東方黒鉄伝   作:荒無 時竜

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なんか、今まででいちばん良い気がし無くも無かったりして


お仕置き

蒼真には、どうやら日記をつける習慣が少しあるようだ

机の上には広げられたノートが一冊、ちょこんと置いてある

それを手に取り、今までのページをパラパラとめくった

しかし、異変の事については触れられておらず

「愉しい楽しい、他愛の無い日常」が、詰まっていた

心に浮かぶ「あの日」の言葉……

そして、その敗北感に浸りながら優々と暮らす奴の近日を見る

 

××日、今日は河童の家に遊びに行った。

溢れる様な機器に触れ、直し、語る充実した一日だった。

ダンプカーなど、思いもよらないものが転がっていたのには、少々驚きである

今度、機獣を見せる約束をした。普段は砲撃を食らいそうで怖いから、との事だった

知人の警戒を解いておく事にする

 

××日、今日は虹川家へ遊びに行った。

お茶やお菓子を振舞ってもらい、夕暮れまで唄って踊っての騒ぎだった

高らかになる楽器と、木霊するような歌声は今でも思い出せる

通りがかった夜雀やミスチーもこぞって参加してきて、とても賑やかだった

歌の力は素晴らしいものだ

 

××日、今日は紅魔館へ出かけた

俺は最早顔パスになっているらしく、妖精メイドも良く話しかけてくるようになった

姉妹の中は日に日に良くなっているらしく、495年分は直埋まりそうらしい

それも、貴方のおかげだと咲夜には料理を、美鈴には受身を、パチュリーには本を借りた

色々学ぶ事が多く、その内また来てくれと言われ承諾した

次回が楽しみだ

 

…………

「ふーん」

椅子に腰掛けて一息つく

楽しそうだ、そう率直に思う

他にも色々眼を通しては見るが「妹紅とタケノコを採りに」とか「寺子屋に臨時教員で」とか

どう探しても、楽しそうな記事しかない

ギリッと小さく歯軋りをした

あの言葉は毎日毎日フラッシュバックしてくる

そして、その意味がこの文章から伝わってくるのだ

イライラする、ムシャクシャする

「次こそは……」

そう言った少女の瞳の中に、一つの影が映っていた

 

 

「お~っす、紫~」

マヨイガの玄関を開ける

向こうから藍の上がっていい。という言葉が聞こえ、上がりこむ

そのまま居間に行くと紫が座っていた

「来たのね、貴方の踏んだ通りよ

今日の昼には完成しそうだわ」

「ほう?見せてくれ」

俺がそう言うと、紫は目の前に隙間を開いて見せる

そこから見える博霊神社は、もう完成間近。

天女や萃香がラストスパートをかけている所だった

まぁ、正直作業の8割がたは萃香のお陰みたいだ

天女なんかもうひいひい言ってる

 

天子は見知らぬ天女3人ほどと、記念会の準備をしていた

机を並べ…お酒を並べ…

ん?今、お酒が一本消えたような?

「蒼真、あと一時間ぐらいあるし、少しどうかしら?」

犯人、紫

右手にはあの中で一番高価そうなお酒が握られている

「じゃあ、少しだけな」

そういってコップを藍から受けとる

「本当に、飲みすぎないでくださいよ?」

と、藍に言われたが……無論、調子に乗って飲み干した

 

ーー完成披露宴

「え~、長らくお待たせしました。

ついに神社が完成いたしました、これが天界の力です」

隙間の向こうから、堂々とした声が響く

会場にも沢山の人が訪れ、その声を聞いていた

「紫?」

「ええ、……行きましょう」

目の前にもっと大きい隙間が展開される

躊躇いを捨てて、其処に飛び込む

出た所は案の定、博霊神社上空だった

紫と顔を見合わせて笑うと、響く天子の声を押しのけて叫んだ

 

「剣の舞!!」

「飛行虫ネスト!!」

10本の漆黒に輝く剣が、一斉に神社の屋根を貫いた

其処から紫の弾幕が屋根を倒壊させ始める

バゴンと鈍い音を立てながら屋根には穴が開いていき

中では俺の剣達が、柱を粉みじんに切り刻んでいく

瓦は破片となって飛び散り、木屑がパラパラとおちていく

横目で見た会場は、霊夢、天子と天女を除いたほぼ全員が苦い顔や呆れた顔をしていた

「ふふふ、あの天人。いい顔してるわね」

あの苦虫を噛み潰したかのような顔は、酷く滑稽だわ。と、見下すように紫は言う

ああ、近くで見たらもっと凄いさ。と、俺は言った

 

「お仕事お疲れ様」

「作り終わった神社はどこかしら?」

神社の残骸の上、俺と紫は天子へ向けてそう言い放つ

一本の剣が、天子の首元に突きつけられた

それを霊夢がお払い棒で叩き落し、こちらを見て言う

「何してくれてるのよ!!」

「霊夢、落ち着いて。

それより天人? 貴方が要石を填めていた事、ばれていないと思った?」

紫は霊夢を宥める様に一言言うと、天子に言う

もう諦めムードの天子は半場涙目になりながらこっちを見た

「そうよ!何が悪いって言うのよ!!」

「認めたわね、お仕置きの時間よ」

その言葉と共に天子が足元の隙間に落ちていく

中から閻魔様の声が聞こえたあたりで、そっと隙間を閉じる

 

転がったマイクを拾い上げて紫に渡す

「え~、肝心の神社は無くなってしまいましたが、宴会を始めさせていただきます」

そういって、司会を紫に切り替えて続きを始める

客席からは「どうせこんな事だろう……」とか「ああ、やっぱりね」

なんて言う言葉が次々と聞こえる

枝豆を食い荒らす俺が居ない事や、お酒が消えていかない事に違和感を覚えた人は多かったらしい

それを聞いて少し苦笑いをしつつも、隙間から差し出されていたお酒を受け取る

「残念な結果には為りましたが、天界のお酒のようですので、それだけでも楽しんでいってください」

その言葉に歓声と、期待の声が上がる

紫も少しニッコリ笑うと、手を上にあげて

「それでは、かんぱーい!」

「「「「「「「「「「かんぱーい!!」」」」」」」」」」

キィン!!と、グラス同士がぶつかるいい音が響き渡った

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