東方黒鉄伝   作:荒無 時竜

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弾頭捕食

全速力で殴りにかかる

狙うのはもちろん顔面、一撃で沈めてやるつもりでいた

 

しかし、俺の拳(いやドリルだが)分だけ頭を横にずらし、体制をかがめた

俺の下から勢い良く拳が飛んできて見事に顎を射抜く

強烈なアッパー その衝撃は凄まじい轟音を叩き鳴らした

とっさにガードをとろうとしたが、遅かった

上に弾かれた俺は身を翻そうと身体を捻ったが、相手の左手に叩きつけられた

 

地面に亀裂が走る、人為的な地割れ、おもわずめり込みかけた

視界の隅に写った巨大な足、とっさの回避行動で蹴りをかわすと、さっきまで居た所は勢い良く抉れ、砕けた地面が岩のようになって飛んでいく

明らかなる多重能力者、強者であることに間違いは無かった

思わず涎が流れた、こんなに熱い決闘は久しぶりな気がする

 

俺はもう一度走る、突進というべきか

奴は笑い、俺に向かって拳を振りぬく

まっすぐ俺の顔に向けて抜かれた拳、正確な一撃だった

 

「俺じゃなきゃあたってたかもな」

足を振り勢いをつけて、拳を避けるようにまわる

懐はもちろんがら空き、そこに渾身の裏拳を叩き込む

叩き込まれたドリルは高速で回転を始め、脇腹の肉とこすれあい、血の花を上げた

ギュリリリリリリリリリリリリッ、ガッガガガ

ドリルの回転がいきなり落ちる 視界の隅に拳が写った

右から衝撃が走り、宙に弾き飛ばされる

一瞬拳が見えたことが幸いし、空中でとっさに体制を立て直すことができた

腰に刺さった10本の黒刀 ソードビットを俺は勢い良く弾いた

 

しかし、全てを受ける程相手も甘くは無く、4本を拳で弾き2本を受け止めた

残りの4本は当たるも、全て掠る程度 ダメージはさほど無い

ビットを引き寄せつつ着地、ここまでの動きはほんの数分の出来事だった

「なかなかやるな」

「そちら……こ!そ!」

ビットと同時に走り出す

 

またも突き出される拳、ビットで軌道をずらし懐に入る

しかし二度目は通じない 先回りしていたかのごとく奴は身体を捻り逆の拳を既に振りぬいていた

体制を低くしてその下をくぐり、後ろに回りこむ

「ダークフレイム!!」

ガバッ、と口が開き漆黒に煌く火炎が背中を焼きにかかる

しかし、それが背中を焦がした瞬間に2mはあるような尻尾が突如俺を吹き飛ばした

地面に足はついたままだったが、勢いによって地面を削りつつ滑っていく

 

脳裏に浮かんだ一瞬のこと、―――尻尾が無かったはずなのに、突如表れたこと

頭にひっかかった、最初の拳もそう当たる瞬間までわからなかった

俺は奴を睨むと、鼻で笑って口を開いた

「わかったようだな、俺の力は攻撃を予知させない程度の能力」

俺は、迷う このまま勝負して果たして勝つことができるのか?

いや、……

「勝つしかない!!」

俺は決して機獣を忘れたわけではなかった

里が近いため命令が出せない、また平地のため実力が発揮できない

圧倒的に不利な状況下の中、俺は再び走った

ビットも逸らした時にひびが入ったようだ、修復の時間は稼げそうに無い

どうする、思考をめぐらせつつも俺は飛び掛っていく

ぱっと目の前に現れる岩石、思わず反応が遅れる

ぎりぎりかわしたが、やはり動きがのろかったか  先回りされていたようだ

振りぬかれた拳が肋骨を砕いた

 

口から滴る生暖かい鮮血

痛みで頭が締め付けられた時、一つの考えが思い浮かんだ

吹き飛ばされる刹那、地面から鉄柱を生やす

入り組んだ地形、狭い道 一番自分が生きる地形

そうだ、作ればよかったのだった

突然の鉄柱に驚く奴を尻目に俺は跳ねた

 

鉄柱を蹴り、軌道を変えて今までには無いキレで後ろに回ると、背中をエッジで切りつける

回るように動きながら切り刻んでいく

ハマったら楽なもんだった

ガンガンガン、ジャクッ、ジュシャッ

同じような所を重ねて切り、蓄積ダメージを着実に増やす

俺は苦しむ奴の懐にもぐりこむ、その灯火を消そうと心臓に手を差し向けたとき、

背中に衝撃が走る、数本の鉄柱が吹き飛び俺は地面に倒れこんでいた

「ぐはっ、ぜぇ …まさか奥の手を……ぜぇ」

霞み目で見た奴の周りは、陽炎のように揺らいでいた

いや、振動していると言ったほうが正しいか

 

衝撃波を纏う程度の能力、といったところか

これならリーチも伸ばせるし、守りも強い

もう、体力の限界だった

しかし、機獣を使うわけにも行かない

俺も男だ、助けを呼びに行くわけにも行かない 

あぁ、もういいや 

  “全部、壊しちゃえ”

俺は妖力を全部開放する

身体に揺らめく黒紫のオーラ、怪しい感じがそそりたっている

「ぜぇ、なんだ、 その力は」

  ―――ウルサイ

 

俺は獣のように四肢を使って駆けた

宙返りをして、頭をがっちしと掴むと口をあけてダークフレイムを放つ

もちろん、衝撃波によって弾かれそうになってはいるが着実に焼くことができている

飛んできた拳を後方に飛ぶことでよけ、ボロボロのビットを相手の目に抉りこむ

ものすごい断末魔とともにもがき苦しんだ、回りの衝撃波が消える

 

俺のドリルが心臓を貫き、斧が重い首を跳ね飛ばした

倒れる巨体、それを口に運ぶと……

俺は咀嚼した 生臭い血の味だけが口に広がっていく

意識がはっきりとしていたらこんなことはしていなかったであろう

しかし、今身体を操っているのは獣、考えるほどの脳は無かった

グチャッ ヌチュ ガリッ ガツ

生々しい音が辺りに響き渡る

骨さえも食い尽くした俺はその場に倒れこんだ

 

目が覚めると魔界だった

神綺が顔を覗き込んでいた

「ここは?」

「私の城です、にしても……

       “ケルベロス”でしたか」

「オルトロスではなかった、ということですか?」

神綺は首を横に振る

「いいえ、あなた自身はオルトロスです しかし、“獣”が住み着いている」

獣、妖怪になった時から中に巣くっている奴か

「妖怪になったのが原因なのか違うのか……それよりも、どれだけ力が増えているのですか?」

掠れた記憶、アイツを確かに俺は食った 

アイツの魔力分、自分の力が増えているようだ

今までの自分が1とすると、今の俺は1、8くらいある

かなり許容量が増えたといっていいだろう

 

「まぁ、いいでしょう それでは送ります」

「どこに?」

「貴方は一週間ほど寝込んでいたのですよ、さぁ今日は霧が濃いですよ」

ぱっ、と飛ばされた場所は博霊神社

なるほど、確かに濃いな

「萃香ちゃん、いるんだろ 遊ぼうぜ」

「私に気づくなんてねー」

ふっと霧から姿をみせる萃香

「んじゃ、よろしく」

 「りょーかい」

ブァアッと、青い髪が一変して赤く染まる

スピードや防御力は俺が高いが攻撃力は桁外れにコイツが強い

「「喧嘩しようか!!」」

 

 

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