EDF日本支部召喚   作:クローサー

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更なる絶望へ

大地が、震える。

マザーシップの巨大主砲より放たれた一撃は、正に破壊の権化の如く。そこに存在したあらゆる物質を焼却し、無に返した。純粋な熱エネルギーによる焼却攻撃は、この7ヶ月で数十の都市と幾千幾億の命を焼き尽くしてきた。

その力はこの場でも遺憾なく発揮され、一瞬にしてEDF最終攻撃部隊は歩兵7部隊とギガンテス1両を喪失。

 

『マザーシップの砲撃が着弾ッ!!レンジャー2-1、2-3、2-4、3-2、3-6、4-1、5-2、タンク7の連絡が完全途絶!!小型ヘクトルも数体が巻き込まれて消滅しました!!』

『全部隊、可能な限りの全火力を巨大主砲に集中!!マザーシップの攻撃を止めろ!!』

 

しかし、そこで立ち止まっては全人類は滅亡する事と同意義。彼等は決して足を止めず、天を睨む。

成る程、確かにマザーシップを見た一部の者が「神」と揶揄するだけの事はある。一片の瓦礫さえも生み出さないその業火は、 神の御技(ルールオブゴッド)と名付けられるに相応しい。

しかし、それは人類が膝を付く理由には決してなり得ない。「神」が降臨した?「 神の御技(ルールオブゴッド)」が振るわれた?

だからどうした。

神だろうが上位者だろうが、たかがたった1つの存在。そんな奴が、幾億の命を燃やす灯を壊そうとする事など、決して我々(EDF)が認めない。

 

それを証明するべく、地より力が放たれる。武器性能限界一杯で撃ち放たれたそれは、僅か数秒で数千のロケットの弾幕となって現れる。更に速く、スナイパーライフルの銃弾幕が巨大砲台に着弾。僅か7ヶ月で数度のブレイクスルーの果てに生まれた対フォーリナー弾頭は、しかし巨大砲台の装甲を凹ませる事に成功する(貫くには至らない)

 

遅れて幾多のロケット弾が次々と着弾するも、これも巨大砲台の致命傷とはならない。

 

 

刹那。

ある兵士の武器から放たれた1発の反物質弾が、巨大砲台の装甲を貫通。巨大砲台内部機構に薄く展開されているエネルギーシールドさえも突破したそれは、射線状に存在するあらゆる物質を消失させ、巨大砲台に損害を与えた。

 

『巨大砲台に損害を確認!全輸送機、撃墜!』

『よし、良いぞ!散開しながら攻撃を継続しろ!固まっていれば巨大砲台に吹き飛ばされるぞ!』

『志摩市より北部200km地点に地底から巨大生物5000出現!志摩市に向かっています!』

『航空部隊に攻撃要請!ミサイルで吹き飛ばせ!』

 

本部からの指示に従い、各部隊は更に動く。各陸軍部隊は志摩市各所に散らばるように散開しながら巨大砲台への攻撃を継続。航空部隊は、志摩市北部に向かってくる巨大生物の殲滅に。

次々と弾幕が着弾している巨大砲台は、第二打撃の準備を開始する。再度、マザーシップ内部から生み出される膨大なエネルギーが、巨大砲台に注がれ始める。

 

『巨大砲台第二撃、間もなく!!』

『足を止めるな、砲火を止めるなッ!!これ(第二撃)は無理でも、第三撃は撃たせるな!!』

 

直後、再度砲撃。

再び巨大砲台から白いレーザーが照射。またしても町を切り取るかのように角度を付けて振るわれ、爆発。大地が抉れ、全てが焼き払われる。

 

『ッ…!!レンジャーチーム、全滅状態(3割損失)!!タンク6も破壊されました!!』

『本部ッ、応答願います…!こちらレンジャー1-5!砲撃で皆やられました…動けるのは自分だけです…!最寄りの部隊へ合流出来るルートを指示してください!』

『レンジャー1-5、其方にタンク9を向かわせます!合流しタンクデザントで砲撃地点から離脱、その後他部隊と合流して下さい!』

『ヘクトル全滅を確認!!』

『何としても巨大砲台を破壊しろ!ダメージは蓄積している、第三撃は阻止しろ!!』

 

混線する無線。その最中でも攻撃部隊は統制を失ってはいない。

 

『このぉ、このぉ!!お前らのせいでみんな死んだんだ!ちきしょう…ちきしょうッ!!』

『どうせ帰る場所はないんだ!この命…くれてやる!!』

 

 

『墜ちろッ…』

『墜ちろォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!』

 

 

瞬間。弾幕に紛れ、数度目となる反物質弾が巨大砲台に着弾。ボロボロになりつつあった装甲を容易く破壊し、遂に巨大砲台のコアを貫いた。機能不全を防ぐ為に常時多量のエネルギーを貯蔵しているコアの損傷は、決してあってはならぬ事。損傷した箇所から膨大なエネルギーの流出が始まり、コアどころか巨大砲台そのものの爆発が連鎖的に発生していく。

 

『巨大砲台の破壊に成功ッ!!崩壊していきます!』

『やった!ついにやった!俺たちの勝ちだ!』

 

すると、マザーシップから巨大砲台が抜け落ち始める。巨大砲台の爆発は止まっていない。

 

『巨大砲台が落ちるぞーッ!!』

『勝った!人類は勝ったんだッ!!』

 

皆、喜びの声を挙げる。その目の前で、巨大砲台は爆発。粉々に粉砕され、その姿を消した。

 

『まだだッ!!総員、対空戦闘用意!!』

 

それを打ち破ったのは、大石司令の怒声。

 

『貴様ら、何をぬか喜びしている!?我々はまだ巨大砲台を破壊しただけだ!!我々は漸く奴の武装一つを剥いだだけ…!!』

 

 

 

『マザーシップは、まだ死んでなどいない!!!!』

 

 

 

それに応えるかのように、マザーシップは、絶望の権化は。その力を、開放する。

 

 

──ヴォン!

 

 

マザーシップの装甲板の一部が、分離。上部約100、下部約100、総数約200枚の板は、マザーシップをゆっくりと周回し始める。

 

『マザーシップの変化を確認… マザーシップの周囲に、何か…何かが、飛んでいます!』

 

刹那。

50以上のレーザーと50以上のプラズマ砲弾が、マザーシップ下部の浮遊装甲板より放たれた。

 

『ぐあっ!?』

『攻撃してくるぞ!あれはマザーシップの砲台だ!!』

『総数、およそ200!!下部の浮遊砲台の砲撃に地上部隊が晒されています!!なんていう要塞なの…ッ!?』

『クソ、総員砲台を攻撃しろ!』

 

本部の指示があらずとも、既に彼等はマザーシップの浮遊砲台への攻撃を始めていた。しかし、2秒毎に放たれるレーザーとプラズマ砲弾の弾幕の前には、余りにも。

余りにも、火力の差が大きすぎた。

 

『うわああああああああッ!!』

『本部、本部ッ!!敵の攻撃は余りにも苛烈ッ!!既に負傷者多数、このままでは全滅を待つだけです!!』

『くそッ…!!総員、建物に隠れながら敵砲台を破壊せよ!!最後まで諦めるな!!』

『クソ、プラズマ砲弾来るぞ!退避ィ!!』

『此方タンク1!射角が取れない、全車外縁部に移動して機動砲撃戦に移行する!!』

 

マザーシップはレーザーのみならず、低速なれど建物ごと破壊出来るプラズマ砲弾を雨嵐の如く投射している。このままでは地上部隊が浮遊砲台を破壊する前に全滅するのは、明らかだった。

しかしその時、オペレーターの1人が、気付く。

 

「これは…大石司令、見てください!マザーシップの下側が開いています!」

 

それは、巨大砲台の展開部分だったマザーシップ下部。そこは今、赤く発光する場所を露出し、多量のガスを放出している。

 

「どういうことだ…?」

「おそらく、大気の吸収口だと思われます。マザーシップは過去の作戦にて地球の大気を吸収し、「呼吸」している様子を観測しています。そして現在投射している凄まじい攻撃力を発揮するためには、更に大量の大気を必要とするものと思われます!」

「つまり…!」

「はい、大気吸収口にはシールドを展開できないはずです!あそこが、マザーシップの弱点です!」

「だが、弱点が分かっても…!」

 

『あああああああああああ!!』

『ぐあああああああああああああッ!!』

「レンジャー1-3、応答して下さい!レンジャー1-3!!」

「レンジャー5-1聞こえるか!?レンジャー5-1ッ!!」

「戦車部隊、4両目が破壊されました!」

 

「攻撃部隊は、壊滅的状況(5割以上損失)だッ…!!」

 

悲鳴をあげて途絶えていく通信、応えるはずのない部隊に必死の呼びかけをするオペレーター達。

町を更地にせんと言わんばかりの大火力の前に、地上部隊の多くは壊れかけの建物から比較的な建物へと逃げ惑い、まともな反撃を行う暇さえ無い。

 

「弱点が分かっても、どうにもならないというのか…ッ!!」

 

 

 

『地上部隊、聞こえるか?此方は最終航空部隊だ。我々はこれよりマザーシップへの突貫を開始する』

 

 

 

 

 

 

『此方本部、言っている意味が分かっているのか!?相手は全世界の航空戦力を殲滅させているんだぞ!』

「だからといって、このままじゃ地上部隊は皆殺しにされる。そうなったら人類は終わりだ。囮は、しぶとい方が良い」

『……………』

「俺達は全員覚悟の上だ。だから、行かせてもらうぞ」

『…分かった』

「オーライ。全地上部隊、これから俺達がマザーシップに対して喧嘩を売る。どのくらい砲火が弱まるかは分からないが、兎に角幾らか注意が引けたらマザーシップに攻撃を行え。後は任せたぞ」

 

そう言って、彼は周波数を切り替えて部隊との通信に入る。

 

「…そういう事だ。お前らの命を俺にくれ」

『隊長、それは今更過ぎやしませんかね?この戦争が始まってから、ずっと隊長に預けっぱなしですぜ俺達は』

『我々も貴方に預けよう。既に覚悟は出来ていることだ』

 

周囲には、EDFのEJ24戦闘機14機と、元航空自衛隊のF-15J戦闘機8機。計22機のちっぽけな航空戦力。

しかし今、彼等は最後の矢となり、マザーシップを穿つ意思となる。

 

「…命を求めるならば命を捨てよ!!全機、突撃!!」

 

アフターバーナー。ジェットエンジンより排気されるガスに再び燃料を吹き付けて生まれる大推力は、EJ24戦闘機とF-15Jを音速の壁を破るには十二分。

高度500mでソニックブームを巻き散らしながら、水平線の先に存在しているマザーシップへ突貫を開始。

 

「大空戦のデータでは、マザーシップのレーザーは重力に逆らう程の高火力かつ直進性だ!奴が攻撃してくるタイミングは水平線から俺達が飛び出た瞬間!その前にミサイルを全弾叩き込む!全機、データリンクは完了しているな!?」

『オーライ!』

「全機、FOX3!」

 

その合図をきっかけに、EJ24戦闘機とF-15J戦闘機のハードポイントに接続された圧縮空間搭載のミサイルポッドから、間隔と発射角度を変えつつも次々とミサイルが放たれる。その総数、1584。

 

『スッゲェ光景だなぁ、コリャ。後にも先にもこんな光景見れるかどうか』

『2度も見たくはないがな』

『全くもってその通りで』

 

刹那、レーダーに映し出されてたミサイル群の一部の反応が消失。彼我の距離と高度から見ても、明らかにミサイル群は水平線から飛び出しているわけでもない。つまりは。

 

「…マズいな、マザーシップが水平線外から迎撃している。レーザーを曲射でもして来たか」

『向こうも進化するってか…予定に変更は?』

「無い」

『此方地上部隊!砲火が航空部隊に逸れた、これよりマザーシップへ攻撃を行う!』

 

先行するミサイル群の反応が次々と消失する中、地上部隊からの通信。どうやら彼等の思惑通り、マザーシップの注意を引き付ける事に成功したらしい。

 

「ミサイル群、半分消滅か…予想以上に迎撃ペースが早い」

『幾ら私達より速くても、静止目標には真っ直ぐしか進みませんから』

「合図と共にブレイク(回避行動)。各個の判断でマザーシップに接近しろ」

 

ミサイル残存数、471。

 

342。

 

279。

 

67。 

 

刹那、水平線の先。マザーシップの影が、見えた。

 

「ブレイク!!」

 

瞬間、22の矢は彼等が思うがままの方向に旋回。刹那、およそ40の光線が航空部隊に向けて飛来。およそ光速の1%の速度であっても、その速さは約10792528km/h(2997924km/s)。法外ともいえるその速度の前では、今日まで生き抜いて来た歴戦のパイロットとも言えど、直撃しない事を祈る事しかできない。

 

ミサイル全弾消滅、サクラ4(F-15J一機)被撃墜。

 

「ッ…!!」

 

(サクラ1)の視界の端に偶然、サクラ4がレーザーの直撃を受けて爆散する瞬間が見えた。あれではベイルアウト(脱出)以前に自分自身が死ぬという自覚さえも抱かぬまま死んでいったかも知れない。

 

「く、そッ…!!」

(この精度で飛んでくるとか、冗談じゃねぇ…!!)

 

ピッチ、ロール、ヨー。基礎的な技術から生まれるありとあらゆる高等技術を使用して行われる回避機動を以っても、2秒おきに飛来するレーザーの雨は、機体の半径30m以内に常に飛来する。既にEJ24戦闘機は5機、F-15J戦闘機は3機喪失。

 

『ぐ、うっ…!意識が、飛びそうだ…!』

 

パイロットの1人が、そんな声を漏らす。レーザーの雨を避ける為に続けられている激しい回避機動は、それに相当する重力加速度によってパイロットの身体に襲い掛かる。避けなければレーザーの直撃を受けて爆散するが、かといって回避機動を取り続ければやがて頭に酸素が十分に行き渡らなくなり、思考低下によって回避機動が疎かになり、最終的にはレーザーの直撃を受けて、死。

結論からして。彼等航空部隊が生き残る道は、「今すぐに回避機動を行いつつも撤退する」という道以外に可能性など存在していない。

しかし。

 

(退けるかよ…!!此処で退いても、次はもう無いんだよ!!)

 

今が人類最後の戦い。此処で死を恐れても、最早意味は無い。

次々と放たれるレーザーの雨を躱していく航空部隊。しかし、少しずつ、少しずつその数が、減っていく。

 

(あの、クソ野郎ッ…!!)

 

チラリとレーダーを見るが、既に自分以外の全機が撃墜(戦死)したらしい。マザーシップは、目の前に。地上からは、激しい砲火が見える。

 

(…)

 

すると、彼は一切の回避機動を放棄。真っ直ぐ、愚直な程に真っ直ぐに、最大速度でマザーシップへ突撃を開始。当然、マザーシップのレーザー迎撃の精度は急激に上昇。僅か3撃目で左翼に直撃。瞬間的に直撃部が融解し、抉り取られる。幸いにして燃料への引火だけは免れたようだ。飛行バランスも大きく崩れかけるも、咄嗟の操縦によって体勢を瞬間的に立て直す。高度を下げ、後はタイミングを合わせるだけ。

 

マザーシップのレーザーが最大数飛来する。だが、もう遅い。

 

(持っていけ、この命…ッ!!)

 

 

「サクラ1ッ、FOX4ッ!!!!」

 

 

刹那、高度を上げ、最後の1機であったF-15J戦闘機が、味方の弾幕さえも抜けてマザーシップの吸気口に衝突。マッハ2.5(3087km/h)で飛来したおよそ3tの破壊槌。それはマザーシップに突き刺さり、吸気口から炎を上げて活動を止めるには充分な威力となった。

マザーシップの発光部分が脈動し、全ての砲台が沈黙する。

 

『サクラ1、マザーシップ吸気口に特攻…!!マザーシップ、活動停止しました!!』

『あの野郎、やりやがった!!自分の命を犠牲に、やりやがったぞ!!』

『遂にやった…遂にやったぞ!マザーシップをやった!』

 

『我々の、勝利だ!!』

 

 

 

 

 

 

──ガゴン。

 

…否。

マザーシップ下部、各所から10本の円柱型砲台が突き出る。並び立つ姿は、正に逆さ吊りの巨塔。

 

『…は、あ?』

 

思いもしなかった、したくもなかったその光景。マザーシップが見せるその光景を、人類は茫然と見る他に無く。

 

 

 

刹那。

円柱型砲台から膨大な数のパルスビームの弾幕が、生き残っていた浮遊砲台から再びレーザーとプラズマ砲弾の弾幕が放たれる。

文字通りの弾幕(・・)。隙間のない熱弾の豪雨に、街が、人が、全てが、飲み込まれた。




誰もが、その光景を信じたくなかった。

『マザーシップは、健在です…周囲から砲台が出現…戦闘形態を(・・・・・) 取った(・・・)ようです…』
『これまでは、本気ですらなかった(・・・・・・・・・)ということなのか…?そんな、そんな馬鹿な話があるかぁ!?

その力は、余りにも圧倒的で、破滅的で、絶望的だった。
正に絶望の権化と成り果てたマザーシップの前に、戦士達は次々と倒れゆく。
希望の光は無く、そこにあるのは絶望の闇。

それでも尚、光を求めて抗う者がいるのならば──

 

次回、「星船」

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