の始まりです
最後までお付き合いの程を
奇怪闘技場
爆発
けたたましい音を轟かせた爆発音と、四散した破片の煙
それが聴覚と視覚を遮断した
ホンの数秒から十数秒に掛けての時間的には短いブラックアウト
しかし、その短い時間こそが勝負の勝敗を分ける事を、今までに何十何百と繰り広げてきた戦いから知っていた
死者に学ぶものは無い、何がばれても構わない
だから全身全霊を持って譲らぬ戦いを繰り広げる
それがまだ短い人生だが、俺のポリシーだ
「「「グルゴルァアアアアア!!」」」
あたり一面を散らすような方向が耳を劈いた
脳の神経が悲鳴をあげ、激しい耳鳴りと幻聴に魘される
だが、音を聞き取れないわけではない
生きている鼓膜と少しの聴覚神経が、奴の独特の翼音を捕らえる
右後ろの37mほど先に奴が居る
直感と痛む耳を頼りに、煙の中から駆け出た
腰に携えた赤の剣を勢い良く引き抜いて、目の前の土煙を切る
……其の奥には3つの頭を持つ飛竜が見える
名も無い竜、木目細かい鱗で覆われた耳と目の無い竜だ
だが、熱を感知するピット器官を持ち、特有のブレス攻撃も相まって
やはり、一筋縄ではいかなそうだ
さっきの爆発もそうだった、突如地面から火柱が立ち上り
部屋に充満するガスの匂いと相まって物凄い熱と衝撃が辺りを破壊したのだ
爆発、燃焼を得意とする炎系の生物
頭でそんな事を考えながらも走る
「「「ギャアアアアア!!」」」
またしても、咆哮。そしてそれとほぼ同時に粘液弾が吐き出された
それは煙を立てて蒸発し、微かな硫黄の匂いが鼻を刺激しだす
まだ、煙は少なく香りも弱い
コレが最後のチャンスだと確信して、俺は勢い良く飛び出した
腹下を通り後ろへと走る、俺が歩いた道を粘液弾が埋め尽くしていく
先ほどよりも鮮明に煙の……硫黄の吐き出される音がする
後ろに回りこんだ後、俺は勢い良く飛んだ
空からの光りで、俺の剣は紅蓮の緋色に輝く
「憤慨!!」俺はそう叫んだ
剣から赤い蜃気楼のような残像が立ち込める
それは爪と牙と、強大な悪魔……いや魔王と呼ぶにも相応しい形をとった
そこから発せられる怒りの感情の波が、名も無い竜を幾重もの肉片に分解した
俺は地面に降り立つと、膝を付き荒い息を直す
しかし、そんな俺にはお構いなくファンファーレが鳴り響いた
ゴクゥンと、石版の動くような音がして数字が48から49へと変化した
「いやぁ、爆炎龍をこんなにも早く倒すなんてね、流石紅偽君だね」
「おいテメェ……いつまでやらせっ気だ!!」
「ん~~?勿論紅偽君が100のモンスターを倒すまでだよ?」
どこかから響く声がそう言うと、また新しい咆哮が聞こえてくる
ぴちゃぴちゃと、湿ったような水音を響かせて軟体生物のような生き物が顔を出す
血走った二つの眼は、紅偽だけを見つめていた
「水膨虫ウルアカオだね、頑張って」
無茶振りな声が聞こえるのはいつもの事だ、俺は目の前に向き直る
だらしなく垂れた舌には、いくつもの袋が見える
ゴシュ~~と、重く何かが抜けるような音と共に、奴は這いずる様に動いた
すると、垂れた水が少しづつ泡立っていく……そう、石鹸のように
奴は舌からいくつもの「シャボン玉」を作り、部屋に飛ばした
あっと言う間に数は50を越えるのだが、阻止できない
完全に逃げれる体勢で待ち構えているのだ
これなら、いくら追ったって液体を泡立たせるだけだ
そのまま動かず様子を見る、すると縞模様の背中が膨れ上がった
イソギンチャクの様な触手が無数も伸びる
その先端で、チカリと何かが光った
瞬間、稲妻の槍が俺の頬を掠めた
焼け焦げた皮膚が血を流し、身体には激痛と呼べるほどの痛みが走っていた
思わず部屋の壁に背をつけて辺りを見回す
すると、あちらこちらに焦げた跡が付いていた
あいつは拡散型雷虫か……と即興で名前をつける
しゃぼんだまで動きを制限してからそれを道に雷撃を放つ
だが、シャボン玉はその勢いで割れるが故、連射は出来ない!
そう踏んで俺は前に駆け出した
迫り来るシャボン玉を赤の剣で切り裂いて奴の正面へ走りこんだ
「呪縛」と、俺は地面に剣を突き刺して言った
泡だった水が鎖のようになって奴自信を拘束する
螺旋を描くように出来たシャボン玉に電気が走り駆け上がる
3秒ほど滞空した電気は丸まり、それこそ閃光のような速さでその虫を焦がし貫いた
ぐぐぐっ!と虫の体が持ち上がり、6つの足が突如スパークする
虫の神経節を甘く見ていたらしい、目の前を迸る雷光が埋め尽くした
バチチチッ!!と、髪の毛を焦がした。後コンマ数秒にも満たない距離
俺は思わず目を瞑りかけたが、巨体が崩れて電気が四散するほうが先立った
そのまま過度の疲労感で、その場に俺は倒れこんだ
「いやぁ、つくづく驚かされるね
しかし、君は紙一重過ぎるよ。もう少し命を大切にしたらどうだい?」
「元々ねぇような命だ、好きにさせろよ
それに、勝ち上がっちまったら困るんじゃないのか?」
「ふふふ、それはどうだろうね?椿ちゃん」
「いい加減隠すのはやめろや
ーーーロスト・コスモス」