東方黒鉄伝   作:荒無 時竜

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これから荒無編に入ります(と思います


双子の衝突
said 紅偽の決断


「あ~、ダルいなぁ~~」

俺は大きくため息をもらした

きっと目に見えないシアワセがこの瞬間に大量に逃げていった事だろう

そして、そう考えると「不幸になった」なんて思えてきて

またため息が出るスパイラル、この悪循環を止めてくれ

そう思うある曇りの日、どんよりしたその空気は俺の気分や気持ちを表しているようだった

 

「ふむ、今日も時間通りですね、良い心がけです」

「そりゃあ裁判長のご指名とあればこらざるおえませんよ」

三途の川の向こう岸、そびえる扉の奥の奥

四季映姫ヤマザナドゥ、彼女の仕事部屋である

薄暗いこの感じも随分と見慣れたものだ

「そうかもしれませんね。それでは聞かせてください」

「……そのお話は、何度お断りすればいいのでしょう」

「断り黙る事は許しません、鏡が通用しないのだから」

俺は困ったな……と頭を掻く

 

兄貴と俺の過去、面白いくらい分かりにくいそれ

言葉にしたくもないし、思い出したくもない

「……、貴方はなぜ……」

「前にもいったでしょう、この楔が消えるまで鎖が切れるまで、兄貴とは離れません」

「貴方は貴方、彼は彼……では、すまないのでしたね」

俺は託しあげるように袖をまくった

其処にあったのは身体をかろうじて止めるいくつもの骨

筋肉や臓器はそこには何一つとして、見当たらなかった

 

「心を動かす程度の能力……、ムードメーカーにはふさわしい能力でしたね」

「俺が此処に残留できるのも、この力のおかげです」

「良く出来た兄弟ですね

 不幸の下に生まれて、兄は物質を弟は精神を操る ですか」

「ちゃんとまともに生まれたかったですけどね」

俺はギリギリと音をたてる虚しい白い指をぐっと握った

こんなやり取りはもう何回目だろう……、面倒臭いったらありゃしない

…………ーーーーそうだ

「映姫様、」

「なんでしょうか?」

「気が……変わりました、荒無兄弟の話を少しだけしましょう」

「ぜひ、聞かせてください」

 

ーーーーー、-----

ーーー。-----!! ---……

俺の言葉一つ一つに自然と力が篭る

映姫も頷くばかりになっていく

思い出話はあっという間で、ものの数分で終わった

「聞かせてもらったのですが、正直重いですね」

「でしょう?俺は兄貴と一心同体でした、文字通りね」

「ええ、それを踏まえて事は全て理解しました

 貴方は『異変を起こしたい』と、そう言うのですね」

「自分の命を終わらせる、自害にも似た異変を」

俺の心は固く決まっていた

自分、そして夜天

この二人を完全に消す事によって兄は有りの儘になれる

しかし、自分で消える訳には行かない

『消してもらわなければ……』

「貴方の悲しい宿命、見届けさせてもらいましょう」

「……よろしく、お願いします」

 

 

「やっほ、紅偽君。昨日ぶりだね」

「ああ、夜天……本質といったほうがいいのかな?

 信用、真実と密接に関わる物、人間の心に根強く張る拒否の念……」

「人類全員の、いや全生物に蔓延る僕がこんなにも特定の人物に関与したのは初めてだよ」

「それだけ、『俺らの他への拒絶』が強かった、ただそれだけだろ?」

悲しい事言うなよ、なんて夜天は笑った

生物の本性、生き残るための願望や欲望の結晶

それが夜天である事は良く分かっていた

「君の消失……手伝ってあげようか?」

「!?どういうことだ?」

「フフフ、それはお楽しみだよ」

ーーーーー。夜天は紅偽に告げた

紅偽はそれを承諾、少し先の未来

ーー長い一日が始まる事になったーー

 

 

「めんどくさい事が起こりそうね」

「蒼真……なんて言ったかしら」

二人の女性が暗闇の中、ひっそりと会話をしていた

賢者と魔界神、その二人の声は何処かもの悲しい

「……ねぇ、貴方は前『ケルベロス』そう口にしたわよね」

「盗聴が趣味なんて、いけない妖怪ね」

紫はわかってるわ、なんていいながら目で神綺へ訴えた

「あの子には「蒼真」「紅偽」「夜天」3つの人格……のようなものがあるわ

夜天は人間の本質、拒む力の持ち主 彼が引き寄せられた理由こそ、彼ら最大の不幸よ」

「一体どんな……?」

「彼ら最大の不幸は……『シャムの双生児』だった事よ」

「シャムの……双生児……」

「ええ、体の一部がくっついて生まれてくる双子

 何かしらの異常で一体化しているのよ、まさしく同体なわけ

 一人前として生きるにはどちらかを『殺す』ことが必要なの」

はっきりとした言葉がシーンとした部屋に響いた

それっきり両者言葉をはっする事は無かった

沈黙と静寂の中、紫は薄く唇を噛んだ

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