伝説の喜劇 始まり
フォーリナー大戦終結、そして人類内戦の終結後、世界復興と軍備再興の進む日々。
僅か1年で、人類は、地球の姿は大きく変わり果てた。そしてEDFの役割もただの軍隊から、名実共に「世界の守護者」として活動が大きく広がる事となる。崩壊した各国政府の統治代替、廃墟化した都市の再開発、化学食糧の増産及び改良、天然食糧の保存生産、人類人口の増加対策*1、兵士の志願募集、大型兵器の新開発及び自動化による省人化*2等を邁進していく事となる。
そんな最中、ようやく連日徹夜状態から解放されたEDF日本支部 兵器開発部の一室は。
チ────────────────ン…
…なんていうか、その。魂が抜け落ちた屍達がそこらに転がってる、としか言いようがない光景がそこにあった。
フォーリナー大戦時、彼等の原動力となっていたのはフォーリナーへの憎悪。しかしマザーシップの撃墜によってフォーリナー船団は宇宙にとんぼ返りし、地上に残されていた巨大生物は掃討された。まあ早いが話…某漫画のような「
そんな訳で、燃え尽き症候群と山の書類整理のダブルパンチにより、日本支部の兵器開発部は開店休業状態となっていた。
その影響は、当然彼女…篠ノ之束も大きく受けていた。
「は〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜…」
他と違って書類の山は無く、かなり綺麗なデスクとなってはいる。が…件の本人の状態が宜しくない。それなりの音量でありながら消え入りそうな矛盾した溜め息を吐き、ハイライトの無い目を開けながらデスクに突っ伏してる姿を見れば誰だってそう思う。服装も割と乱れてるのに、扇情感が全く出ていない。
彼女としては
「なんかもう、束さんはゴールしても良いよね…?」
「何のゴールをする気だよ…」
「色々…」
「ダメに決まってんだろ…」
「君達も休んでるじゃん…」
「束もそうじゃないか…」
『…は〜…』
これはもう駄目かもしれないね。
とはいえ、そんな状態が丸一日続いていると言うわけでも無く。
半分真っ白な屍状態とはいえ、気分転換程度の事はする。そんな訳で彼女は暇つぶしとアイデア探しを兼ねて試射場を訪れていた。すると、そこには先客の同僚の姿がある。
「おろ、君も居たんだ」
「あ、篠ノ之さん。どうしてこんなところに?」
「んー…特にこれといった事は無かったんだけど、暇つぶしにね。君は何をしてるのかな?」
「自分も気分転換ですよ。ちょっと変わったかんしゃく玉を作ろうかと」
「かんしゃく玉?」
かんしゃく玉とは、言わば花火の一種。火薬を利用して大きな音を立てて遊ぶための玩具で、直径7、8mmの玉の中に火薬と点火用の小石を入れ、地面にたたきつけたりして爆発させる。
しかしよく見ると、彼の手の中にあるかんしゃく玉は確実に5cm以上ある。
「…大きくない?」
「そりゃあ自作のかんしゃく玉ですから。この大きさだと中の火薬も割と使ってますし」
「事故だけは気を付けてよ」
「分かってます」
そう言って彼はブースの前に立ち、自作かんしゃく玉の一つを勢いよく投擲。放物線を描いて床に叩きつけられたそれは、パァンッ!と炸裂と同時に爆竹並みの音量を生み出した。
「…ふーん…見てるだけなのもつまらないし、他にあるかな?」
「ありますよ。なんなら後ろのテーブルに材料一式置いてますよ。ただ作る際、力を入れ過ぎると爆発するんで、そこに気を付けながら作っちゃって良いですよ」
「なら作っちゃおっかな」
そう言って、彼女はかんしゃく玉の材料一式が置かれてるテーブルに向かい、同僚は自作かんしゃく玉の投擲を再開。
(さーて、どのくらいの大きさで作ってこーかなー…どうせなら大きいやつでも良いけど、5cmで
(あっ、そうだ♪)
数分後。彼女の手には5cm程度のかんしゃく玉があった。
「出来た〜♪」
「時間が掛かりましたね。慎重にやり過ぎてたんじゃないですか?」
「ん、まぁちょっとね。それじゃちょっと見ててくれるかな?」
「…?はい」
ブースに立ち、投擲。何の違和感もなく、重過ぎる軌道という訳でもない。只々普通の放物線を描いて落下し、地面と激突したそのかんしゃく玉は。
…5cmのかんしゃく玉から発生したとは到底思えない爆発と大音量を起こした。なんなら、半径1m程度の爆炎が見えた。
「( ゚д゚)」
「んふふ、大成功〜♪可能性を感じるねぇ!」
「あの…篠ノ之さん?一体何を詰めたんです…?」
「ん〜?簡単な事だよ」
「最新の
「馬鹿じゃねぇのアンタッ!?」
束の答えを聞いた同僚は、思わず声を荒げる。そりゃそうだろう。対人を一片たりとも考慮されてない高火力の炸薬を使用しているなんて、万が一事故が起きれば、通常火薬より危険度が段違いだ。
「でもでも、気にならない?」
「何がなんですか…」
「このかんしゃく玉が、何処まで
「…………………………」
「んふふ、そうだよねそうだよね。科学者の一端ならその考えは当然の事、何もおかしくはないのだー。だからさ…」
ススッと近付き、彼と目を合わせる。
「私と
「乗った」
どうしようもないほどに即答であった。