東方黒鉄伝   作:荒無 時竜

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真っ暗と言うほどでもなく、明るいというほどでもない

灯る炎が揺らめきながら、西洋建築物のような天井を照らしている

走る動物達に笑顔で会釈しながら、俺は真っ直ぐに奥の部屋へと足を進めた

手の甲で戸を叩くと、重そうな扉を開けて桃色の髪をした少女が見える

「重そうだと思うなら、手伝ってくださいよ……」

「わるい、そっちの心は読めなかった」

だって、可愛かったしね。しょうがないよね、自分のために女の子が扉を開けてくれるんだよ?

健気に頑張ってるんだよ、仕方ないね

「……私は読めるんですから、少しくらい自重してくださいよ……」

「ごめんね、さとりん」

「りんってなんですか……」

はぁ……とため息を付いてから、俺にイスを勧めてくれる

有難く座らせてもらった後、目の前に二つの紅茶が置かれた

さとりが飲んだのを確認してから、自分のに手を伸ばす

 

「熱いよお姉ちゃん!火傷しちゃうよ?」

既に無意識のぐりこっこが取っていた

いや、俺に出されたものだから盗っていたか?なんにせよ飲まれてしまったのだ

仕方が無いなぁ、とソファの片隅で寝る黒猫を抱き締めた

「……また幼稚ですね、貴方は何がしたいのかさっぱりわかりませんよ」

「読心者がわかんないと、俺を分かってくれる人は何処にも居なくなりそうだ」

流石に少しショックを受けつつも、黒猫を撫でていく

烏もちょこんと膝の上へ乗り、どう撫でて良いかは分からなかったが、とりあえず頭を撫でた

両手がふわふわしたものに包まれるというのは、本当に癒しである

「はぁ、蒼真?貴方は燐と空を撫でに来たわけじゃないでしょう?」

いや、そうなんだけどさ?撫でさせてもらえるなら撫でたいじゃん?

「貴方が何を思ったかはわからないけど、お姉ちゃんには分からないと思うよ?」

笑顔でこいしちゃんが隣に現れる

てか、酷くないっすかねぇ

「はい、わかりません」

「お兄さん凹んじゃうよ?テンションガタ落ちだよ?」

「好きなだけ凹むと良いです」

「さとり様?流石にそれは可哀相かと」

膝の上の黒猫がゴスロリ少女となって言う

それを見た烏も胸元の紅玉が印象的な少女となった

いやお燐。俺が悪いんだ

庇ってくれてる君をなでくしゃりたかったんだ

寧ろお持ち帰りしたいほどに

 

「はぁ……それで指きりでしたっけ?」

「あ、うん」

「凄くしたくありません」

「ごめんなさい」

していただかねば為らないので、もう無心で土下座する

すると、さとりは笑った

「ふふっ、冗談ですよ」

顔を上げた俺の頭に、ちっさい手がぽんと乗る

しゃがんで撫でてくれているのだ、土下座できて偉いね!見たいな感じで

ちなみに、太ももでスカートが捲れているため若干……

「蒼真さん?」

「本当にすいません」

再び土下座する羽目になった

もう、床に頭を擦り付けないと……って思った瞬間、背中に重さが

「いえーーーい!お馬さん!!」

俺の上に跨って暴れまわるこいしの声が聞こえる

無邪気すぎるだろ、おい

「大変ですね、あなたも」

「少なくともさとりんよりは楽だと思うね」

「誰がさとりんですか」

ぽかっと、ちいさなゲンコツが頭に飛ぶ

痛くは無かった、凄く上手な加減だったと思う

「蒼真さん、頑張ってくださいよ?」

俺の片手を取り、小指を交わらせる

すると、まるで心の様な……ハートのようなピンクの糸が弾けた

「私は待ってますよ?貴方が勝ってくれるって信じて」

不覚にも、見とれてしまった

そして、警戒を怠ってしまった

二つの地面を蹴る音が耳に響く

慌てて見上げたときにはもう遅かった

記憶に残っているのは、二つのスカートの中に咲いた花園と

背中から鳴った、鈍く不吉な音だけだった

 

目が覚めると、其処はベットの上だった

町の人々も全員寝静まっているような夜

俺の隣には、イスに腰掛けたまま眠るさとりの姿があった

背中には痛みは無い。

さとりの優しさを心に刻んでから、その小さな体躯を持ち上げて

ベットに寝かせ、布団をかけて、部屋を出た

暗い夜道、その先に

目に焼きついたさとりの寝顔が

焼きついてどうにも離れない

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