東方黒鉄伝   作:荒無 時竜

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双星のラストバトル

「行かなきゃ」

身体は勝手に動き出した

ベットを、永遠亭を抜けて空飛ぶ浮遊城へと……

 

「お、来た来た」

古城にたたずむ黒い影、それは俺を待っているようだった

聞いた事のある声、コイツが何を知っているというのだろう?

……駄目だ、思い出せない

「可哀相に、記憶が無いんだろう?」

「なぜ、知ってる」

それは強く殺気を込めた

 

しかし、それを嘲笑うかのように口を歪め、続けた

「君と僕は一心同体、同じ運命の星の下に……」

「胡散臭さだけは十二分に伝わったよ」

俺はソイツの言葉を遮る様に言い放つと、腰の剣が顔を出した

直線距離で向かっていくも、相手も伊達に変人をやってないらしい

尽く弾かれていった

「くっ、これならっ!!」

近づいて至近距離のパイルバンカー、轟く地響きが反響する

しかし、それは虚空を切り裂いただけであった

真上ーーー、

 

顔を動かす前に奴の踵が後頭部にヒットした

視界が揺らぐ、はっきりと視認できない

込み上げる吐き気、胃がひっくり返りそうだ

口から、途絶え途絶えの息と飲み込めない唾

そんな俺の髪を、奴は握り持ち上げた

「僕に歯向かおうとするからさ、獣の強さは知ってるだろ?」

優しく、なだめる様な口調に一層苛立つ

ギリリッ、そう歯が軋む音を立てるが、それを聞いた奴は嬉しそうだ

「そんなに苛立つなよ、さぁ僕に全てを委ねて……

一緒に世界を葬り去ろうじゃないか……」

俺の顔にぐっと迫った奴、正直気持ち悪い

「--、ホモになった覚えは無い!!」

この至近距離での頭突き、尖った仮面は勢い良く奴の顔に風穴を開けた

グチャリと生々しい音と、体が崩れる音

奴の額にある大きな黒い穴は、確実な死をもたらす傷だった

 

しかし、直感が訴えかける。奴はまだ死んでない

ゴキッ、メキキッ、そう骨の折れるような鈍い音を立てて奴は起き上がった

腕も足も背骨も腰も、本来なら向かない方向を向いている

「痛いじゃないかぁぁぁああああああ」

突然の怒号、景色さえもが揺らぐ

その歪んだ巨躯からは想像も出来ないほど素早い動きで、奴は目の前に迫った

下から突き上げる渾身のアッパー、俺の身体はいとも簡単に宙を舞った

肋骨の二、三本は粉砕されたであろうか、腹には激痛が走り口からは血が垂れる

そんな俺に奴はボディーブローをかまして、そのまま壁に叩きつけられた

体の何箇所かが壁に奇怪にめり込み、左腕と右足はイッてしまった

「ぐあっ、ぐふっ……」

痛覚が頭の中を支配する、最早感覚は無いにも等しかった

「フフフ、さぁ決着はついた。君には僕の一部になってもらおうか」

奴はグチャグチャに曲がった足でこちらに近づいてくる

 

嫌だ…嫌だ…

目から暖かい液が流れ落ちる、奴は一層歓喜を上げる

どうしたら…いいっ……、俺の脳は生き残るための最善策を必死に練りだす

何が分かれば勝てるのか?この問いへの答え、それは後もう少しでひねり出せそうだった

「さぁ、フィナーレだ」

奴は俺の左手を掴むと、ゆっくりゆっくりーーー

ーーー、噛み砕いた

「あがっ!!ぐっあああっ、ーーーー!!」

声にならないほどの痛みが駆け抜ける

生々しい音を腕だったものが奏で始める

意識が遠のく、絶望だけで満たされていく

ああ、死ぬんだな。達観したような感情で俺は覚悟した

『---めんなよ』

そんな声が聞こえる、幻聴のようだ

走馬灯に近い何かだろうか?なんて思いながら聞こえた方を向く

其処には微かな赤い光りが揺らいでいた

右手で辛うじてつかめそうな距離のそれへ、俺は手を伸ばした

 

ーーーー!?、--そう言うことか

「ありがとよ、紅偽っ!」

いくつものツタが、ツルが左腕を覆った

其処から見える新しい左腕、そこに込められるありったけの力で、俺は夜天を殴った

「おごっああっ!」

変な声を出しながら吹っ飛んだ、それを見下すように俺はその姿を笑った

「全部、思い出したぜ。夜天……」

「なっ、なぜ…っ。紅偽、貴様ああ!!」

夜天は身体を起こすと、そのまま突っ込んでくる

突き出された拳にゆっくりと手を当て、いなす様に回る

そのまま脇腹に入った裏拳は、予想以上の威力だった

勢いは死に、その巨躯は向こうへ傾いた

 

まだまだ、許す気は無い

右手のパイルバンカーと、左手のドリルで猛烈なラッシュを掛けた

ガツン、ガガガッ!!と、今にも貫通するような轟く音が鳴り響く

ピシッ、と奴の身体に切れ込みが入り血肉が吹き出す

「おおおおおおっ!!」

其処へ更にラッシュ、ラッシュ、ラッシュ

吹き出す血肉があたりを一層赤黒く染めていく

徐々に露出する臓器へと、俺は無数の弾丸を放った

倒れこんだ夜天……いや、もはや半分以上が赤い化け物

それは突如肥大した右腕を思い切り振りかぶった

グチャグチャと音を立てて一層肥大していくそれへと、俺は拳を放ち当てる

そこから流れ込んでくる「不」の感情

「悲しい」「痛い」「憎たらしい」「妬ましい」……そんな感情が、全人類の感情が

それに思わず気おされそうになる、しかし俺には紅偽が居る

負けるわけには行かない

ぐっ、と突き出した拳は徐々にその巨躯を、絶望の塊を押していく

 

もはや砕け散ったグチャグチャの顔からいくつ物声が重なったような

そんな声が響く

「なぜだっ、なぜ立ち上がる

絶望を、親しきものの死を、それを受け入れられない感情を!!

絶望し、悲嘆し、嫉妬し、引きずり続ける。

それが、それがっ、人間だろおおおおおおっ!!!」

奴の拳の重みが、一段と増す。

しかし、俺はそれより強い拳で、言葉でそれを返した

「そうだっ!!たくさん悲しんだ、たくさん怒って泣いて……

でも、それでまた強くなれる、絆が深まる、成長できる

自分へのマイナスをも、自分の糧にできるっ

それが、人間だあああああ!!」

自分の目の前が光った、其処にある一枚のカード

いままで見たことないそれの名前を、俺は無意識に叫んだ

 

「希望『双星の絆』っ」

 

とてつもない衝撃波が奴を吹き飛ばした

自分の手には剣が握られている

「いこう、兄貴」

「ああ、紅偽!!」

隣に確かな身体を持つ紅偽がたっていた

赤と青の剣、弾ける様に、引き合うように

俺と紅偽は踏み出した

宙を浮かぶその身体へと刃をむけて

肩から胸、そして腰へ 左右対称の綺麗なXの字を描くように夜天の身体を判った

「「チェックメイト、お前の負けだ」」

シュワアッ!!、爽やかな音と共に後ろに聳え立っていたその巨躯は

砂のように、水のように、消滅した

紅偽を作っていた光が俺の身体に触れて弾けた

「これからも、ずっと二人で一人……」

「うん、またね……ーー」

ふっ、とその紅偽の声も消えた

 

この日、十数年続いた双子の因縁と鎖と絆は

やっと、あるべき姿へと戻っていった……




これで、引っ張り続けたいわゆる「紅偽編」が完結しました
応援ありがとうございます
もちろん、まだ続きます
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