EDF日本支部召喚   作:クローサー

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ふと「HALO世界の日本」や「鋼鉄の咆哮シリーズのウィルキア&大日本帝国」を日本国召喚にブチ込んだらどうなるんだろうなー、と思いつつ再び前日譚を執筆してしまった。
…ちなみに、鋼鉄の咆哮の方は短編(バルチスタ沖大海戦)で書くかもしれない。

グラ・バルカス帝国連合艦隊vs播磨&アルケオプテリクスとか、凄く面白そうじゃない?もしくは通常艦隊1000隻(内大和型戦艦200隻)でブン殴るとか。


無自覚な布石

2017年11月16日午前1時6分。

 

EDF日本支部 最終作戦「アイアンレイン」発動まで、凡そ9時間後に迫った。

先程までの騒々しい雰囲気は消失し、皆が寝静まり、静寂に包まれている大阪市の一角に存在しているEDF日本支部大阪基地の一室に、大石はいた。

 

「…」

 

特に司令としての仕事もなく、本来なら明日に備えて寝るべきなのだろうが…今日は妙に寝付きが悪く、椅子に座ってある機器の調整を行なっていた。

フォーリナー大戦後期から開発されていたものの、戦況の悪化によって生産が不必要(・・・)と認定された新型の通信機器。大石は倉庫の中で眠っていた完成品を引っ張り出し、再び使えるように設計図を睨みつつパーツを組み立てていた。

 

(…これで、良いはずだな?)

 

余ったパーツが転がってたりしないかを確認し、蓋を閉める。コンセントを電源プラグに接続し、電源をオンに。通信機器のメーターが動き、正常に動作している事を確認。カチカチとダイヤルやレバーを操作し、超広域汎用周波送信にセット。ハンディマイクを手に取り、通話ボタンを押そうとして…少し弄ぶ。

 

「………果たして、何の意味があるのか」

 

一つため息をつき、通話ボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

後何日生きられるのだろうか。ここ最近、彼らはずっとそう思ってばかりだった。

各戦線が崩壊してから、EDFや各国軍はフォーリナーの大群によって引き裂かれ、今では其々が小さなコロニーを作り、フォーリナーに見つからないようにコソコソと食料を集める毎日。今でも通信によるコロニーの交流や人間の保護などは行なっているのだが、平均して数日経つたびに、何処かしらのコロニーとの通信が途絶えている。希望も未来も見いだすことが出来ないこの状況。

 

──ザザッ。

 

ある時突然、各所に点在するコロニーにある通信機器に、其々に僅かなタイムラグこそあれどほぼ同時にノイズが入った。

通信機器の近くに居た者達は思わず通信機器を見やり、すぐに周波数を調整する。少し周波数を操作すれば、それはすぐに鮮明となる。

 

──トン、トン、トン。トン、トン、トン。

 

聞こえてきたのは、何かを軽く叩く音。軍人も首を傾げている辺り、この音に特に意味は無いらしい。1、2分程度それが繰り返されていたが、不意に人の声が入る。言語は僅かに癖がある英語。

 

『…此方は、EDF日本支部大阪基地。この通信を受信しているかもしれない、何処かで生き残っている人達に向け、これを送信する』

 

初手で、彼等は驚愕の色を隠せなかった。まさかまだ、こんな終末的状況で現存する軍事基地からの通信が飛んでくるとは思いもしなかった。思わず応答しようとしたが、次に入ってきた言葉によってその手が止まる。

 

『この通信の応答は、受け取る事が出来ない。…受け取ったとしても、我々にはもう時間が無い。我々の抵抗に業を煮やしたのか、マザーシップが此方に接近している。明日にはこの基地も無くなっているだろう。だからこれは、我々…いや、私個人が遺す最後の通信となるだろう』

 

『この戦争…仮に「フォーリナー大戦」とでも名付けようか。フォーリナー大戦が勃発して以来、我々は日本国自衛隊と共に日本列島に巣食う巨大生物や、海から這い出てくるヘクトル兵団、空を覆う飛行船団と熾烈な戦いを行なってきた。幾多もの作戦の中で、数多くの、取り戻しようも無い戦士達の命を失ってきた。皆が皆、護りたいものを護るが為に、散って行った。しかしそれでも、奴等を止めるには至らなかった…我々が気付いた時には、あらゆる戦線が崩壊し、我々は日本列島に閉じ込められた。救援も無ければ、資源も無く、そして戦力も無い。7日前の猛攻を耐えられたのは奇跡とも言っていい。しかしその奇跡と引き換えに、我々はなけなしの戦力や資源も消耗し、終末のカウントダウンを速めることになった』

 

『…先にも言ったが、現在我々の元にマザーシップが接近している。これに対し、我々EDF日本支部は残された戦力を結集し、攻撃部隊を編成。マザーシップに対する最後の攻撃作戦「アイアンレイン」を、約9時間後に発動する。最早大局的に敗北した我々人類にとって、唯一の希望となるのは、マザーシップの撃墜しか残されていない。だが、EDFに残された力はあまりにも少なく、そしてマザーシップの力はあまりにも強大だ。しかもマザーシップを撃墜できたとしても、フォーリナーがこの星を諦める保証さえもない。だが…それでも、それでも我々はやらなければならない!!』

 

『何故なら、我々はEDFだからだ!!!!』

 

『我々は決して敵に背中を見せない、我々は決して諦めない!!どれだけ敵が強大でも、どれだけ我々が無力でも、我々は最後まで戦い続ける!!たとえ敗北したとしても、我々は決して諦めなかったことを、大地に倒れるその瞬間までEDFは勇敢に戦い続けた事を、人類は最後まで戦った事を!!その事実をこの星の歴史に、奴等に刻み込む!!』

 

『…もし、マザーシップの撃退に成功したならば再度この通信を発信する。その通信が果たして勝利宣言か、それとも怒りに狂ったフォーリナーの侵攻によって崩壊する基地からの最期の通信になるのかは分からない。が…少なくとも、その時は奴等の自慢の母船を地に墜とせた事に多少の溜飲が下がるかもしれないな』

 

『最後に、私の名前を教えておこう。…EDF日本支部司令長官、大石宏光。通信終了』

 

 

 

 

 

 

カチ、と通話ボタンから指が離れて通信が途切れる。また一つ溜息を吐き、電源をオフに。

 

「…」

 

全くもって自己中心的なエゴ。自ら他の地で生き残っているかもしれない人達に一瞬だけの希望を見せるなど、あまりにも酷い話だ。しかしそれを、せめて部下達には可能な限りに露呈せぬよう、真夜中にひっそりと行った。

 

「…」

 

通信機器を置く都合で横にずらしていた写真立てを手に取り、僅かに付いていた汚れを払い取る。

 

「…もうすぐ、そっちに行く事になりそうだ。その時はまた一緒に、美味しい紅茶を楽しもうか」

 

写真立てを置き、ベットで横になって目を瞑る。ものの数分で睡魔が大石の意識を侵食し、眠りについた。

 

 

 

 

 

 

この時、大石が発信した通信は日本列島を越えて宇宙まで届き、偶然生き残っていた通信衛星を経由して全世界に拡散し、届いていた。

 

『此方ベルリン、皆が賛同した。我々も作戦に参加する』

『了解した。歓迎するぞベルリン』

『モスクワだ、武器弾薬を融通してくれるコロニーは居ないか?参加したいんだが武器が足りない』

『此方ポドリクス、軍人さんがモスクワ基地の地下兵器保管庫の場所を知ってるらしい。今からそっちに向かうから合流しよう』

『此方はニューヨークより発信している。我々も参加する。他のアメリカコロニーも作戦に向けて準備している』

『誰でもいい、巨大生物の巣穴を吹っ飛ばす勇気のある奴は居ないか?爆弾を放り投げて奴等を怒らせてやろうぜ』

『そいつぁ良いな、ブチ切れた奴等の顔はどんな顔なのやら』

『…所で、一つ提案があるんだが。我々の名前を決めないか?仮にも連合になるんだ。名前くらいは決めても良いだろう?』

『なら、ちょうど良い奴を思い付いた。これはどうだ?』

 

 

 

カインドレッド・レベリオン。俺達もEDF(反逆者)仲間(血縁)になるんだ。ピッタリな名前だろう?』


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