東方黒鉄伝   作:荒無 時竜

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二人酒

「私達が最後のようね」

「そうね」なんて会話と共に二人のお嬢さん……そう呼ぶには年を食いすぎているかもしれないが

が、会場に到着した

俺はにっと笑うと紫と共にお酒を手に取った

むろん、紫もにっこり笑っている

 

本来なら酒だけなのだが、俺の差し金でもっと面白いものがある

むろん、綿月姉妹だ

二段構えの囮は三段構えに、復讐はお酒どころか新しい住人まで

「遅かったですね」

「今日はどういう風の吹き回しかしら?」

「普段の労をねぎらいお酒でも、と思いまして」

紫は不気味にお酒を差し出した

 

「あら、有難う」

「失礼ね。毒なんて入ってないわ」

「?多少の毒は薬ですわ」

そういって永琳はお酒を飲んだ

途端に目が丸くなり動きが止まる

ようは固まったわけだ、カチンと

少ししてお酒が少し、永琳の口の中へ消えた

それを見た俺は少し上空を見上げる

そこには一羽のカラスと綿月姉妹が居る

 

「お前ら、準備はいいか?」

そう口を開くと耳元の小さいイヤホンの端の様なものから

『ドッキリとは少々気が引けますが』

『ええ、何時でもいいわよ』

と声が聞こえる

 

実は少し前に二人に交渉を持ちかけたのだ

永琳に会いたくはないかと

二人へドッキリへの協力を条件に話を進めた

その結果、なんとか二つ返事で了承を得られ今に至る

そういうわけだ

「……お酒の席をご用意いたしました」

紫の言葉を合図に俺が言葉を紡ぎ始める

 

「しかし、お酒だけでは思い出すだけ

 そんな虚しさで終わるようなことをしたくはありません

 と、いうわけで今日はスペシャルゲストにご登場願いたいと思います」

パチン、しなやかに俺の指が音を鳴らした

上から華麗に舞うように、姉妹が降り立った

「「お久しぶりです、師匠」」

「……は?」

永琳絶句

 

俺と紫は顔を、目を見合わせて笑った

頭脳明晰、天才薬師の八意永琳のマヌケ面

こんな顔は古今東西、時間を遡ろうが加速させようが

一生見ることは出来ないだろう

「へ? あなた達?」

なんていってオドオドする永琳を見て一層激しく笑う

 

お腹を抱えて紫と「ごゆっくり~」なんて言ってその場を抜けた

博霊神社の中、薄暗い部屋で俺と紫は大爆笑した

「あっははははははは、苦しっ!!」

「へ? だってよ!! はははははは!!」

壁に寄りかかって、肩を並べて笑った

「最高ね、協力してくれてありがと 素直に礼を言うわ」

「こっちこそ、おかげで良いもんが見れた」

にっ、と紫を見て笑う 若干紫の顔が赤い気がしたのは気のせいだろうか

 

まぁ、折角の宴会よ と言って隙間から幾つかお酒と料理を取り出す

今ささっとくすねて来たのだろう、便利だなそれ

二つの小さいグラスに酒をついで

「乾杯」

キン、と小さい音を鳴らしてから飲んだ

そこにはなんとも言えない美味しさがあった

奥深さと純粋さ、穢れのない月からの贈り物

いや、正確には盗んできたんだが

「美味しいわねこれ」

「なんともいえないな、名状も形状もしがたい」

そういって飲み干した、微かに残った滴が淡く光りを反す

 

「なんだか満足ね、技術なんかより愉しい方がいいかもしれないわ」

にっこりと笑って紫は言った

人を馬鹿にしたような笑いでも、嘲笑うような感じでもなく

ただ愉しいから笑う、綺麗な花のような姿があった

少し高鳴った胸、上がった体温

「そうだな、愉しいが一番かな」

それに委ねる様に俺は天井を見ていった

それを聞くなり「ふふっ」なんて言って俺の手をぎゅっと握ってきた

「なんだよ、酔いが回ったか?」

「そうかもしれないわね」

「酒に負けるなんて、落ちぶれた大賢者だな」

「そうね、でも……今はこうしていたい気分なのよ」

自分を曝け出した紫を始めて見たかもしれない

不思議な気分と空気

 

初めて自分は、隣にいる彼女を妖怪でも賢者でもなく

一人の女の子として見て、感じた

こくん、と紫の首が傾いて俺の肩に寄りかかる

どうやら寝てしまったようだ

「仕方ないな……」

離してくれそうにない手をぎゅっ、と握りなおす

そしておやすみと言って目を閉じた

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