「はじめまして、蒼真だ 以後よろしく」
「私は、八意永琳 こっちが優曇華で、となりがてゐ」
「よろしくね」
「よろしくおねがいします」
優曇華はやっぱ人間が怖いのかな? いや、俺妖怪だけどね
てゐは度胸があるっていうか、肝すわってるって言うか……まぁ、一番やばいのはBBAなんだけどね
「なぁ、蒼真 私そろそろ帰りたいんだが」
「そうだな 挨拶もしたし帰るか」
すっ と立ち上がった瞬間 とっさに身を屈めてしまう
その行動の理由はすぐ分かった
「妹紅――― 遊びましょーー」
バタン と戸を開けて勢いよくジャンプしながら入ってきたお姫様
屈めなければ、やられていた 俺の上数センチを飛び越えて、妹紅に圧し掛かからんとする
妹紅は驚いてはいたが、すぐに右手で輝夜の頭にチョップ
「ふぎゅっ!!!」
輝夜はズドンと床に撃沈した
これ以上面倒くさくなるのは嫌なので妹紅の手を掴む
「お邪魔しましたー」
そういって外に出る
「妹紅――― 遊びましょうよーーーー」
とニート姫が騒いでいるのは、若干耳障りだが気にしない
そのまま竹林の道を歩いていく
握っている手が、だんだんと暖かさを帯びてくる
まだ寒いのでこれは丁度いい
お互いに無言でただひたすら黙って歩いていた
「あ、あの 蒼真!!」
妹紅が張り上げた声で言う
落ち着かない様子で周りをちょろちょろ見て、ふぅっと一息深呼吸
頬が若干赤い気がする
「蒼真、今日はうちに泊まっていかないか?」
口からやっと出た そんな感じの声量
口をとじて少しぷるぷるしている
「別にいいけど、でも なんでだ?」
話し相手 とかなら慧音に頼めばいい
相談とかも、そっちのほうがいいだろう
俺に対して話すことや、やって欲しいことがあるとは到底思えない
「蒼真の事が、 知りたいんだ」
……予想外の答えだった
君のことを知りたい、なーんて言うのは普通無い
人は関わっていく中で少しずつ相手を知ることができる
つまり、急がずとも必ず知ることができるのだ
だから、ほとんどの人はその流れの中で知っていこうとする 聞く必要は無いのだ
それに、本人のことを聞いても主観と客観は違うのでそれなりに齟齬が出る
妹紅は、なぜ俺のことを知りたがったのか?
そこのところを聞くことにする
「知りたいって、何をだ?」
返答はすぐにあった
「蒼真は外の人間なんだろ? なら、こっちとは違った話が聞けるかなって」
ああ、そうか 妹紅は人付き合いが苦手、だからこそ これからのためにも色々な考えや意見、そういう物に触れたいのかもしれない
経験、というものはとても大切なものだ それを自分のものに少しでもできるのなら、それは良いことに違いないだろう
「わかった いいよ」
俺は承諾した 妹紅はどことなく嬉しそうで、少し残念そうな顔を見せた
けれど、すぐに笑って手をぎゅっと握ってくる
まだ竹林の道の途中 ゆっくりと歩き始める
少しすると、竹林の中 小屋が見える
妹紅の家である
妹紅は「ちょっと待っててくれ」と、家の中に入っていった
慌しく中で動いているのが分かる
「あわわわわ」だとか、「駄目だ駄目だ」だとか
誰に聞かせるでもない言葉を声にしながら、あっちいったりこっちいったり
俺は家の壁に背中をあずけて そんな妹紅に癒されていると
「妹紅らしくないな それもそうか」
と、朝聞いたばかりの声がする
「あれ?慧音さん寺子屋はどうしたんですか?」
「あー、今はお昼タイムでね 少し時間があったから様子を見に来たのさ」
ふーん、しかし俺たちが行くといったのは永遠亭のハズ
「ところで、どうしてここだと分かったのかな?」
「こんなに慌しく騒いでいれば、遠くにいても聞こえるよ」
……それもそうか 妙に納得
「のわあああああああああ」
ズドンと言う音と共に妹紅が叫ぶ
思わず、慧音とそろって吹き出してしまった
しばらく笑うと そろそろ見かねたのか 慧音が中に入っていく
入ってからは、早かった
あっという間に二人は出てきて、そこでようやく俺は中に通してもらえた
結構綺麗な部屋である
でも、さっきの様子からするに今さっき、片付けたんだろうなぁ
妹紅につれられて、和室に行き そこでお茶を入れてもらった
大体皆、お茶を入れるのはうまい
今度からお茶で人を判断してみようかな
「なぁ、向こうの世界で蒼真はどんな暮らしをしていたんだ?」
妹紅が聞いてくる そういや、話すために着たんだったな
「そうだなーなにから話そうか」
そういって俺は話を始める
最初は学校の事を話した ○○はいい奴だった
△△はなかなかに根性があった ◇◇は面白かった、でも話したくないときもあった
××は正直嫌いだ でも、時々ビックリすることをしてみせた
そんな他愛も無い思い出話 昔、川に落ちた とか
骨折したのは痛かった だとか 懐かしいことばかり話した
「なぁ、蒼真の‘家族’はどんな人なんだ」
「そうだなあ……」
父さんに母さん そこまで考えた瞬間
「あああああああああああああああああああ」
頭に激痛が走る 痛い痛い痛い痛い
思い出すのは、家族みんなで写った写真
俺の隣、人一人分のもやがある
「いたったたたたたたああああああああああああああ」
再び激痛 頭が締め付けられるようだ
視界が眩んでくる
「大丈夫か!? 蒼真……そぅ……」
耳に音が届かなくなっていく そのまま、俺の意識は崩れていく
少しもやが薄くなった気がした、向こうから覗くのは 少し狂った目
しかし、すぐにもやは濃くなって その目を完全に覆い隠した
見たことのある顔 誰だったっけ? ―――考える暇などなく俺は、意識をうしなった
次に目を覚ましたのは、夜だった
布団の中、どうやら寝かせられていたようだ
おでこの上にはぬれたタオル 視界の隅にお粥を作る妹紅が見えた
少し身を起こすと、ふわっと妹紅の香りがする
恥ずかしくなって布団に潜るも逆効果 しばらく布団と悪戦苦闘していた
そんだけ騒げば気づかれるわけで、気が付くと妹紅が笑ってた
とっさに布団の中でうずくまって、お粥がくるのをじっと待った
しばらくして「できたぞ」という声と共に妹紅がくる
お粥を受け取って食べる 丁度いい感じの味だった
濃すぎず薄すぎない塩加減 中に入っているのは梅干だった
妹紅は食べ終わった後、俺の皿を受け取ってまた台所へ
俺はまた、布団に潜った がちゃがちゃと、皿同士があたる音が聞こえる
しばらくして音がやむと、頭の後ろの所に何かが置かれたのを感じた
そこに、もぞもぞと布団に入ってくるものがあった
もちろん妹紅だ
妹紅は俺が振り向かないように背中にピットリとくっ付くと
「布団、1つしかないんだ お休み」
そう耳元で囁いて 寝てしまった
俺は、とくに何もできず 結局寝られずに一夜を過ごした