東方黒鉄伝   作:荒無 時竜

141 / 150


村に近いトコロにある、神社ではないが古い建物

舟のようにも見える寺院が其処にはあった

上空から見るその舟は黄金の都市のように輝いているように見える

それはやはり、幻想郷の管理者と志向が、思想が似ているからなのか

定かではないがそう感じる事が多くなった

入り口で来るのを知っていたかのように、某灰色ネズミ少女が立っている

「久しぶり……と言った所か」

「よく分かったな?」

俺はナズーリンにそう聞くと、見慣れた一枚の紙切れが袖口から出てきた

それは俺の行動表……即ち巡る場所or巡った場所の一覧である

「なるほど、ネズミたちが見つけてきたわけか」

「あぁ、今日来る事は一目で分かったさ」

綺麗に二つ折りしてから、細い指で手渡してくる

それを摘んでポケットに押し込んでから、そのまま後ろを付いていく

「三年間、君も罪な男だよ……。どれほどの人間が悲しんだか」

「あぁ、今までも散々泣かれたよ。泣いてくれるのは嬉しいけど、泣き顔を見るのは悲しいかな」

「矛盾しているように聞こえるよ、それが心情なのだろうけどね」

まぁね、と俺はぽつり呟いて辺りをみまわす

 

……すると、目の前に見慣れた形のUFOが浮かんでいた

「よっ、ぬえ」

そう声を掛けるとそのUFOはたちまち姿を変え、見覚えのある翼の少女に変化した

「ひっさしぶり~」

と、三年間気にも留めていなかったような声が響く。

いや、正直気にされすぎても困るしいいんだけどさ

「おう、変わらずちっこいな」

頭をわしゃわしゃと掻き立てると「子ども扱いすんな!」と怒られた

いいじゃねぇか、お兄さんはスキンシップしたい年頃なんだ

真っ赤に顔を染め上げたぬえも引き連れて、再びナズについていく

躊躇いもなく一室の襖を開けると、引き出しからモノを引っ張り出している星の姿があった

「……ご主人?」

「ナズぅ、宝塔がどこにいったのか……」

うるうると目を湿らせて此方を見ているが、今探している戸棚の一番上にブツはちょこんと乗っていた

はぁ……とため息一つ付いてナズは指差す

その方向を見て、真っ赤に染め上げた虎柄毘沙門天は、それをあわてて掴んで机に置いた

「客人が来たときくらいはしっかりしてくれないと困るのだが……」

「星ちゃん、記憶力低下してない?」

「ううぅ……お久しぶりです」

長い袖で顔を隠す星。

その姿は非常に可愛いのだが、ぬえがこっそり宝塔を別のものにして困らせてやろうとしているのを見逃してやる訳には行かなかった

コイツのせいだったんじゃ……と、頭に考えがよぎるが

まぁ、可愛いし良いんじゃないかな?と一人で勝手にOKしといた

そのまま四人で長い廊下を歩いて、さらに奥の一部屋に着く

ナズが「お前が開けろ」と顎で示したので、開ける

 

そこには案の定、茶金髪の聖白蓮が佇んでいた

「お久しぶりです、蒼真さん」

「久しぶりだな」

どうぞ……と、差し出された座布団に座らせてもらうと、三人は聖の方に座った

一輪や雲山。水蜜は、まだ関係の浅いうちに眠ってしまったからこの場には居なかった

「積もる話もありますね、貴方が倒れた日は村を押さえるのに大変でしたよ」

なんて聖が懐かしそうに話し出す

俺の腹にぽっかりと開いた穴とむき出しになった骨。

状況を説明したら混乱するのに、話さないと止まない民衆の声を抑えるのには根気がかなり必要だったらしい

聖も禁術等々、様々な策を考えてくれたらしく聞いていて少し驚いた

「そうか、心配かけたな」

「いえいえ、無事だったならそれで良いのです。元気が一番でしょう?」

「ああ、色んな心配を掛けられて、そこんところ良く分かったよ」

紅魔館、村、天界、山、竹林。今日までに5箇所の場所を巡ってきて、関わりのありがたみがよく分かったさ

「の、割にはいささか元気すぎやしないか?」

「俺が不調で寝込んでたわけじゃないからさ」

「成程、案の模索は無駄だったというわけか」

いや、強ちそうでもないぞ?皆の優しさは良く伝わったさ

「……まぁ、語りつくせぬ事もあるでしょうが、先に用件を済ませてはどうでしょう?」

聖は俺の腰にある『椿』を見つめてそういった

「ふーん、聖はわかるのか?」

「ええ、滅の陣が組まれているのは良く分かります」

それに深く感心して頷くと、俺は小指を出した

言葉を聞く事も無く、聖が小指を結びつける

「待っていましょう、貴方が帰ってくるのを」

「必ず帰ってこようとも、まだ仲良くしたいしな」

聖の微笑がトリガーとなったかのように、藍色の糸が紡がれた

優しさと、大人の貫禄を乗せた藍色は椿に新しい花弁を添える

「いい色の華になって来ましたね?」

「あぁ、皆との約束をのせた椿だ。美しく咲くさ」

俺は聖の微笑みに答えるように微笑んだ

それを見てか、星やナズも少し口元を緩めた

 

……のだが、直に2人の顔がUFOに変化する

俺が振り向くなり、逃げるようにぬえが飛び去っていく

?と良くわからないという顔をする三人に「待ってて」と一言告げてから

颯爽と飛び去る未確認飛行合成生物の後を追いかけていく

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。