「お前ら、少し調子に乗りすぎたみたいだなぁ……あ!?」
ビリッ!と身体が震えるような怒号を放つ
それはもう、人の形を軽く逸脱していた
いくつもの眼、揺れる無数の足、くねらせるのは長いからだ
風切る羽はしっかりと後ろへ伸び、棘と角で覆われた
まさしく昆虫の王者みたいな……
「気持ちわりぃ……」
この一言が似合う生物だった
端的に言えば、トンボとムカデが合体してカマキリやらなんやらがくっついていった感じ
ただ、それは同時に圧倒的畏怖である事もまた、事実
「蒼真、もう一度だけチャンスをやろう
私と行こう、全ての世界を支配しようじゃないか」
「たしかに、お前は強いかもしんねぇ、野心どうたらと話すなら、お前といった方が確実
全ての世界を手玉に取れるだろうよ
でもよ、お前についていっても……
……可愛い子はいねぇだろ!!!」
俺はキィンと椿を振りかざした
刀身はすぐさま光輝き、色を変え始める
「「「「「蒼真、よりによって其処?」」」」」
「なっ!なんか文句あるかよ!?」
「「「「「べっつにー?」」」」」
「なっ、ならいいだろ!」
俺が漫才を終えた瞬間、直に後ろへととんだ
さっきまでたっていた場所が融解しているのだ
それは口から出た腐食性の毒が原因らしい
幻想郷民も集まり始めるが、撤退の一方
近づけば鎌や角。遠のけば毒に糸
蟲の面倒くさい所ばかり集まった感じで、戦いにくい
でも、そこに何かを感じたのが、俺なのかもしれない
ぴっとカードを引き抜いた
手に張り付いた二枚のカードは見慣れた絵柄をしているが、一方には星が
もう一方には2人の戦士が描かれている、蒼と紅の戦士が
「頼むぜ?七宝星『七色の星獣』!」
7の獣が夜空に浮かぶ島から走った
灼熱の炎、氷結の氷、渦巻く風、迸る雷、轟々たる土、流れ出る水、溶かしつくす毒
準えられた七匹の獣には、柄杓の形が宝玉の中に浮き出ていた
『天体が好きだった母親の、一番好きな正座』が、それだった
望遠鏡を覗き込むのは、移り変わる南ではなく北だった
一年中照らしてくれる北極星を回り行くその七星
全員が動きを止めて、こちらを見るほどの力が、七の獣には溢れていた
「なっ!それは椿の……!」
「余所見はいけないんじゃないかしら?『動と静の均衡』」
宙の驚愕を遮るように、紫が畳み掛けた
それに釣られて、大量の弾幕が飛び交う
其処には地底の四人や鬼までもが加勢していた
HPゲージがあったら見てみたいほどに、すぐ宙は弱っていった
だが、コレは俺の因縁。全ては俺が晴らすべきだろう?
「紫、表の月へ飛ばせるか!」
「いいけど、死ぬ気?」
「なぁに、生きるか死ぬかのケリを付けるだけさ」
俺は二カッと笑っていった
すぐさま鎧はいくらかの空気を取り入れ、鎧へと切り替わる
つなぎ目が何一つ見えない、宇宙服のようなものに
それに答えるように、目の前は月へと映される
目の前には、まだ動けそうな宙が居る
頑張りなさいと、背中を押された気がした……
「蒼真、生きて帰ってきなさいよ……」
一番高い所でそういった紫を、見上げるように全員が見ていた
宇宙に吹き飛ばされた途端、聞こえるはずのない怒号が響いた
「蒼真!きさまあああああああああっ!」
「やめとけって、クソヤロウ」
突然、隣に真っ赤な鎧が現れた
それは当然紅偽で、なにがあったのかと一瞬目を疑う
「ヤツの心を少し貪ってやった『恐ろしいものを生み出す程度の能力』
いま、お前の一番恐れるものは、俺らだ」
真っ赤な偽りの剣を、紅偽は宙へと向けた
俺は、それを見て真実の青い剣を見せるように、椿を握ってかざす
「……おっ、お前ら……俺は父親だぞ!?」
「生憎だが、お前との縁は頭にきった!」
「俺は巴投げってヤツが好きでさ、コレだけ痛めつけられたんだ……死で返すぜ?」
あの日、大量の妖怪を焼き尽くしたあの技
「天地崩落之一撃」は、より威力を増して光り輝いていた
名前さえ変えて、俺の渾身の力全てを注ぎきる技
崩壊ではなく、終結。それがどんな意味を指すのか
七匹の獣は今、紫によって顔をそろえた
「「さぁ、この因縁にも終止符を打とう
ーーー終結連星「WORLD・END」
朱雀がまず駆けた
『天枢・アルファの星の名の下に、貴様をこの星砕けても焼くと誓おう』
業火が、その身を包み込んだ
轟々と燃え行くその身体は爛れ焼けてゆく
一気に燃え広がるのをお構いなしに、次は青龍が駆ける
『天旋・ベータの星の名の下に、貴様をこの星潰すまで流すと誓おう』
激しい水流が、一気に足をとった
身体は水に浮き、もう自由に動く事は出来ないだろう
宙は何も出来ず横たえる所へ、次に白虎が駆けた
『天機・ガンマの星の名の下に、貴様をこの星滅ぶほど凍らせると誓う』
無数の氷柱がその巨躯に振り落とされる
ささり、滴る血をも凍てつかせ、支配する
ピキキッと凍りだす身体へ、玄武が駆ける
『天権・デルタの星の名の下に、貴様をこの星還すまで帰すと誓おう』
土はその巨躯の肉をじわりじわりと砂へ返していく
まるで還元が行われているようだった
その次に、緑狼がお構いなしに駆けていく
『玉衝・イプシロンの星の名の下に、貴様をこの星崩すまで飛ばせると誓おう』
物凄い風が、蟲を吹き飛ばし叩きつけ、ぶん回す
足は不自然に曲がり、砕けていった
麒麟が雷鳴轟かせ、駆け寄って
『揺光・エータの星の名の下に、貴様をこの星壊すまで炭にすると誓おう』
けたたましい落雷が、局地的に蟲を襲った
焼け焦げる皮膚、燃え上がる肉、激しく音と光が押し寄せた
最後に紫熊と俺と紅偽は駆ける
『開陽・ゼータの星の名の下に、貴様をこの星裂くほど苦しませると誓おう』
「「そして、その隣に輝く死兆星の名の下に、ぶっ殺す!!」」
既に悲惨な目も当てられぬ宙、しかしそれでも声を聞く気は無い
月は一度砕けはじめる
十数個のカケラとなった月。
マントルは渦を巻き、重力で龍のようにあたりを漂った
地殻を蹴り、制裁を受ける蟲の首へ、剣を落とした
「苦しんで死ね、クソヤロウ」
「哀れんで死ね、クズヤロウ」
ズパッ!と音が響いた気がしたが、虚無の中では全てが吸い込まれた
月は、一度赤々と染まりあがり、脈打つようにしてその屍骸を潰すように元の形へと戻った
「「大層な墓だな、クソオヤジ」」
既に空気無き星で、俺らはそう呟いた
屍骸を焼き尽くした月は、平然皇后と輝きだす