「じゃあね~~」
「気をつけてね」
小さくなった紅魔館から響くお別れの声
それを背に受けながら俺と未華は勢い良く空を舞っていた
「次はどこに行こうかな?」
「他にどんな所があるの?」
「うーん、地底とか地獄とか、魔界に月の人が居る所もあるよ」
「お望みにこたえまして、地獄へとご案内~」
目の前に突然大量の目と歪む空間が広がった
それを抜けた向こう側には会議室の様な部屋が広がっていた
見たことの無い面子が座り囲む机の対面には、裁判長が座っていた
「どっ、どこ此処!?」
「未華、ちょっと静かにしててな……
映姫、紫。今回はどんな用だい?」
「貴方の言っていた通り、地震が博霊神社に起きたのよ」
「そういうことです、貴方に異変解決を頼みたい……いえ、出来ればあいつ等をとっ捕まえて欲しいです」
「それは天人だよな、主犯はどうせ比那名居だろ?」
「ええ、それでは今すぐにでも行って頂きたいのですが?」
それを聞いて俺は少し思った
この世界の残酷さも見せておいた方がいいだろうか?と
俺の心は決まった
「なら、この子を連れて行きたい。
霊夢と魔理沙を護衛で呼んではくれないか?」
「……正気?いえ、貴方はそう言う人よね。いいわ、連れてくる」
そしてぱっと行動三十秒、目の前の隙間から二つの影が降り立った
「今日は蒼真と異変解決か~~」
「護衛って名目だけど、それなりに敵はよこしなさいよ?」
「そうだね、そっちの実力も見たいし」
「あのっ、未華です。よろしくおねがいします」
「おうっ、私は魔理沙だぜ。よろしくなっ」
「礼儀正しい子ね、私は霊夢。仲良くしてね」
お互いにある程度の挨拶は済ませたようだ
俺は三人から目を離して紫を見る
「もうそろそろいいかしら?」
「ああ、挨拶は終わったらしいしな。いいんじゃないか?」
「じゃあ、いってらっしゃいーーー」
ぶわっと下に落ちる
それほど高い高度ではなく、優々と着地。
未華は霊夢と魔理沙が手を繋いで一緒に降りてきた
所々に人が居るのは良くわかる
でも、明らかにこちらを警戒していた
無理も無い、隙間から地獄の気配や空気が流れていたのだから
自分の嫌な空気、嫌な気配。人間を含めた生物と言うのは、不得意なものに対しとても敏感である
太古の時代より染み付いた防衛本能、それは生物に纏わり付き消える事は無い
消えるときはきっと、地球上に何もなくなった時……いや
全てが無くなった時であろう
自然も同種の生物も、人間でさえ牙を持ち爪を研ぐ
行きたいと抗う気持ちが、人を狂気へと導き
正気は消えうせ、その内死を選ぶ事もある。生物の実験結果にも同じような事例は多い
「なぁ、其処の君……比那名居って知らないか?」
「……失礼ですが、どちら様でしょうか?」
「そのお嬢さんに苦情を言いに来ただけだが?」
「話が繋がってませんよ……それに、天人に歯向かうなんて馬鹿ですか?」
ああー、オーケーです、わかりました
「んじゃ、遠慮はしなくてオッケね」
俺の鎧から10本の剣が引き抜かれた
宙を舞うそれらは、今までに何度お世話になった事か……
10本はジグザグとした読めない軌道で一気に間合いを詰めた
慌てて後ろに仰け反った彼女の首の後ろを、俺の短剣がなぞる
「なっ!」
惑わされているうちにチェックメイト、そんな感じかな?
「殺さないで置いてあげるよ、さぁ吐きな」
「あ……う……」
「「「殺せええええええええ!!!」」」
突如、うっせえ怒号が響き渡った
3人の男が剣を振りかぶって走ってきた
まさか、金属製のもので俺に勝てるとでも思っているのか?
ああ、そっか。今まであったこと無いんだっけ
「はじめまして、さようなら」
彼らの持つ剣は突如手錠のようになり腕に巻きついた
そのまま腕を、指先からしっかり飲み込んで奴らはこけた
「うわっ!何だコレは!!」
「くそっ、はずれねぇ」
「お前!!何しやがった!!」
「腕、開けないだろ?簡単な事さ。ピッタリ密着させられた腕の縄は中々解けない
なら、それが金属ならどうだい?解けるもんなら解いてみなよ」
俺はゆっくりと群集に向かって手をかざした
手に握られた金属は水銀、はぐれメタルのようにとろけて腕に纏わりつく
拘束するならコレが一番かもしれないな、そう思う。
現状的にあってるだろ?
ーーー!、後ろにこいつ等よりか強い気質がある
コイツは、やれる奴だ。そう思い咄嗟に2本の剣を引き抜いた
「たああああああ!!!」
不思議な剣が空を切り俺の頭上に迫る
コイツは間違いなく天子、そう思いつつそれを双剣で受け流した
ギイイイィィィィインと、鋭い音がして俺は少し後ろに下がる
「ねぇ、蒼真~」
「ああ!!何だ?」
「「その子と戦わせて~」」
……あはは、確かに暇そうだしな
うん、天子との戦いならいい経験になるだろ
「よし、行って来い」
「あんた達、ふざけてんの!!」
もう一度、強く振り下ろされる剣
今一度思うが、綺麗な太刀筋だ
だが、逆に軌道が読みやすいのも事実
俺は咄嗟に10本の剣を自分の位置まで戻し、アイツには拘束をかけておく
振り下ろされた剣を双剣で挟み、天子の腹に10本の剣腹を勢い良くぶち当てた
そのままバトンタッチ、俺は未華の横に座った
倒れこんだ天子の目の前に走った霊夢と魔理沙
「お相手願うぜ」
「頑張ろうかしら」
「あんた達……」
3人の攻撃が火花を散らし始める
弾幕と御札と魔法と剣、ファンタジーストーリーの技の応酬
華麗なエフェクトが空を、戦闘を彩り花が咲いたようだ
俺はそれを見ながら剣を鞘に収める
この剣は今回始めて使う物だ
赤と青の交じり合った「赤青剣・思想」と、緑と紫の混じった「紫緑剣・幻惑」
どちらも二本の棒が混ざり、捻りあったような……なんとも奇妙な形である
「す、凄いなぁ……」
未華の声で前に目を見やると、お互い一歩も引かず
むしろ三人の乱戦のようになっている
霊夢も、魔理沙への鬱憤を少し晴らしているようだ
「たあああああ!!」
天子が霊夢に切りかかった、霊夢はそれを避けお札を交える
「遠慮なく頂くぜ」
その天子の後ろに回りこんだ魔理沙
『恋符、マスタースパーク』
その細い腕から放たれた極太ビームは、天子(ついでに霊夢も)を包み込んだ
勢い良く吹っ飛んだ天子(ついでに霊夢)。魔理沙の一人勝ちである
「よし、じゃあ帰るか」
「協力に感謝します」
今は地獄、其処には正座した30人ほどの天人が居た
比那名居には、神社を直させるけど……いやあ、映姫様は愉しそうだ
「では、これから説教タイムなので……」
その言葉を合図に俺(天子抱え)霊夢、未華、魔理沙、紫は……
全速力で地獄を後にした