東方黒鉄伝   作:荒無 時竜

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久しぶりの2000字越です


稽古

 

「まさか、ねぇ」

俺たちは現在少しはなれた竹林の一角に立っていた

ここは、綺麗に穴が開いたように竹が立っておらず丁度良いところだった

 

依姫からのお話は単純、依姫が稽古をつけてくれ……なんていいだしたのだ

なんでも、神の力に頼れぬ時の自分の弱さがーーうんたらかんたら

難しく理解しにくかったが、ようするにどんなときでも不足なく戦いたい

だから、強い人に稽古をつけて欲しいお願いする、みたいな感じだ

これでここに居る理由が大体理解していただけるだろう

要するに扱き使われてるわけだ、いつものことだけど

「そっ、それではお願いします」

「うん、わかったけど……刀を見せてくれないかな?」

は、はい?なんて言って渋々刀を渡してくれる

なるほど、と俺は一つ頷くと、自分の隣にそっくり同じ形状の刀を作った

「!!、それは?」

「ん?ああ、能力説明をしてなかったね

 俺の能力は「鉱物を扱う程度の能力」つまり、模造品ぐらいは作れるわけだ」

 

がっ、と剣を蹴って宙に浮かせる

弧を描く刀を右手一本で受け止めると俺は構えを取った

刃先を下に向けた、屈む様な姿勢

永琳が「はじめっ!」と声をあげ、場の空気が一気に張り詰めた

そのまま体感約四十数秒、俺が挑発したのと依姫が切りかかってくるのはほぼ同時だった

一番近い直線のコースで一気に距離を縮めた依姫、その刀は確実に首の付け根から脇の下までを直線で絶とうとしていた

目の前に顔が迫る、刀が首まで後数センチ……

 

ーーー駄目だね

俺は下から刀を当てると持ち手の方へ刃を滑らせた

キッ!と持ち手の部分に当たる音が鳴った瞬間、手を巻き込むような形で刀を回した

手首は捻られ力が入らなくなり、当然のごとく刀は滑る

飛んでいったそれは放物線を描きガッ!と地面に突き刺さった

「なっ……」

「直線じゃあ駄目だよ」

刀を地面から抜いて依姫に返す

もっと騙す様においで、そう耳打ちして俺は3歩ほど下がる

横目で永琳を見ると二回目の声、反応は直だった

バッ!ガササ!と、葉のなびく音と竹のしなる音が響く

依姫は真上に飛んでその姿を隠したわけだ

「見事なくらい守ってくれてるね」

 

俺は僅かにする蹴るような音に向けて言った

2秒も静止せず、ひたすらに竹を蹴り移動を繰り返す

ガッ!ガッ!!……キッ

微かな音の変化を見逃しはしなかった

圧倒的な変化、これは風切音、この音を鳴らすには真上しかない

そう踏んだ俺は微かに頭上を見上げる

刀に全体重を掛けて真上からの一突き、とでもいえるような物が俺の頭頂に迫っていたらしい

俺は数センチ身体を横にずらす

今までたって居た所に見事に依姫の剣は見事に空ぶった

くっ、そう小さく漏れた声がして直、彼女は着地と同時に地面を蹴った

 

今回は振りではなく突き、首の喉仏だけを狙うような構えだった

それを俺は上半身を後ろにそらして突きを交わした

身を乗り出しすぎた依姫、身体は自然と俺の上に来る

剣の腹で手の甲を叩いてやると、呆気なく剣は落ちた

俺を巻き込むように倒れこむ依姫をぐっと抱いて支える

 

「お疲れ、動きはいいと思うぞ」

「へ?でもまだ2回目……」

「嘘はいけないな、ほらっ」

俺はタオルをばふっっと頭に当ててやる、すると直に湿りだした

そのまま顔をゴシゴシやってる、これは単純にやりたいだけだが

「アンタ、どんだけ強いのよ。私が鍛えたんだけど……」

「平和ボケしてたって話じゃないかな?」

「……ふふっ、そうかもしれないわね」

「ちょっと、私を置いていくんじゃないわよ」

頭にどこからともなく扇子が振り下ろされる

紫だ、間違いなく紫だ

「家で夕飯ご馳走してやるから、我慢しろ」

「はーい」

 

……身分のいい奴……

ふっ、とため息を一つついて抱いた依姫さんを持ち上げる

結構軽いなコイツ、一応女ってわけか

俺はそのまま永遠亭に帰ろうとする

すると、どうやって察知したかは分からないが途端に暴れだした

ジタバタジタバタ……

「ちょっ!暴れんな!」

「五月蝿い!勝つまで!勝つまで!」

「子供か!!……しかたねぇ後3戦までな」

少し考えた後出した3戦に喜んで依姫は参加した

のだが、もちろん勝てるわけもなく終わった

日の暮れるまでもう一回の乱舞、結局4~50回やったのかもしれない

本人は倒れこみそのまま就寝、仕方がなく負ぶって運びその後帰ることとなった

 

「ただいまーっと」

「お帰りなさい」

目の前には紫、おでこに夕飯ってマジックで大きく書かれている……気がした

自分の愚かさに後悔しつつ保存室内の物を見渡す

うーーーん、シンプルな和食でいこうかな?

ふと目に入った魚とお惣菜セットで強引に決めると、俺は火をおこした

その上の金網に魚を開いて乗せる、鍋にも火を掛けて水を沸騰させる

 

「私も何か手伝うわ」なんて声が聞こえた

後ろを見ると紫が割烹着を着ている、正直似合うかは不明である

「うーん、味噌汁とか作れるか?」

「……う、う~ん?」

駄目だこりゃ、お前も女だし料理くらい作れるようにしとけ

「簡単な物位は作れるようにしてやら」

「……有難う」

俺は台所に向き直って葱を切り始める

どこかの狐が湧いてきそうな油揚げ、豆腐も切って投入

 

米は……用意されてる、多分藍かな?

帰ってこないから心配したのかもしれない

少し冷たい気もするが、文句は言い始めたら埒が開かないので気にしない

魚に焦げ目がつき、水に味噌を溶かして火を止めたところで皿を出す

村のおばちゃん特性の胡麻和えや漬物と一緒に盛り付けていく

皿ばっかりは金属製より村の暖かい食器の方が映える

さらっ、と料理を済ませて後ろを振り返るとそこには紫はいなかった

 

「はやく~♪」と既に椅子に座ってる、なんでだよ

金属製のお盆に全部載せて机まで行くように指示

茶葉とお湯、急須を持って机に向かった

「紫、まだ食うなよ?」

念を押してからお茶を注ぐ、案の条箸をもう持ってた

「はい、いただきます」

「いただきます♪」

空の箱庭、家の中

二人の妖怪の食事の声が、愉しそうに辺りに響いていった

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