やはり、冥界と言うのはホイホイと行けてはならないモノなのだろうか
少なくとも、この段数の階段と、大きすぎる門がそれを物語っている気がしてならない
……まぁ、飛べるから良いのだが
ぴゅ~っと言う音がするかのように、俺は空高い冥界へとたどり着く
まったくもって面倒臭いったらありゃしない
友人?いや、知り合いか……に会うためにどうしてこうも面倒くさい道を掻き分けねばならぬのか
界と言う以上は必要な事なのか?
納得できぬ感情を押し殺しながら、冥界の門を潜る
綺麗な庭園が其処には広がっていて、待ち受けていたかのように幽々子がそこには立っていた
「いらっしゃい、待ってたわ」
「久しぶり……心配はしてなかったみたいだな」
「ええ、貴方が死んでしまっても此処なら滞在させる事が出来るもの」
ここから外には出れないけどねぇと、幽々子はわざとらしく付け加えた
まぁ、幽々子はなんとなく察していたのだろう
きっとそうに違いない
「まぁ、立ち話もなんだし……おなかも空いたし、中にいきましょう?」
幽々子は長い着物のような服をひらりと翻し
わざとらしく舌を出しながら、おいでおいでと手招きをした
この幽霊になら殺されても……と思える様な仕草だった
それに答えるように、俺は後ろを付いて歩く
「にしても、三年もたったのね」
ズズッと、幽々子はお茶をすすって言った
「らしいな、俺には実感が無いんだが」
串で皿の上の団子を挿して、ひょいっと口に運ぶ
もちもちした弾力があり、甘い香りが鼻腔をくすぐった
その様子を見て、向かいの妖夢は恥ずかしそうだったが、嬉しそうでもあった
しかも、幾分か大人びて……丸みを帯びたと言うべきか
成長が見て取れる、まるで幼子の日々を見る父親の気分だった
「色々あったのよ?ねぇ妖夢」
「はい、予言どおりに三回の異変後、こうして蒼真さんが起きてくれたのは、嬉かったです」
そうか、悪いな……と、俺は反省声明を言いながらお茶をすすった
久しぶりではないが、懐かしく感じる奥ゆかさだった
「それで、蒼真さんはどうして冥界に?」
「妖夢、何年たっても雨月の見方はわからないのね」
「おいおい、幽々子。聞かぬは一生の恥って言ってたのもお前だろう?」
俺は苦笑しながら妖夢に顔を向けた
目には不安と期待の光が射している
興味津々と言った所か、庭師も鍛えがまだまだ甘いのぅ
「まぁ、なんだ明後日か明々後日。満月の夜に決着を付けるのさ」
「決着ですか?」
「あぁ、全ての根源をぶっ放して終いよ」
俺は少し得意げに語りつつも、椿の柄を撫でる
欠けた三つの花弁へと、妖夢の目は自然と注がれた
「……椿ですか」
「そうだよ、椿だ」
腰から脱ぎ、柄を持って刃先をだす
妖夢は刀を出して、その巧みな刃先を眺めるが
幽々子は椿の少し先、何も無い所を見つめていた
俺は感付いて幽々子の顔を覗きこむと、「優しそうな人ね」と言われた
「優しい人だよ」と呟き返した
「凄いですね……切れ味も強度も申し分なしの刀ですよ」
興奮した様子で妖夢は顔を上げる
その空回りさが面白かったのか、幽々子は笑い出した
?と頭に浮かべる妖夢を、俺はなだめる様に撫でる
「どーしたんですか?」
「妖夢があまりにもわかっていないものだから、笑ってしまったわ」
お団子をぽいっと口に含んで言う幽々子
もきゅもきゅと動かしながら、袖より白い手を覗かせた
綺麗に伸びた五本の指は、ゆっくりとさし延ばされた
俺は下から受け取るように手を掴んで、小指を結ぶ
それが面白かったのか、幽々子は子供のように手を上下に振り出した
「ゆっびきーりげんまんうそついたらはりせんぼんのーますっ!」
幼稚な歌に誘われて、真っ白い絹のような糸が紡がれ始めた
幽霊よりも白く、雲よりも白い、純白。
穢れなんて何一つ無い月の淡光のようだ
揺らめくように、それはしばし風に仰がれて
のちに椿の花弁へと溶けた
「なんだったんですか?今の」
「今のはね、蒼真が私のお婿さんになってくれるっていうお約束よ~」
「えええええ!!!」
妖夢が大声で叫び始める
かく言う俺も、今顎がハズレそうになったが
「幽々子、なに言ってんだ!?」
「ふふふ、こうでも言っておけば帰ってこれるでしょう?
待ち人を置いて、居なくなったりなんてしないわよねぇ?」
……幽々子さん、それは俗に言う死亡フラグなんですが……
俺がため息をつこうとして、幽々子に口を押さえられる
驚いて目を見開くと、「頑張りなさいよ」って小さな声で聞こえた
有無を言わす気は無いらしい
だからこそ、指切りをかわしたんだろ?と俺は白い花弁を撫でて答えた
騒がしい声の中、色白美人な笑顔は咲く
真っ白な椿のように、白々と