東方黒鉄伝   作:荒無 時竜

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例月祭

ぴとん 葉の雨粒は垂れ落ちて、綺麗な波紋を水溜りに刻み込んだ

重さをなくし跳ね上がった葉からまたいくつもの粒が降り注ぐ

揺らぐ水面 鏡のようなそれは歪ながらも天満月を映していた

早朝から夕暮れまで降り続いた雨は上がり、薄く延びる雲と無垢な光りを放つ月だけが空に浮いていた

 

某魔法少女が夢見た星は見えず、孤独に伸びてくる淡い、儚い、「光」

俺は本を読む手を止めた 布団から身体を起こす

 

「止んだし、行こうかな」

今宵は中秋の名月、永遠亭の例月祭にご招待されているのだ

実際、読んでほしかったのは来年ごろの方なのだが それはまぁしょうがない

読書オンリーの日 というのは俺にとって珍しくもなんともないのだが

雨が続くと外にも出たくなってくる と、言うわけでありがたく了承させていただいたワケだ

手ぶらでは帰りに振られると困るため前に買ってきた蝙蝠傘をてにもつ

 

今回はだぼっとしてゆとりのある服装だ 黒いパーカーのラインがかっこいい(と思う)

ドアを開けると、月の光りが庭に降り注いでいる

それこそ、弾幕のように 

朱雀は室内でウロウロしていたのだが、青龍は昇り龍のようにうねっている

余程雨が嬉しかったと見える 視界の隅の泥だらけの玄武は見なかったことにする

ひんやりとした空気 清んでいる空気は一層清涼感を増していた

秋だから逆に冷え込むというのに まぁ、長雨じゃなかっただけよしとする

 

元気いっぱいの青龍君をちょいちょいっと読んで背中に乗る

……予想はしていたがびしょびしょだ 仕方がないので立っている事にする

ぶわああっ!! と広がった竹林の一角 少し開けている所に屋敷は見える

風を切る いや、新しい風を作るようなうねりで空を駆けていく青龍

下から見たら綺麗なのかもしれないが、乗っているこっちは今にも飛ばされそうである

直立不動で耐え切りつつも、永遠亭の真上に着いた

「もう帰って良いぞ」そう、一言言い残して上から降りる いや、落ちる

 

高度150mくらいからの落下だったので、膝を曲げるだけで衝撃は全部流せる

どごっ!! っという音がして地面が割れるが、土を操って平然と装う

「今の音は何!!」

驚いた様子の輝夜ががらっと襖を開ける

「よっ、輝夜 招待ありがとね」

「なんだ……蒼真ならやりかねないことだわ」

綺麗な黒髪を風にたなびかせて、絶世の美女は笑った

正直、綺麗なもんだな と思う  引きこもりニートでなければの話だが

「まぁ、奇想天外 な事が出来ていたら嬉しいかな」

「? 良くはわからないわ」

「深読みしても、何もないしね」

噛みあってんだか良くわかんない会話をしながら、違和感のある地面に向かう

 

そこに足を乗せた途端

浮遊感 重力……いや、無数の手に引きずり込まれるような感じ

前のめりに身体が流れる それを俺は予想していた

とっ と重力に逆らう浮き土の上に足を乗せバランスをとった

「……落とし穴か、てゐらしいな」

「っちぇ~ ばれてたのか な~んだ」

ひょこ っと因幡の白兎が茂みから顔を覗かせる

「一応、鉱物を操る力が あるんだけどなぁ」

ぽりぽりと、頭を掻く 輝夜は何が起こったのか 現状把握に脳が勤しんでいる様だ

 

それからほんの数秒位した頃、上の空だった輝夜に意識は戻って来た

3~4秒くらいの一瞬の出来事だったから、状況把握が難しかったのだろうか

もやっとボールとか、アハ体験とか そんな感じか

「てゐ~、ウサギ達を呼んで頂戴」

翼を授ける赤と青の薬屋が、歩いてきた

後ろにはひょこひょこと、優曇華がついている

これで、永遠亭の主要面子がそろったってわけだ

 

「蒼真は座っていて頂戴 輝夜はそうね、蒼真の相手をしてあげて 寂しいと死んじゃうから」

輝夜ははーいと一つ返事をすると、屋敷の廊下に腰掛けておいでおいでと、手招きしてくる

苦笑いしながら隣に座ると輝夜がニコニコしていた

「お前、どうしてそんなニヤついてんだ」

「いや、蒼真の命は私の手の中なんだなーって」

「……あれ、冗談だからね?」

「えー、そうな……大丈夫よ、最初からわかってたわ だから、そんな哀れむような目はやめて」

思っていたより馬鹿ではないようだ、瞳で意思くらいは伝わる

いくつか雑談をすると、優曇華の収集がかかり腰をあげた

 

たくさんのウサギ達がお餅を食べている光景は

強烈なインパクトで、新鮮さを感じた

みんな、美味しそうに食べるのである

可愛い白兎が、俺と輝夜にお皿と箸を渡してくれたのだが、肝心なお餅は何処へか

どうやら、その子のお腹の中だったらしいので、軽いデコピンをしといた

ウサギの数は一向に減らず、薬が中に入っていないことがわかる

薬入りなんて食いたくないしね、でも 今は全然食べられない

ついたそばから皆食べるので、直に新しいのをつく羽目になるのだ

回ってくる気配はまったくない

 

「あの、蒼真さん! おもちっ……」

後ろから優曇華の声がかかる

振り向くと7~8個の餅が皿の上に乗っていた

俺は箸を持つと3つを輝夜の皿において、また3つ自分の皿に置いた

そのあと、残っているお餅を掴んで

「はい、あーん」

優曇華の口へ運んだ 

恥ずかしさで真っ赤に染まりあがるが、俺は別に平気だ

向こうのお断りの言葉を全て強引に捻じ伏せ、黙らせると 堪忍したらしく口を開けた

餅を入れると「それれふぁ!」と、言い残し逃げていった

 

結局、永琳の姿を見ることはなく、優曇華にももう逢わず

輝夜と一緒に回りながら、たくさん餅をもっている可愛いウサギに

「太るよ(笑)」と、笑顔で言ったりしているうちに、例月祭

掻い摘んで言うと餅つき大会は幕を閉じた

優曇華が、狂気の瞳で視認できないようにしていたと気づくのは

これから後、1~2週間たった後だった

 

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