一回2人を撫でる。

そうしている内に、段々と涙は収まっていった

恥ずかしそうに2人は笑いながら、顔を赤くしている

「まぁ、改めて……ただいま」

「「「「おかえり!」」」」

四つの可愛い笑顔が咲いて、声が重なる

本当に帰ってこれて良かったなって、生きてて良かったなって

そう思っちゃう俺はつくづく馬鹿だ

 

「にしても、はたても椛も酷いですよ」

「そーだよー、なんで言ってくれなかったのさ~」

「いいじゃない、ドッキリなんだから」

「折角でしたからね」

「「あんまりだ!」」

そう文とにとりは言う、それを聞いてはたても椛も誇らしげだ

出し抜いてやったぜ!見たいな少し悪い顔をしてたから、くしゃくしゃと頭を撫でてやる

「まぁ、感動の再会話は此処ではなんだし、先に指きりしてくれないか?」

「「「「指きり?」」」」

「そうそう、指きり。約束さ」

俺はそういって右の小指を出した

文、にとり、椛、はたてと相変わらず細くて綺麗な指が先に触れる

少しむず痒さを覚えながらも、俺は言った

「帰ってきて、皆でまた過ごしていく。約束だ」

「叶えてくれなかったら、死刑ですよ?」

なんて文が笑って約束に応じてくれた

「また、ラジオ。がんばろーな?」

にとりがえへへと、指を突付く

「将棋、ですからね?」

わふっ!と椛が跳ね上がる

「今度は、私の新聞作りを手伝いなさい?」

はたてが自慢げに胸を張った

5本の指を股にかけて、緑の指が星を描く

その星は舞い上がり、四人の少女の思いを乗せて、健気な花弁と化した

「蒼真さん!帰ってきたらデートですからねっ!」

と指かつながってる事を良いことに、文が元気いっぱいに叫んだ

それに突っかかっていくはたて、ツッコミのにとり、行く場所を決め始める椛

ドタバタと過ぎていく時間を、愛しい四人の少女を見つめながら

惜しむように、過ごしていく……。

 

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