東方黒鉄伝   作:荒無 時竜

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駄作乙


夜の帳

ドンドン……ドドドドドド……!!

「うるせええええええええ!!」

俺は勢い良くドアを開けた

真夜中、草木も眠る丑三つ時に

 

「呼んだのは貴方でしょうに」

空気を読まず、茨木歌扇は家に上がりこんできた

「確かにそうだが、俺はこんな時間に来いとは……」

「呼ばれたから来ただけです、まったくなんで態々こんな遠い所に呼ぶのですか、あそこで話せばいいものの

そもそも、空中に家なんて非常識です、意味わかんないです、私だからこれたものの、飛べない村の方々が貴方に用事があった場合どうするんですか

あっ!此処にホコリ積もってるじゃないですか、所々汚いし掃除してるんですか?

てかこの積もり方からして家を開けていたでしょう?

それなのに何故人を呼べますかねぇ、貴方の神経が良くわかりませんよ

大体私だって「女」なんですから、初対面であったとしても夕暮れ、夜分ぐらい気を使ってエスコートするとか気を……」

 

「だああああああああ!!!」

俺は思いっきり叫んだ

言葉を放つ隙も挟む余地も与えずに「説教」が延々と連ねられていくとは

残念、映姫様だけで間に合ってます

「あ、失礼。それよりも私に何の用ですか?」

「いや、用というよりか聞きたいこと……かな?」

「聞きたいこと?」

歌扇は首をかしげた

そりゃそうでしょう、初対面の相手に名前当てられて

来いって言われて、聞きたいことがあるって

どんな話だよ、ストーリーが奇想天外すぎるわ

「だがしかし、それが許されるのが幻想郷」

「どうしました?主に頭と人格が」

「ごめんなさい、とりあえずお座りください」

あ、はい。そう返事をして歌扇は座った

其処へお茶とお菓子を持っていく

 

「今回歌扇さんをお招きしたのは先ほど申し上げたように聴きたいことがあるからです」

「敬語やめて下さい、違和感しかありません」

「はい……、ともかく質問いいですか?」

「ええ、いいですよ。答えられる範囲なら」

その言葉を聞いて、少し口元を緩めた

「じゃあ、まず。お前は何者だ?」

「……私は放浪者、仙人に近いかも知れません」

ふむ、予想通りの答えだ

「じゃあ、次だ。お前の右腕は何だ?」

「……、聞かれるとは思っていました

この右腕はある時無くしてしまったんです。

今私は、右手を捜してこの地を歩き迷っているのです」

「そうか、見つかるといいな……」

「……まさかとは思いますが、これだけですか?」

驚いたような表情をして歌扇はこちらを見る

 

「ははは、大当たり

俺がしたかったのは質問と、右腕探しの協力

そして、自分の名前を覚えてもらう事だ」

「貴方の……名前?」

「ああ、少しぐらいは聞くだろうし、俺もある程度顔は広いつもりで居る

今度あったら団子ぐらいおごってやってもいいぜ」

「それはぜひ、それで肝心の名前とは?」

「荒無 蒼真。それが俺の名前さ」

「蒼真ですね、覚えておいて上げましょう」

「今日は行き成り色々話したりしてすまないね」

「ふふふ、その仕返しとして団子屋さんで貴方の名前でツケにしときますんで」

「ああ、考えとくよ」

そのまま歌扇は家から出て行った

……ヤバい、あの子の顔。マジだったよ

俺は彼女の背中を最後まで追いかけた後、布団に戻った

 

暗闇の中、少女は一人目を開けた

薄暗い薄暗い、真夜中の民家

奥の部屋に一人うずくまった少女

とても綺麗に伸びた長髪、それは濡れたように黒くて

その目は、黒真珠のように美しかった

彼女は布団から身を起こす

だらんと着物が垂れて、体のラインはより鮮明になる

細い首から滑らかに曲線を描いて胸、腰

そしてふくらはぎ、脛で終わる……

 

彼女は自分の身体を見るとため息を一つ吐き出した

今までに何度も読み返した本を抱きしめて、ゆっくりと煌く滴が垂れた

自分と同い年の里の子が走り回る姿

物語で見た遙かな草原、水が溢れる土地に砂の荒野

お父さんが好きで買ってきた外の世界の本も、一語一句違わぬくらい鮮明に

しっかりと復唱する事だって出来る

本は私を裏切らない。動けない私は、本さえあればシアワセ……

縛られた偽りの、しかし真実の

そのシアワセに少女は揺らいだ

もし、もしも。この物語の少女や少年のように

こんな素晴らしい所を「自分の足で歩けたら」

いや、普通に皆と同じように駆けずりまわる事ができたなら

私はどれだけ嬉しいだろう、どれだけ、愛しく思うだろう

大切な物は目に見えない……ボロボロでとても読みにくかったその言葉は、心に響いた

しかし、同時に切なさと悲しみも覚えた

私は悪い事を何もしてないし、お父さんやお母さんも悪くない

オレンジの髪をした鈴のあの子も、白髪のあの男性も。

何時も見る里の子達だって何も悪くない

「なのに、何で……」

神様は、私の足をどこへやってしまったの?

 

不思議と涙が出てきた

今宵もまた、泣き声が儚く響き渡ったーーー




ほのめかしエンド
歌扇へのネタなんてそんななかったよ……
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